プロローグ
プロローグなので、主人公はまだ出てきません。
彼らの装備は
ACU上下
ボディーアーマー CIRAS
FASTヘルメットです。
作中に出てくる
アルベリックはM4
アルトゥロはP90
モーリスはM16
コナーはMK14
を持っている設定です。
2101年6月20日 03:45
ネブラスカ州上空をヘリが大きな音を立てながら飛行している。
ヘリの中に4人の男達が対面に座っており、手には銃を持っていた。
彼らはアメリカ陸軍特殊部隊『ミスフィット』隊 アルファチームだ。
ミスフィットの由来はナノマシンに適合しなかった者や、ナノマシンを望まなかった者だけで形成されている部隊だからだ。
しかし、彼らの能力はナノマシンを使った兵士達にも劣らない、だからこそ特殊部隊として、現在も任務に就いていた。
アルファチームは
フランス系アメリカ人のアルベリック・ルルーシュ大佐
アフリカ系アメリカ人のモーリス・ジェファーソン少尉
イギリス系アメリカ人のコナー・ジョーンズ中尉
スペイン系アメリカ人のアルトゥロ・ガルシア少尉
で形成されている。
チームリーダーはアルベリック大佐が務めていた。
彼らはアメリカ国内で新ソ連への協力者達がネブラスカ州で基地を作っているとの情報を受け、脅威の排除の為向かっていた。
ヘリが作戦地域に向かう中
アルトゥロが話し出した。
「なぁ、アルベリック。今回の作戦は民間人を巻き込む可能性はあるのか?」
「いいや、作戦地域周辺には町もない。だか、基地内部に軍関係者以外の人間もいる可能性があるな。しかし、このご時世だ、敵国に協力する者に対しての射殺許可は出ている。もっとも、衛星写真でトップの顔は分かっている。俺たちの目的は協力者のトップを排除する事だ。」
アルベリックは腕に着けている装置を起動させ、ホログラムを映し出した。
そこにオールバックで眼鏡を着けた40代ほどの男性の立体映像が浮かび上がった。
「こいつが俺たちのターゲット、アーサー・スミスだ。よく顔を覚えておけよ」
「こんな冴えない男が大層なことをやるなんてな、余程金になるんだろうねぇ」
「おいおい、モーリス。お前も金に釣られて俺たちを裏切るなよ?」
「100億ドル積まれたら心変わりするかもな、その時はコナー、お前から先に撃つさ」
コナーは隣に座るモーリスの肩を軽く叩いて、笑った。
すると、アルベリックの無線に連絡が入った。
アルベリックは左胸に着いた無線機のスイッチに指を掛け、無線に応じた。
無線から若い女の声が聞こえる。
『アルベリック、こちらイザベラ。いま新たな情報が入ったわ。先行している偵察部隊からの写真によると基地の存在は確実のようだわ』
「そうか… その写真を送ってくれ」
『今送ったわ』
アルベリック達は腕の装置を起動させ、写真データをホログラムに映し出した。
写真には大きな金属の入り口らしきものが見えていた。
基地は地下にあるらしく、入り口は地面に貼り付けたように存在している。
「全く、こんなデカイものをなぜ見逃していたんだ」
『この入り口、普段は周りの風景に溶け込む様に色が変わるの。だから見つけるのに困難だったようね。3時間前にターゲットが内部に入るのを確認しているようだから、ターゲットは確実に中に居るわ。この基地が何の目的で存在するのかは分からないけど、あなた達が頼りよ』
「ステルス機能を持った扉って事か…コピー。アルファリード、アウト」
無線機から指を離し、ホログラムを見つめた。
そして、2枚目の写真を見ると武装した兵士達が複数確認できた。
アルベリックはため息をつき、ホログラムを閉じた。
「皆、見ての通りだ。敵は武装しており、基地は存在している。そしてその基地の目的は不明…」
「だが、ターゲットの存在は確認されている」
「その通りだモーリス。俺たちはいつも通り任務をこなすだけ。楽勝だろ?」
コナーはそう言うと、座席に深く腰掛け直した。
しばらくするとヘリのパイロットからの声が聞こえた。
『そろそろ着陸ポイントだ、準備しておけ』
アルファチームは銃の確認などをし始めた。
そして、ヘリがゆっくりと地面に近づいた。
地面との距離が1m近くになった所で、アルベリック達はヘリから飛び降りた。
