第五十一話 会話
また間隔空きましたね。吉野家のセールが悪いんです。店長が七連勤とか入れるから……。
以上聞き苦しい言い訳でした。本編どうぞ。
「店員さん、頭の特盛りとけんちん汁、ポテトサラダの胡麻ドレッシングで頼むよ」
「ねえねえ、頭の特盛りってなあに?」
「頭の特盛りとはご飯は並みの量、牛肉は特盛りの量というメニューのことさ」
「へえ、清水君って物知りなんだね、素敵!」
「お待たせしました、こちら御注文の品になります。ごゆっくりどうぞ」
「ああ待って」
「はい?」
「先に会計を頼むよ」
「どうして先に?」
「帰りに混んでたら時間かかるだろう? 先に払っておいていつでも帰れるようにしたいのさ」
「後あとのことまで考えてるなんて素敵ね!」
「……ってな感じにデートは進展すると思うんだ、吉野家デート」
以上清水の妄想でした。
「保護者、こいつの妄想が少しでも予想通りに行くと思うか?」
「ありえませんね」
「……だよな」
男の俺(彼女経験無し)の考えだし、もしかしたら女とは考え方が違うのかなーなどという少しばかりの同情心は無駄だったらしい。当然か。
「なぜに!? これだけ知識をアピールしたというのにどうして?」
「先輩、事実を述べてもいいですか?」
「なぜ俺に確認を求める」
「……本気で言ったら、先輩に引かれるかもしれないじゃないですか」
「構わん、俺は気にしない。大体お前の毒舌は承知の上だし、清水は多少痛い目にあった方がいい」
「それなら言わせてもらいます。そこの人は反省しつつ聞いてください」
「わかった! いくらでも聞くぜ!」
何そのナイスガイっぽい返事。叱られるのに。
それでは……と前置きしつつ、保護者は言葉を発した。
「まず吉野家に彼女を連れてくる発想が意味不明です。安い速い旨いが信条の店に気になる人を連れてくるって親睦を深める気あるんですか? それに吉野家に詳しいって常連ですか。日頃の食生活がいかに荒れてるかアピールしてるんですね、馬鹿みたいです。その上値段一緒でお米の量だけ少ないメニュー頼んで勿体ない。お腹がすいてないなら並でも頼めばいいでしょう、肉ばっかり食べたいなんてどれだけ肉に飢えてるんですか。筋肉かもしれないですけどあなたの肉は常人以上なんですから自重してください。最後に会計を先にやるのは食い逃げに間違われる原因になるじゃないですか。デートでそんなことになったら馬鹿ですよ。知的とはあなたからもっともかけ離れた言葉です。異常ですが、総じて言うならこれは最悪です。センスないです。彼女が欲しいなら私のいない、一般人に迷惑がかからないあなたの頭の中でいくらでも声かけてください。誰か理想的な女性が引っかかるんじゃないですか? 心底興味ないんでどうでもいいですけど」
「うわあああああああん」
あ、清水が泣いて去っていった。頑張れ清水、いいことあるさ。来世かもしれんけど。
「……どうでもいいけど会計は俺持ちか?」
「先に会計してませんでしたよね、あんなこと言ってましたけど」
……まあ、毒舌浴びせられたのは間接的に俺のせいだし、ここは払っておこう。
「しかしまあ……よく言ったもんだな。気に食わんことでもあったのか?」
「……先輩がそれを言いますか?」
確かに、用件も言わずに呼び出したりしたの俺だしな、申し訳ない。……そうだ。
「保護者、これから暇か?」
「暇じゃないならわざわざ来ませんよ」
それはよかった、なら……。
「今から映画にでも行こう」
「……え?」
「おごるぞ? 見る映画も決めていいし……迷惑掛けたしな」
「え、ちょ、な、あの、いいんですか!?」
「俺が怒らせたみたいだしな……、嫌か?」
「嫌じゃないです! 大歓迎です! 災い転じて福となるです!」
「よーし、じゃあ今から行くか」
「行きましょう! 今恋愛映画やってましたよね!? 二人っきりで観賞しましょう!」
うんうん、機嫌を直してくれたみたいでよかった、それならもっと奮発して―――
「そんなに喜んでくれるなら、みんなも呼ぶか。義人とか石井とかタツミとかぶほぁっ!?」
みぞおち入った! みんなで楽しませようと思ったのに何故!?
「……余計なことはしないで、二人っきりで行きましょうね、せ・ん・ぱ・い?」
「……行きましょう」
こわいです保護者さん。いやまじで。