第五十八話 ジャンプ漫画
今日も今日とて同じメンバーでの雑談。まったくもって暇な連中である。進歩はないのか、飽きはしないのか、まったくもって理解不能である。
「何ブツブツ言ってんだ、旦那?」
「……いや、単なる自己嫌悪だ、気にしないでくれ」
「ジャンプ漫画で一番燃えるのはドラゴンボールだよな! 格が違う」
「ミニバスやってた僕からするとー、スラムダンクは外せないよねー」
「ふん、まだまだだな二人とも。歴史に残る燃え漫画の傑作を忘れるとは。それでも一介のオタクと言えるのか?」
「自称オタクではない旦那がそこまで言うとは……。ここでワンピースとかブリーチとか言ったら、少し旦那を見る目が変わるぞ?」
「具体的にはどんな風に?」
「<オタクであることを否定しているものの、実はかなりこっち側の人間>から<こっち側の人間なのに一般人ぶる常識人(笑)まがいの人間>へとシフトチェンジする」
「現在の評価も十分悲惨じゃねえか!」
「おやおやー、そんなにむきになっちゃってー」
く、これ以上反論しようにも、すればするだけ俺の印象が悪い方向に行くことになる。かといって何もしなければ、ただひたすらに変なイメージが残ってしまう。なんて巧妙かつ悪辣な手口なんだ……。幽々白書に出てくる閻魔大王(コエンマの父親、ごつい)でもここまでの非道はしまい……!
「旦那、無理にジャンプネタに走らんでもよかろう」
「そうだな。俺もちょっと無理があると思った」
お前の発言を否定したいのは本気だが。……いやマジで。
「それでー、三井が勧める燃え漫画の傑作はー?」
「Toloveる? いちご100%? I's?」
「なぜ青少年がもし好きでも「べ、別にこんなのに興味ねーよ」と思わずツンデレなセリフを吐いてしまう漫画を選んでしまった」
「ボーボボー? ミスフルー?」
「ギャグ漫画じゃねえか」
「旦那の中ではミスフルはギャグ漫画なのか……」
正直野球シーンはいらないと思うんだ。ギャグマンガなのに熱くなる筆頭は世紀末リーダー伝たけしだが、その対局はミスフルと言っていいだろう。野球漫画? ルーキーズでいいんじゃね?
「他何かあったっけー? 黒ネコさんとかー?」
「ガンアクション漫画を宅急便みたく呼ぶな」
「ブリーチとかナルトか?」
「もう完結した漫画だ」
「ターちゃんとかマキバオーとか」
「それもあったな、だが俺の中ではそれ以上に燃える作品だ」
「筋肉マンー?」
「チヂミマンとかいるんだぜ? 名前のノリがラッキーマンと同じレベルだろ」
これは大場つぐ……ガモウひろしが真似したというべきか。
「サラブレッドと呼ばないで?」
「覚えてる人いるのか」
確かに良作だったけれども。
「てかお前らほんとに忘れてんのか!? 傑作があるだろう、<ダイの大冒険>という傑作が!」
ポップの成長っぷりとか格好良さとか、あれは言葉じゃ語りつくせんほどだろ!
「これだからお前らは、萌えに走って本質を忘れてるんじゃないのか? 少年漫画、ゲーム原作の漫画の最高峰だろうに……」
これは二人とも説教コースだな。みっちりとシグマの男前っぷりについて指導せんと……。
「てか旦那」
「どうした?」
「今まさに旦那がオタクっぽい」
「…………」
……なんてこったい。
今月は飲み会で後輩を奢らないといけない(8000円)のに、北方謙三の楊令伝を大人買い(八巻、5000円)してしまうという。衝動買いって怖いですね! 来月はパワポタも買わないといけないのに……。