コナー、アルトゥロ、モーリスはライフルを構えながら周りの確認をした。
「クリア」
「こっちもだ」
「オールクリア」
アルベリックはヘリに合図を送ると、ヘリは上昇していった。
「よし、アルファ。作戦開始だ。4:16か…迎えのヘリは7:00だ」
「「「了解」」」
アルファチームはポイントに向かいだした。
ヘリの地点からポイントまで約15分だった。
アルファチームは入り口に近づいた。
「コナー、入り口をハッキングしろ」
アルベリックは入り口近くの装置に向かって指示を出した
「了解っと、…2分ほど待ってくれ」
コナーは腕の装置からコネクターを取り出し、装置につないだ。
アルトゥロは入り口の近くを見回しながら、アルベリックに近づいた。
「なぁ、アルベリック。この基地はなんかおかしく無いか?」
「あぁ、アルトゥロ。人影ひとつない上に入り口周辺にカメラも見えないな… 確かに異様だ」
「まるで俺たちを誘い入れているような…」
「よし、入り口を開けるぞ」
コナーがそう言うと入り口は大きな音を立てながら開き始めた。
アルファチームは入り口に銃を向けながら、開くのを待つ。
扉はひと回り大きな音を立てると、動きが止まった。
アルベリックがゆっくりと入り口に近づき始めると、ほかの分隊員も付いてきた。
アルベリックはM4を構えながら、入り口を覗く。内部は真っ白でまるでミサイルポッドのような構造になっていた。
螺旋を描くように階段が設置されており、アルファチームは階段を降り始めた。
しばらく降りると、階段は止まり。横へと続いていた。
すると分厚いドアが目の前にあった。
「これは…ハッキングしてくれコナー」
「了解。…くそっ少し時間が掛かりそうだ」
アルベリックは無線機に指を掛け、通信を行った。
「こちらアルファ、基地内に侵入した。しかし敵影も全く見えない。……なんとも異様な場所だ。なにか情報はないか」
『こちらイザベラ。敵影も見えないってのは変ね… 衛星からそちらの基地を確認したわ。まるでミサイルポッドね。こちらからは情報は無いわ。核兵器工場や生物兵器工場の可能性もあるわね…… 敵影が見えないのも気になるし…』
「…了解。ここからはカメラで情報をそちらに送る」
アルベリックはヘルメットに着いた小型カメラの電源を付け、腕の装置とリンクさせた。
『映像はしっかりと見えるわ』
「了解。アルベリック、アウト」
「皆聞いてくれ、ここからはガスマスクを着けるんだ。化学兵器や生物兵器の可能性もあるからな」
アルベリック達はバックパックからガスマスクを取り出し顔に装着した。
コナーはハッキングをしながら話し出した。
「フー、ゾンビ開発工場だったりしてな」
「あの映画みたいにか? 勘弁してくれ… 俺ホラーは苦手なんだよ」
「なんだ?アルトゥロ、ビビってんのか?」
「そう言うお前はどうなんだ、モーリス」
「俺か?俺は平気さ、エイリアンだろうが何だろうがビビらねえよ」
「おい、任務中だと忘れたのか?任務に集中しろ」
「はいはい、アルベリックパパのお叱りだ…っとそろそろ開くぞ」
ドアのランプが緑に点灯すると、ドアが開きだした。
内部は真っ暗だったが、通路になっているのが確認できた。
アルファチームはライトを点灯させ、周辺を確認しながら中へと入っていった。
内部には人影は見えず、奥にあるドアのランプだけが存在感を放っていた。
アルファチームはゆっくりと奥へと向かった。
中間地点まで進むと、奥のドアのランプが緑に代わった。
「注意しろ!ドアが開くぞ!」
モーリスが叫ぶと、アルファチームは両サイドの壁にへばりつき、ドアへと銃を向けた。
ドアが開くと同時にドアからいくつもの光が見えた。
銃口から光るマズルフラッシュだ。
アルファチームもドアに向け、発砲を始める。
「クソ!いきなり戦闘かよ!こんな遮蔽物が全く無いところで!」
アルトゥロはP90を撃ちながら叫ぶ
「いいから撃て!あいつらを全滅させろ!」
モーリスもM16のトリガーを引きながら叫んだ。
「リロード!」
「カバーする!」
コナーが装填準備に入ると、アルベリックがコナーの前に立ち、牽制射撃を続ける。
「ムーブ!ムーブ!」
