死神と過去の世界
DSと呼ばれる現実からかけ離れた存在に対処するため作られたDS協会、だがDSは多元世界へと飛ばされることになった。
あたりを見渡す。
ここは少し過去の世界のようだ。
首に下げた懐中時計を見る。
針は夕方にもかかわらず、三時をジャストに指していた。
三時間この世界での滞在時間。この世界に残された希望の時間。
腰のホルスターから、ハンドガン、シングルアクションアーミーを取り出し折り曲げ残玉を確認した。玉は相変わらず一発だけ入っている。
誰もいない校舎の屋上に一人の目が死んだ生徒がいた。日が落ちようとするなか生徒は屋上の端に立つ。
「下らねえ」
思わず声を出していた。
生徒は自殺を考えている。
理由は、いじめや不幸ではなく、ただこの世界に飽きた。それだけだった。何度か自殺を考えたが、必ず邪魔しに来る者がいる。現に横に座って足をふらつかせながら煙草をふかしているおんながいる。女は黒いスーツを着ていて、俺と同じく目が死んでいる。徒然どこからともなく表れたが今となっては驚くまでもない。
「またあんたか…死神…暇なの?」
「また自殺か?仕事増やすなクソガキ」
自分以外誰もいないはずの校舎にどこからか現れる。
いや、校舎には誰もい無かった。こいつは瞬間てきに「めんどくさい」という理由で止めに来た死神だ。
「あんたならわかると思うが生なんて所詮は死への道だ。なのに何で長生きする必要がある?」
死神はハァ~とため息をつき煙草を捨て煙管をくわえた。
「あんたさぁ夢はあるの?」
「ない」
「希望は?」
「ない」
「生きがいは?」
「あったらここにいないだろ…」
「あんたって夢も希望もないね…一回死んだら?」
「だから死のうとしてんだよ」
頭をかき立上がる死神。
めんどくさそうな表情で自分の影から大鎌を取り出す。
「じゃあ殺すからはを食い芝って」
そう言うと死神はその大鎌を生徒の首に振りかざした。
生徒は身構えるそぶりどころか目さえつむっていない。
振りかざされた刃は、首もとで止まった。
「どうした?殺してくれるんじゃなかったのか?」
「いや、冗談だよ。…しかしあんたの走馬灯、ほとんど下らないって感情しかなかったな…良く生きてこれたもんだ。」
走馬灯とは、死ぬ直前に見える記憶だ。今死ぬと思って少し見えたが下らなすぎてあくびが出る。身の回りの人間は下心を持った偽善者だらけだ。
死神の能力で俺の走馬灯を見た死神は、呆れている。
「あんたに邪魔されなきゃ今頃死んでいるはずなんだけどな」
皮肉を言うとまた死神がため息をつき大鎌を自身の影に直した。
「生きる死ぬは、自由だけど、いつも言うようにわしに迷惑かけるな。わしの担当は自殺や他殺、あんたが自殺したら無駄な仕事が増える。」
「うるせえな。もう飽きたんだよ。あんたなら解るだろ?皆は生きる理由は幸せになるためだとか子孫を残すためとか言ってるが結局最後は死ぬ。どう生きた所で結局待つのは死だ。生きた所でなんの意味もない。」
「あんた何歳?」
「十六」
「爺いか?まだ若いだろ。考え直せ。わしなんてこの仕事やってもう二千年だっけ?正直飽きてきたけど頑張ってるぞ」
心の底からすごいなと思った。というかなぜそこまでして死神をやってるんだ?何が楽しいんだ。
「あんたの生きがいって何なんだ?」
「ん~そうだなぁ~」と考え、答えた。
「ニコチン」
「嘘だろ」
「嘘だよ本当は、裏表のないバカな英雄の観察」
「は?」
なにいってんだ?
