最終話 囮
◇
僕はドグラマグラ太郎先生の起きながら話す寝言を聞いていた。
『長編小説書くのめんどい』
要はこれが言いたいらしい。
『短編集でも書籍化あるのかな?』
要はこれが聞きたいらしい。
無い。
本屋で商業出版で活字で無名作家のそんなの見たこと無い。
長編小説書けばいいじゃん。
大爆死すればいいじゃん。
どうせドグラマグラ太郎先生だ。
いつも通りだ。
時間も。
関心も。
漫画を読むか。
小説を読むか。
新型コロナウイルス(SARS2)への心配に使われる。
一説によると人類の半数以上がかかる。
繰り返し流行し病気になる。
その予測が正しければ。
遅かれ早かれ。
ドグラマグラ太郎先生はいつか止まらない咳をする。
いつ咳をするか考えるより。
今からまた黒歴史を作ればいいじゃないか。
『咳をしても一人』
を借用するならば。
僕なりに言うならば。
『咳をしてもしなくても』
かな。
違うかな。
『席置いても一人』
かな。
これいいな。
物悲しくて。
空回りしてて。
徒労感があって。
寂しくて。
滑稽で。
ドグラマグラ太郎になってる。
今回はこれでまとまりそうだ。
ドグラマグラ太郎
席おいても一人
ずっと手を振る
ドグラマグラ太郎
人といても一人
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