番外編 トラウマバレンタイン
ケース一 初バレンタイン(姉編、三井直樹三歳)
「直樹、いいものあげるからこっちにおいで」
「わー、なになに、お姉ちゃん」
「今日はバレンタインって言ってね、女の子が男の子にチョコをあげる日なんだよ」
「なら、お姉ちゃんは僕にチョコをくれるの?」
「そうだよ。はいこれ」
「わーいありがとう。チロ○チョコだー。食べていい?」
「いいよ。食べなさい」
「いただきまーす……うん、おいしかった。ありがとう!」
「食べたね?」
「え?」
「チョコを食べたね?」
「う、うん、お姉ちゃんが食べていいって言ったから……」
「時に直樹、三月十四日はホワイトデーと言ってね、男の子がチョコを貰った女の子にお返しをする日なんだ」
「そうなんだ。じゃあ、その日にお返しすればいいんだね」
「その通り」
「あー、でも何がいいのかなあ……」
「それなら私の欲しいものでいい?」
「うん、いいよ! でもお金のかかるのは無理だけど……」
「ああ、そんなことはないよ」
「じゃあなんでも言って!」
「<絶対服従券>」
「!?」
「だから、私に絶対服従を誓うという券」
「……効果はいつまでなの?」
「無論生涯続く」
ケースニ 悲劇(タツミ編、三井直樹四歳)
「え、ちょっと待って、泥は食べられないよ、冗談だよね、バレンタインはチョコを食べる日であって泥を食べる日では……ままごとだよね、僕がそれを口に含む必要はない……ちょっと、なんでそんな無理やり……やめて! 手を塞がないで! 話せばわかるよ! だから早まらないで! 少し考えればわかるでしょ、泥団子は食べるものじゃないよ、いや、ちょっといやああああああああああ!!!」
ケース三 平等に(保護者編、三井直樹十二歳)
「おーい旦那、女子がバレンタインのチョコ配ってるぞ」
「……!? バレンタイン怖いバレンタイン怖いバレンタイン怖い」
「旦那、何に怯えてるんだ……? お、保護者ちゃんも来たぞ」
「せ、先輩! バレンタインですから! 義理の! 義理のチョコをあげます! 感謝してくださいね!」
「……食べられるのか?」
「いや、チョコは食べるものだろ。何言ってんだ」
「いいから早く受け取ってください!」
「うわ、でっかいチョコだな……本当に義理なのか怪し痛い!?」
「杉田先輩は黙っててください」
「……ありがとう、保護者」
「……っ! 義理ですから! 勘違いしないでください!」
「なーなー、俺にはないの?」
「……杉田先輩にもありますよ、はい」
「……なんで俺は五円○あるよチョコ?」
「義理ですからそんなもんでしょう」
「やっぱり旦那だけ特別だろ」
「義人、せっかくくれた保護者に失礼だろ。あらぬ疑いをかけたりしたら。義理じゃなきゃ本命ってことだろ? 保護者が俺を好きなんてありえんよ」
「…………」
「…………」
「あれ、なんで二人とも黙る? 俺悪いこと言ったか?」
「……死ねばいいのに」
「保護者ひでえ!?」