第三十三話 圏外
あけましておめでとうございます。今年もええじゃないかをどうぞよろしくお願いします。
体育倉庫に着いたものの、実際何をすればいいのか聞いていなかった俺。ある意味間抜けだ。
「さてタツミ、俺はいったい何をすればいい? 掃除か? それとも何か用具でも出せばいいのか?」
どうせ小倉さんから頼まれたのだろうから、仕事はここら辺のはずだ。以前にも何度か強制労働させられたし。
「えっとね……その……」
言いよどむ様な事か? ……まさか一人でそこにある跳び箱(十段)を運べとでもいうのだろうか。一遍にやれと言われても無理だぞ。俺はひ弱なんだから、力仕事ならラグビー部の連中にでも頼んだ方が得策だ。
「あの……ね?」
「なんだ!?」
タツミが何か話そうとすると同時に、周りが見えなくなった。いや、これは……。
「扉が閉まったのか……? 中を確認もしないで閉めるとは常識のない奴だな……。おーい! 開けろ!」
ドンドン、と扉を叩いてみるも応答はない。閉めるだけ閉めてどこかに消えたようだ。何ともはた迷惑な話……。
「ついてないな、メールで誰かを呼ぶか……って圏外か!」
さすがに倉庫の中でアンテナが立つほど、ドコ○のサービスは充実していなかったらしい。
「タツミはどうだ? 携帯、アンテナ立ってないか?」
「……もしかして……というか、これだよね……杉田君たちが言ってたの……」
「おーい?」
「でもこれはやりすぎじゃないのかな……? でもチャンスと言えばチャンスだし……」
「もしもーし」
「真っ暗闇の中二人きり……」
「聞いてるか?」
「なおくんと……」
「ちょっと話を聞け!」
「うわあ!? い、いやらしいことなんて考えてないよ!?」
「そんなこと聞いてねえよ! 携帯、アンテナ立ってないか!?」
「あ、アンテナね、ちょっと待って……立ってない……けどメールが来てた」
「倉庫に入る前だな、そのメールは」
しかし、ある意味いいタイミングかもしれない。返事がないことを疑問に思って、誰かが探しに来てくれるかもしれないからな。
「―――っ!!!」
「どうした?」
メールを見た途端、携帯を叩きつけるように閉じたその仕草は、まるで見てはいけないものを見てしまったかのようだった。今暗くなければ、表情も読み取れたのだろうが、残念ながらそれもできない。
「なんでもない!」
なぜ威嚇行動に出る。一体俺が何をした。
三井には知る由もないが、タツミに届いたメールにはこう書かれていた。
「旦那もヘタレとはいえ男であり獣! これを機に一段階先に進め! by辰美を応援する女子の会&旦那で楽しもう会」