GOTOキャン△
電車に乗ると、その車両には半透明の人がたくさん乗っていた。何だろ?例えるなら何だろ?あー、東京23区推奨ごみ収集袋みたいな半透明な人がたくさん、いや、それだと野狐禅みたいになるか。
とにかく半透明の人がたくさん乗っていた。
「・・・」
一瞬それに驚いてきょどってしまったが、しかし座れる場所があったので構わずその空いた場所に座ることにした。今日日電車に乗って座れる場所があるのに座らないとかありえない。ゲロの吐き跡ががあるとか、酔っ払いがうるさいとかそういう訳でもない。そら座る。
しかし自分以外の人達は、まるでその車両が外れと言わんばかりに他の車両に行ってしまった。最初からその車両に乗らずに、別の入り口から入る人さえいた。
まだ空いてる席があるのになあ。
自分が座った場所以外も沢山とは言わないが座れる場所があった。不思議だなあ。
「・・・」
私は存外に居心地も良く最高だった。暑い屋外を歩いて駅まで来た。駅に着くと汗が噴き出す。それでも電車内の空調は当たる場所と当たらない場所があったりする。走ったりしたときなんかはいつまでも汗がひかない。
その車両は半透明の人しか乗っていなかったからなのか、涼しく快適だった。それに騒いでる人もいない。静かだ。
汗もすぐひいてしまった。
そうして一駅か、二駅か、目的地まで向かっていると、
「あのお」
と、声をかけられた。隣に座った半透明の人だった。
「はい?」
そちらの側を見るとその人越しに向こうの風景、車両が見えた。
「やっぱり迷惑なんでしょうか?」
半透明の人は申し訳なさそうに言った。
「何がですか?なんでですか?」
何で迷惑なんて、こんなに静かだし、涼しいし。何が迷惑だっていうんですか?
「やっぱりそのー、死んだ身で、こうして電車に乗ってくるっていうのは迷惑なんでしょうか?」
聞くとコロナの影響で政府の打ち出したGOTOキャンペーンの利用者が思った以上に伸びなかったので、利用者の門戸が広げたんだという。そんでこういうことになったんだという話だった。
「それでその・・・たまにはお盆前に帰ろうかと思いまして、それに私達はコロナの影響も関係ないですし」
「はーなるほど」
ただ交通機関を利用してもらわないと、GOTOキャンペーンに適用しないんだとかで、こうして電車に乗って移動しているんだという。
「いいじゃないですか」
ちゃんとお金払ってるんでしょ?
「それはまあ、もちろん」
じゃあいいじゃん。
全然いいじゃん。死んでまで他人の目を気にするなよ。死んだらそういうの気にしない世界に行けると思って私は頑張ってるんですよ。だから頼みますよ。
「そうですか?」
「早めに帰って、子供とかお孫さんとか喜ばせてあげたらいいんすよ」
それだけ考えたらいいんすよ。
「そう言っていただけると、ありがとうございます」
その人は名前を小松さんと言った。
目的の駅で降りる際、死んだら是非訪ねてきてくださいと名刺をもらった。あとなろうの夏ホラーに書いてもいいという了承ももらった。
「子供達とキャンプに行きたいんですよね。生前出来なかったから」
いいじゃん。行ったらいいじゃん。行け行けえ!
その話を聞いたおかげで、この話のタイトルにも△がつけれましたよ。ありがてえなあ。こっちこそありがとうだなあ。