アルトゥロの叫び声に合わせて、アルファチームは前へと進んだ。
ドアまで10mほどになると、アルベリックはフラッシュバンのピンを抜いた。
「フラッシュバン行くぞ!」
フラッシュバンをドアの向こうに投げると同時にアルベリック達は目を覆った。
激しい光と音が辺りを包んだ。
光が消えると同時に、アルファチームはドアに一気に近づきドアの側にいる敵に銃弾を叩き込んだ。
敵は壁に持たれるように倒れこんだ。
そして、銃声が止んだ。
アルファチームは敵の死体を確認し、辺りに目を配らせる。
「クリア!」
「クリア」
「クリア」
アルベリックは仲間の声を聞きながら、敵の死体の確認を済ませた。
「こちらもクリアだ」
アルベリックはそばに倒れている真っ黒な装備をした敵のヘルメットを取り、顔を確認する。
アメリカ人のようだった。
しかし、顔中に血管が浮き出ており、異様な面相をしていた。
そして、他の兵士のヘルメットも外し、顔を見るとそいつも血管が浮き出ていた。
「おい、皆こいつら見てみろ」
「うわ、すっげえ顔だな」
「まるでヤク中だな、それに見てみろ。こいつらの装備」
コナーは死体を蹴り、銃を拾い上げた。
「ナイトビジョンにG11だと?それに見てみろ、こいつらの銃。心拍を感知して敵の場所を表示するアタッチメントを着けてやがる」
「金を掛けているな。…敵のアタッチメントは貰っておこう。視界が無い中、この装備は有難い」
アルベリック達は敵の銃からアタッチメントを拾い上げ、自分の銃に付けた。
するとアルファチームに無線が入る。
『こちらイザベラ、さっきの映像で大変な事が分かったわ。その兵士達の異様な様子、ナノマシンの副作用にとても似ているらしいの、そいつらの首筋を見て頂戴。注射痕があるはずよ』
アルベリックはライトを死体の首筋に照らし、確認すると確かに注射痕が見られた
「確認した… こいつらはナノマシン服用者か、しかし軍内で使っているナノマシンだと、こうはならないはずだ」
『恐らく、そこの基地は新ソ連のナノマシン研究所の可能性が高いわ。私達の技術を盗んで本国へデータを送っているのだと考えられる。まだまだ粗悪品のようだけども……ナノマシン研究は最重要機密だからセキュリティは完璧だったはずなのに…』
「つまり、ターゲットはナノマシン研究と何やら関わりがあると言う可能性があるようだな。…この技術があいつらのものになると俺たちは不利になるな」
『その通りよ、アルトゥロ。貴方達の任務で今後の戦争の展開が変わるって事ね。全く、なんて事かしら…
近くの基地から援軍が向かっているわ、でも貴方達は急いで任務を遂行して。世界のために頼んだわよ』
「アルファチーム、了解。アルベリック、アウト」
「聞いたか?俺たちの任務の重要性が跳ね上がったな」
「あぁ、だが任務を遂行させれば俺たちはヒーローだな」
コナーとモーリスはそう言うとお互いに拳を合わせた。
「失敗は出来ないな…」
「その通りだ、アルトゥロ。アルファチーム、俺たちがヒーローになろう」
「そうだな、隊長」
アルファチームは銃を構え直し、通路の奥へと向かっていった。
しばらく進むと、またドアがあった。
先程拾った敵の装置を確認すると、大勢の人間がこの奥にいるようだった。
コナーがハッキングをし、扉を開くと大きな研究所に着いた。
中はさっきと変わって明るく、目が眩んだ。
中には大勢の兵士と、大勢の青い研究服を纏った人間がいた。
研究所の中央にタワーがあり、中にターゲットを見つけた
開けたと同時に近くに銃弾が何発も着弾した。
「エンゲージ!アルファ!散らばれ!」
アルベリックの指示通り、アルファチームは散開した。
そして、近くの机などの遮蔽物に隠れた。
「おい!アルベリック!研究者も撃っていいのか!?」
モーリスがアルベリックに向かって叫ぶ
「抵抗するようなら撃て!取り敢えずは武装の無力化だ!」
アルベリックはM4を机の上から覗かせて、見える敵を撃った。
弾は敵の胸や頭を貫いた。
コナーは柱にへばりつきながら、MK14で敵を確実に減らしていった。
彼が引き金を引くたび、敵は一人一人と減っていった。
「エネミーダウン!…もう一つ!」
すると、敵兵士の撃った弾がコナーの肩を貫いた。
