第三十七話 予定
「先輩、今度の土曜日お暇ですか? 暇ですよね? 部活がないのは杉田先輩から聞いてますし、それ以外重要な用事が先輩にあるとは思えません」
「どれだけ失礼な発言か分かっていってるのか貴様は」
義人め、俺の情報を保護者相手に筒抜けにするとは。個人情報保護の概念が存在しないのか。それに保護者。俺は繊細な性格なんだぞ? その発言がショックで登校拒否になり、ニートにでもなったらどう責任取ってくれる。
「その時は……その……私が養います!」
「ヒモ生活!?」
この年から将来ヒモになる生活を考えてどうするんだ、おい。
「……まあ、それは冗談としてもだ。俺の土曜の予定が部活がなければフリーだと、本当にそう考えているのか?」
「はい」
即答か。即答なのか。……先輩としての威厳が存在しないのか。そういう相手には、少しばかり仕置が必要だな。
「―残念ながらその日はデートの約束が……何重くて硬そうなバールのようなものを手に振りかざしてるんだ!?」
「先輩を殺して、私も先輩の墓を建てます……!」
「それただの殺害予告だ! も、じゃない! それに冗談だから! 別にデートの約束もなければ土曜に予定も入ってない!」
「……本当に?」
「本当だからそのバールのようなものを下ろせ! 下ろしてくださいお願いします!」
土下座しかねない勢いで頼むと、渋々ながら保護者は凶器を下ろした。……危なかった。思い出が、今まで培ってきたトラウマが走馬灯として目の前を通り過ぎたぞ。涙出てるんじゃないのか、これ?
「先輩、何泣いてるんですか、これくらいのことで。怖かったんですか?」
「……いや、むしろ今までのトラウマを思い出したことで涙が出た」
自分で言ってて情けない。これから死にそうになるたび、あの情景を見ることになるのか、恐ろしい。
……そもそも、何度も死にそうになることがありえないか。
「で、土曜暇だとしたら何なんだ?」
「私たちの文化祭が土曜日なんです」
「それはよかったな、頑張れ」
「……本気で言ってますか?」
「……いかないと駄目?」
「女性の誘いには応じるのが男性でしょう」
「面倒くさい」
「楽しいですよ」
「それはよかった。友達と楽しむといい」
「でも、先輩と一緒だとより楽しいと思うんです」
「俺は読書を一人でしても楽しめるぞ?」
「…………」
「…………」
「杉田先輩に頼んでおきます」
「……結局行くことになるのか……」
断っても無駄なんだろうな。断ったら断ったで、一時期の騒音おばさんのように騒ぎ立てられることが目に見えてるし。
「仕方ない。行くことにしよう。保護者、お前のクラスは?」
「3−6です」
「シフトは何時頃だ?」
「午前中です……来てくれるんですね!?」
「いや、その時間を避けていく」
「…………」
「…………」
「き・て・く・だ・さ・い・ね?」
「……はい」
やけにプレッシャーのかけ方がうまくなったなあ、保護者。あ、また涙が……。
テスト四時間前なのに小説を書いている自分に、我ながらびっくり。
現実逃避っていいですよね!