「神ってのはな人間に欲を持たせた。だから争い、技術を身につけてこれた。だが例外は存在する。それがバカだ。」
「面白いか?そんなもん」
下らない時間無駄だった。飛び降りようと一歩踏み出し見下ろす。
「なにやってるんです?そこで待ってて下さい!今行きますから!」
そこにはクラスメイトの女子生徒がいた。忘れ物でも取りに来たんだろう。
飛び降りようとした自分になぜかキレているようだ。慌てて上がって来ている。
「今じゃ珍しい裏表のないバカ、あんたも観察したら?少しは生に意味をもてるだろ。ちょうど居るみたいだし」
「は?なにいってんのだ?下らねぇ」
こちらに背を向け歩きだす死神。
「じゃあな、仕事有るから。」
そう言い残し死神は消えた。
ちょうどその時屋上のドアがひらいた。
「もうなにやってるんですか?」
「自殺」
「え?なに?お札?」
周りは偽善者だらけだと思い込んでいた。だがひとり例外がいた。少なくともこいつは下心を持つほど利口なやつじゃない。
「聞いてるんですか?」
「すまん」
死神が言った通りバカを見てるのも悪くない気がしてきた。
屋上に二人はならんで座った。二人以外誰もいない校舎に話し声が響く。
「要するに生きる事に飽きたってことですか?」
「ああ」
俺を説得するために強制的に話すことになった。
「希望は?」
「ない」
「夢は?」
「ない」
「生きがいは?」
「……」
死神と同じ質問をされてさっきは答えられたのに答えられない。
ため息をつき立ち上がった女子生徒はまっすぐ俺の目を見てくる。
「深く考えすぎなんですよ。いっそ私みたいになればいい」
「バカになれってか?」
「そうですけど?」
「意味わかんねぇ」と今度は俺がため息をつく。
「常識なんて多数決ですよ。私、思うんです。周りを気にしたら敗けなんだって、どうせ死ぬなら見たい者だけを見て、やりたいことをしたほうがいいって」
死んだ目を向けると手をさしのべてきた。
「正直者がバカを見るんなら、いっそバカになればいい。」
死神にダメージをくらっていた死への執着心は、このバカによって止めを刺された。
もはや死ぬことさえめんどくさい。
今ではこのバカが羨ましい。
さしのべてきた手を握り立ち上がった。
「なあ、あんたみたいなバカになれるか?」
「簡単な話です。周りの評価を気にせず、最低限の決まりを守ればいいだけですよ。」
カバンを手に取り「帰るか」と二人で歩き出した。
だが1つ気になることがあった。
「何で俺を止めに来たんだ?」
すると女子生徒は、笑いながら答えた。
「気まぐれですよ。」
「あ~クソ」
血まみれで電柱柱に背を任せて座り込んでいた。全身が痛く、動かない。
薄れていく視界の中、あのバカ女子生徒が駆け寄ってくるのが見えた。
簡単に説明すると帰り道、トラックに退かれそうになった女子生徒を突飛ばし代わりに俺がはねられた。
バカらしい。
気がつけば見覚えのある教室で自分の席に座っていた。
いつもと違うとこは、生徒も教師も影のように真っ黒で、窓の外は何もない真っ暗な空間になっている。黒板には「まえしおんはだ。」
と書かれている。意味がわからない。
訳のわからん空間なのになぜか焦りも不安も無かった。ただいつも授業を受けるているようで憂鬱な気分になる。
ふと、廊下側の窓を見るとあのバカ女子生徒の背後ろ姿が見えた。
またあのバカと会える期待と喜びを胸に廊下に出ると、そこにはあの死神がいた。
「またあんたか」
期待を裏切られ不機嫌になる。
死神はいつものめんどくさそうな目で煙管をくわえた。
「こっちの台詞だクソガキ、良かったな念願の死まであと五分ちょっとだ。」
「じゃあここは?」
だが逆に好都合だ。今あるなぞは全部こいつが知っているだろう。
「お前の精神世界。まあこんな窮屈でつまらんのは初めて見るがな。」
窓の外を見ながら続けた。
「にしても面白いな話だ。あれだけ偽善者を嫌ってたお前が下心なしの本当の正義を持つとわな。傑作だ。」
「勘違いすんなよ」
あくまで俺はあいつのために命を張った訳じゃない。
「俺のためだ。」
鼻で笑った死神が煙管を捨てた。
「それならそれでいい。見てみろ」
言われるがままに窓の外を見るとさっきまで何もなかった空間に綺麗な夕焼けが輝いていた。
「これがバカになって、てにいれた物だ。おめでとう。お前は正真正銘のバカだ。」
しばらく夕焼けを眺めていた。
このまま死ぬのが嫌になってきた。それを見抜いたのか死神が言った。
「転生作業が最近追い付いてなくてな。本当は、駄目だがこっちの都合もあるし奇跡を装ってお前を救ってやってもかまわない。どうする?」
「俺はー
「皮肉な話だな。世界をあんなに退屈し、恨んでいたお前が今じゃ自分を捨ててまで世界を救おうとするなんて。」
不適に笑い、タバコに火をつけた。
「運が悪かっただけだ」
「懐かしく思わないか?お前にとっては『過去の世界』なんだぞ?」
「俺には関係ない話だ。…言い残すことは?」
銃口をDS―13「死神」へ向ける。
「旅の最後はわしが向かいに来てやる。…旅の終わりに幸運を。」
銃声が鳴り響く。
この世界での滞在時間が終わり転移が始まる。
気がついたとき、そこは深夜の校舎だった。
懐中時計を見ると針は2時を指していた。
残段を確認する。
玉は相変わらず一発だけ入っていた。
DS―13通称「死神」
対象は二十代の女性の姿をしています。常にタバコ、煙管などの禁煙物を身につけ五分ごとに使用します。
DS―13は他殺、自殺による死体の近くに表れ白い物体を死体から未知の手段で取り除きその場から消えます。
その他のDS―13の目撃情報によるて気まぐれで自殺を止めたなどの情報があります。
DS協会 報告はいじょうです。
どうせ死ぬなら大胆にいきましょう。




