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どうやら持ち主は、私の研究を始めることにしたらしい。
まあ、私も正直少し興味がある。
一応複製物については、これが魔力によるものなのが私にはわかっている。持ち主たちが魔術を使っているのと似たような感覚だからだ。
まあ、仕組みはわからないから、私の複製は魔術というよりは魔法だろう。
この世界、というよりベゾフラポスでは魔力のある人間が、その使用方法を学習すれば使える、体系化された技術のことを魔術という。
それに対して、一部の特異な人間や、ドラゴンを始めとした巨大飛行生物や天翼人の浮遊魔法など、仕組みがよくわからないものは魔法と呼ぶ。
つまり魔法をよく観察し、その仕組を解き明かして一般化したものが魔術だ。
そんな魔術師たちが、まさに魔法の道具である私の仕組みを解明したいと思うのも当然だろう。
けれど、彼女も私も知らなかったというか、まさか実験一発目でこうなるとはというか。
言うなれば、そう。きっと運が悪かった。
彼女は私の中にある空間を感知していたわけではないが、しかし物の出し入れを魔術的に観察することで、間接的に存在を確認していた。
魔術の基本とは観察だ。観測し、観察し、干渉する。不変にして普遍の魔術作成プロセス。
だから彼女は私の内部空間を観察するために、私の内部空間をあちらに引っ張り出そうとした。
私は彼女の意を汲み取って、物が半分収納されているくらいの、ギリギリ中間の不安定な状態で留めた。その状態で、彼女がその物体に空間系の魔術を行使し、半分私の中に入っている物体を通して私の内部空間に干渉してあちら側に引っ張り出す。
私も特別抵抗しなかった。
きっと、それが悪いのだ。あとになって思えば、ここで抵抗していたり、そもそも彼女に協力しなければあんなことにはならなかったんだから私が悪かったんだろうか?
結論を言うと、私は裏返しになったように感じた。幸い中のものがこぼれたりはしなかったが。
ところで私の内部には無限の空間がある。袋を想像してみてほしい。袋が裏返されると、今まで外側にあった物が裏返された袋の中に入る。
きっと内部のものが私以外に取り出せないから、私の中のものは取り出されなかったんだろうが、無限大の広さを持つ袋が裏返されたのだ。
一瞬だった。私がほんの一瞬抵抗しなかっただけで、私の内部空間の一部は裏返り、外に出た。ベゾフラポスのあった空間に、私という無限大の空間が重なる。ほんの一部であっても、無限の広さを持つのだ。ベゾフラポスは私の膨張に押しつぶされた。ほんの一瞬で都市の殆どが飲み込まれながら圧潰し、ベゾフラポスを浮遊させる魔石もなくなった。
私が慌てて空間を戻そうとするが、水が高きから低きに流れるように、風が気圧の高いところから低いところへと吹くように、私という空間も、外側へと無限に広がろうとする。
どうにかこうにか押し留め、最終的に外に出た空間そのものを収納することで、押しつぶされたベゾフラポスが存在した空間や私自身の裏返った空間、その余波でおかしくなった空間を全部内部へと収納できた。
こうして、私の内部に残骸を大量に残して、魔導都市ベゾフラポスは消滅した。
やっぱり太古の昔に滅びる超古代文明だったじゃないか。
これにて序章終了です。
次章は時代が飛んで、布袋さんも生物の体でファンタジー世界を謳歌することになります。
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