第三十八話 抵抗
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「土曜日は、文化祭だそうですね」
「それがどうかしましたか、父さん」
「あなたの中学では一般客も来てよいはずですよね」
「仰るとおりですが、何か?」
「なぜ父を誘わないのです」
「思春期の女子は親を他人に見られるのが嫌なものなのです」
「それと情報を与えないのは別問題だと思いますが」
「教えなければ双方嫌な思いをしなくていいでしょう?」
「それは気付かなければこそ、言えることです。現に、無視をされた父の心は深く傷ついています」
「無表情で言われても、説得力はありませんよ」
「それは表面上に限ったことです。内心では海よりも深い傷を負いました」
「せいぜい瀬戸内海程度の深さでしょう」
「いえ、マリアナ海溝以上の溝を抱えているのですよ」
「それは可哀想ですね。家でゆっくりと傷を癒してください。家で」
「二度言いましたね? 文化祭には来るな、との念押しですか」
「その通りです」
「……ということが昨日あったのですよ」
例によって授業が一段落したころ、健三さんの無駄話(娘の悲哀編)を聞かされていた。思春期なら仕方がないのではないだろうか。俺も姉が文化祭に来て迷惑したので、健三さんの娘さんに賛成だ。……でも保護者は俺を呼んだんだよな。身内でないからいいのか。
「それに続けて、娘は「父さんのような変人に来られると、私だけでなく周囲の人々にも迷惑です」とまで言うんです。ひどいですよねえ」
人ごとみたいに言わんで下さい。俺たちはその周囲の人々に含まれているんですから。
「私のどこが変人だというのでしょうか。娘は家での私しか知らないからそう言うのでしょうねえ」
……健三さん。少なくとも、学校でのあなたは変人以外の何物でもない。そして家でそう思われているのならツーアウトだ。サッカーならカード二枚で退場です。
「まあ、どれだけ抵抗したところで、私が行くのは何人たりとも止められないのですけどね」
大人げねえ! 娘が嫌がってるなら止めてあげてくださいよ!
「本来、文化祭とは日頃の学習成果を発表する場だと思うのです。地域の文化や歴史……そういったものを親に見せることで、学校での学習は充実したものである―そう披露するものが根底になければなりません。したがって、私が娘の文化祭に行くのには正当な理由があると言えるでしょう」
健三さんが正論を言ってる!
「まあ、実際そんなことやられでもしたら行きませんけどね。今回の目的は暇つぶしが第一ですから。あくまでそれは、私が行くための建前です。方便とも言います」
でもやっぱり健三さんだ! ここまで自分中心だといっそ清々しい!
「第二の目的は娘が嫌がるからなんですけどね」
屈折した愛情!?
「人の嫌がることを進んでしましょう……いい言葉です」
悪用しないでください!