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第六十話 前祝

「……ではお荷物確かにお届けしました、またのご利用をお待ちしています!」

「……はあ、ご苦労様です……」

 無暗に元気な配達員の声を聞きつつ、呆然と立ち尽くしていた。俺は突発の事件に弱い。だから<突然><姉ちゃんが><推定20kgの荷物を><俺宛に>送ってなどきたら、脳がフリーズを起こすのも当然なのである。

「……とりあえず姉ちゃんに電話しよう……」

 結局、いくら考えても思いつかないので、当人に確かめてみることに。宅配物を開けてみる、という選択肢は、私物だったら物理的な話し合いという名のリンチに早変わりするので却下。プライド? そんなもの命の前では値打ちなど無きに等しい。

 ……そもそも、姉ちゃんと会話すると精神に多大な負担がかかるから、あまりしたくはないのだが、是非もない。……鬱だ。

「もしもし直樹? 届いた?」

「荷物のことなら届いたぞ、なぜか俺宛で」

「そりゃー当然よ、だってあんたへのプレゼントだもん」

「プレゼント?」

「あ、もしかして早すぎた? でも一週間前だもんね、許容範囲内でしょ」

「あー、つまりこの宅配便は……」

「そ、あんたへの誕生日プレゼント」




「……とまあ、俺は自分の誕生日を忘れとったわけなんだ」

「おいおい旦那、痴呆か?」

「自分の誕生日忘れるとかー、末期だよねー」

 やかましいわ。意外とへこむぞこの野郎。

「で、親愛なる旦那の御姉様からの贈り物はなんだったんだ?」

「相当重かったんだよねー? 段ボール一杯の札束とかー?」

「怖いわ!」

 実際そんなもん送られてきたら、姉ちゃん相手でも警察に通報するだろ。どう考えてもまともな金じゃない。

「違うよな旦那、20kg分の米とかじゃね」

「何が悲しゅうて、年に一度の誕生日に米を貰わんといかんのだ」

 ダンボール開けたらコシヒカリとか笑えねえよ。

「じゃあわかんないやー、」

「降参だ」

「お前らの発想力には重大な欠陥があるとしか考えられん……」

 脳外科に行ったら多少良くなるかもしれん。……いや、医者が匙投げるレベルだろうな。

「で、貰ったのは?」

「ダンベル」

「…………」

「あーーー」

 ……姉ちゃんが俺に何を望んでいるのかがわからない。




 同時刻、同クラス。少し離れた席で聞き耳を立てる少女が一人いた。

「……そっか、なおくんの誕生日、もうすぐなんだ……」

「辰美、おーい、話聞いてるー?」

「……インパクトが大事だよね……」

「……だめだこの娘」

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