第四十五話 健三さん in 占いの館
「何度かここには来ていますが……相も変わらず辺境の地ですね、この中学は」
娘の文化祭ということで、わざわざこの地までやってきてしまいました。風は強い上に、車での来校は禁止と、来る要素はほとんどないのですが来てしまいました。これで興ざめするような出し物ばかり見せられた日には、教育委員会に一言いってやらなければなりません。以前会った教育委員会のお偉方は、祝電で無駄な長話をするくらいしか脳がないようでしたので、効果など期待できるはずもありませんが。
「そこのおじさん、うちらのクラスで占っていきませんかー?」
歩いていると、小さなお嬢さんに呼び止められました。女子は発育が早いので高校生と大して変わらないはずですが……それでも小さく感じますね。
「占いですか、それは面白そうですね。少しばかり立ち寄らせていただきましょう」
「いらっしゃいませ! いやー、さっきごたごたがあって入客数が減ってたんですよー」
ごたごたを起こす人がいるとは。お祭りとはいえ場をわきまえてほしいものです。
「……では、何を占って欲しいのですか?」
そうですね。
「では韓国経済がいつ破綻するのかについて……」
私の予想では、アメリカへの借金返済時期が来る四月ごろなのですが。
「……あの、もう少し小さなことでお願いできますか……?」
まあ、これを当てられたら経済評論家が涙目になりますしね。きっとわかってて答えないのでしょう。奥ゆかしい。
「それでは金正日がいつし」
「それも駄目です! 国際関係はやめてください! できれば政治も!」
ふむ、それでは何を尋ねましょうか。
「明日の天気は」
「天気予報を見てください」
「ドラクエ9は成功するのか」
「批評サイトでも見てください」
「この世に神はいますか」
「いません」
最後は普通に否定されましたね。無神論者なのでしょうか。
「……もう少し占いがいのあることを聞いてくれますか?」
贅沢な占い師ですね。注文の多い占いの館です。
「……それでは、ですね……」
本命を占ってもらうこととしますか。
占いの館を出た後も、私の満足感が途絶えることはありませんでした。
「私の望むように、あなたの娘さんの望む通りにことは進むでしょう、ですか」
まあ、あれだけ努力をしているのです。神がいないのなら実力で結果は決まるのですから当然でしょう―――そう思いながら歩く健三さんの鞄には、<合格祈願>のお守りが踊っているのだった。
健三さんを出してほしいとの要望だったので、出てきてもらいました。いつもながらの人気ぶりに脱帽です。