コナーは柱に隠れ、しゃがみこんだ。
「クソ!撃たれた!」
「コナー!大丈夫か!」
近くにいるアルトゥロはコナーの方を見る
「肩を撃たれただけだ!クソッタレ!」
アルトゥロはP90をコナーの足元に転がした。
コナーはMK14をアルトゥロに向かって投げた、残った弾薬と共に。
そしてコナーは片手でP90を持ちながら連射した。
アルベリックは近くにいるモーリスのそばに行った。
「俺は側面に回り込む!援護しろ!」
「了解!」
アルベリックはモーリスの肩を叩き、遮蔽物から飛び出した。
飛び出したアルベリックを狙おうとした敵にモーリスは弾を食らわせる。
そして、少しでも顔を出そうとしたやつに対しても牽制を掛ける。
そして、アルベリックは側面から見える敵を次々と殺した。
敵は次々に追い詰められていった。
その時、アルベリックの目の前で敵がナノマシンを注射してあるのが見えた。
すると、敵は遮蔽物からゆらりと立ち上がった。
そして、アルベリック達の方向へと銃を撃ちながら歩き出した。
「ナノマシンを打っているぞ!こいつら…狂人になってやがる!」
アルベリックはそう叫ぶと近寄ってくる敵を撃った。
弾は左胸辺りに当たったが、敵はそのまま歩き続けた。
「気狂いどもめ!」
M4の照準を敵の頭部に合わせて、発砲した。
弾は敵の脳みそをえぐり出し、貫通した。
ナノマシン服用者でも急所を撃たれると絶命する
奥で固まった敵は仲間同士で殺し合いをしている奴もいた。
中には訳もわからず、研究者たちを撃ち殺している者もいた。
だが、多くの敵はアルファチームの元へと歩み寄っていく。
アルベリックは敵の頭に照準を合わせ、続々と倒していく。
他の分隊員も敵を続々と倒した。
コナーはP90でそばまで来た敵を確実に仕留めていった。
アルベリックの側に敵が近寄っていた。彼は目の前の敵に気を取られ、気づいていなかった。
「アルベリック!!横だ!!」
アルトゥロは、アルベリックのそばに近寄るの敵に対して発砲した。
弾は敵の上半身に何発も当たったが、急所には当たらなかった。
敵はすぐにアルトゥロの方を向くと、発砲した。
弾はまっすぐアルトゥロの頭に向かって飛んで行き、アルトゥロの頭部に直撃した。
アルトゥロはそのまま後ろに倒れた。
「クソ!この野郎!」
アルベリックは即座に敵の頭に照準を合わせ、引き金を引く。
そして、立ち上がり、一気に目の前に映る敵を葬った。
最後の一人を倒そうとした瞬間。弾がアルベリックの腹部を貫いた。
アルベリックはそのまま倒れ込んだ。
モーリスは最後の敵を仕留めると、アルベリックの元へ走った。
コナーは肩を抑えながら、柱に座り込んだ。
「アルベリック!!」
アルベリックは腹部を抑えながら、ゆっくりと立ち上がった。
「急所は外した様だ… アルトゥロは…」
モーリスの肩を借りながら、アルトゥロのそばに近寄った。
アルトゥロの頭部からは止めどなく血が流れ、辺りを染めていた。
「クソっ… イザベラ。アルトゥロが死亡した」
アルベリックは無線機に手を当て、報告する。
『ええ、確認したわ… でも今は任務に集中して。彼の遺体は後で回収する…』
「あぁ、任務はまだ終わっていない」
アルベリックはM9を取り出し、中央のタワーへと向かった
モーリスとコナーもアルベリックについて行く。
階段を登り、M9を構えながらドアの前に着いた。
モーリスが先行し、ドアに手を掛けた。
そして、勢いよく扉を開き、突入した。
モーリス突入するとそれに続いてアルベリックとコナーも突入した。
「武器を捨てて、床に伏せろ!」
モーリスは部屋の中の人物に向かって怒鳴る。
中にはパソコンと、ナノマシンが入っているだろう液体がいくつもあった。
そして、パソコンの前の椅子にターゲット『アーサー・スミス』が座っている。
アーサーは彼らを見ると机を叩き、わなわなと肩を震わせた。
「この偽善者どもめ…」
モーリスに続き、部屋に入ったアルベリックがM9を向けながら話す
「黙れ、アーサー・スミス。お前を確保する」
「排除だったんじゃないのか?」
コナーは銃をターゲットに向けながら、アルベリックに話しかけた。
「まさか、ナノマシン研究者だとは思わなかったからな。こいつには喋ってもらうことが沢山ありそうだ」
『その通りよ、アルファチーム。そいつを確保して。』
モーリスは銃を構えながら、アーサーに近づく。
側にあるPCのモニターに目をやると、『60%アップロード』との文字が見えた。
「まさか!」
モーリスはアーサーを押し退けて、PCのキーボードを弄った。
そして、アップロードを中止させた。
「くそ!こいつ、データを送ってやがった!」
アーサーは側にある机の裏側を弄ると、ドアに被さるようにシャッターが降りてきた。
「一体なんだ!?」
コナーは急いで振り返り、シャッターを叩く。
しかし、シャッターはビクともしなかった。
モーリスはアーサーの胸ぐらを掴み、怒鳴る
「貴様!何のつもりだ!」
「さあな、偽善者のクソッタレどもめ!!」
「この野郎!」
コナーはアーサーに近づき、顔にパンチをお見舞いした。
アーサーは口から血を流し、血の混じった唾をコナーに吐きつけた。
すると、部屋内にガスが流れ出した。
「なんだ!?これは!」
アルベリックはそう叫び、撃たれた腹部をキツく抑えた。
アーサーは最期の抵抗と言わんばかりに、隠し持っていたナイフの取っ手部分でモーリスのガスマスクを殴り、穴を開けた。
ガスが部屋を満たすと、モーリスが掴んだアーサーに異変が起きた。
まるで皮膚が腐るように、ボロボロと空中に散布し、彼の人相が見る見るうちに変わっていった。
「うわ!生物兵器か!?」
モーリスは咄嗟に手を離し、アーサーから離れる。
アーサーは悶えながら、床を転がり回る。
そして、見る見るうちに皮膚が溶け、赤い筋肉が見え始めた。
モーリスばアーサーを掴んでいた手をよく見ると、だんだんと手袋が薄くなっていくのを感じた。
コナーや、アルベリックも同じだった。
アルベリックはコナーの方を見ると、彼の傷口が溶けているのが見えた。
「コナー、お前の肩が…」
「あ?なんだって?」
コナーはゆっくりと自分の肩を見た。
すると傷口が先程よりもどんどんと大きくなっており、大きな穴が開いている。
しかし、彼は痛みを感じていなかった。
何よりも、傷が大きくなっているが、血は一切出ていなかったのだ。
「なんだよ…これは。痛みは感じねえのに傷が大きくなっていきやがる…」
咄嗟にコナーは肩を抑えた。
アルベリックはふと、モーリスに動きが無くなった事に気付いた。
「おい、モーリス。」
アルベリックは彼の肩を掴むと、モーリスはそのまま、崩れ落ちた。
そして、ガスマスクから覗く顔は、既に彼らが知るモーリスじゃなかった。
既に、顔は無く、飛び出した目玉と顔の筋肉だけが見える。
まるで、人体模型のような感じだった。
「くそ!モーリス!!なんだこのガスは!俺たちの身体を食っていってやがるのか!コナー、急いで脱出だ!!」
「あ、ああ。ハッキングしてみる」
コナーは近くのドアの制御装置にコネクターを挿しこみ、ハッキングを試みる。
しかし、既に制御装置に電源は入っていなかった。
既に彼らの服にはいくつか穴が開き始め、そこから彼らの身体を蝕んで行った。
「HQ!こちらアルファ!敵の生物兵器による攻撃を受けている!ドアを開こうとしても開かない!そちらから開けられないか試してくれ!」
『え、ええ。試してみるわ… 援軍も急がせるから!』
アルベリックは近くのシャッターを蹴ったり、シャッターに向かって発砲したりしたが、シャッターは異常に硬く、ビクともしなかった。
アルベリックは自分の手を見ると、既に手袋はなく、指の何本かはもう骨が見えていた。
コナーを見ると、既に息絶えていた。
アルベリックは自分の身体がもうすでにほぼ喰われている事を悟った。そして、助からない事も。
アルベリックは白骨化した指で無線機に指を掛けて通信を行った。
「こちらアルファチーム。…化学兵器か生物兵器による攻撃を受けた。ターゲットは自滅… アルファチームは全員死亡… 繰り返す。 アルファチームは全員死」
そこで、彼の声は途切れた。
彼のヘルメットからの映像では、彼はそのまま力なく地面に倒れ込んだ。
そして、部屋の床を写したまま、2分ほど過ぎると、彼の映像は途切れた。
ちょっと長すぎましたが、本編からはちゃんと区切っていきます。