第三十一話 趣味
登校後。教室にはすでに、例の二人が来ていたので質問を浴びせてみる。内容はもちろん今朝のタツミの言動についてである。
「義人、少し話があるんだが」
「俺は何もしてないぞ」
「…………」
「石井、お前にも」
「僕は何も知らないよー」
「…………」
なぜこいつらはこうなんだ……。
「……正直に答えろバカ」
「おいイッシー、大変だ。旦那の語尾がバカになってしまったぞ」
「これは一大事だねー。このままじゃ面接試験の時に「趣味は何ですか?」と聞かれたら「街頭で配っているティッシュをいかに多く摂取するか記録を競うことですバカ」となってー、面接官の印象が悪くなっちゃうよー」
「バカって言ったのはお前らに対してだ! 語尾じゃねえよ! しかも趣味は何ですかってお見合いか!? ティッシュ配りの摂取なんて趣味にしてるわけじゃねえよ! 使えるただのものは断らない主義なだけだ!」
「使えるとはいやらしいな、旦那」
「ティッシュをそっち方面と絡めるんじゃねえよ!」
「わー、三井が怒った―」
「逃げるぞイッシー」
そう言い残して、無駄に素早い動き(机があるにも関わらずの高速移動)で廊下へと去っていった。
「行ってしまった……」
しかしあの様子では、あいつらが関連しているのは間違いないだろう。問題は中身だから、現状問題が何一つ解決していないのは悩ましいところだが。
「…………」
「…………」
……? なぜだろうか、今日は妙に見られている気がする……。落ち着かない……。
「三井、何かあったのか?」
「……災難?」
「なんだ、いつものことか」
原君の対応が冷たい。
「杉田君に石井君、朝言われたとおりにしてみたんだけど……」
「どうだったー? 三井の様子からしてー、若干効果はあったみたいだけど―」
「いい効果か悪い効果か、それが問題だ」
「……つんでれ、っていいものだね……」
「好感を持ててもらえてなによりだよー」
「うんうん」
「……でもな、実際はそれを自然にできるのが一番なんだよ」
「そんな人いるのー」
「数少ないが、いるのは事実だな」
「……へくしっ」
「どうしたのですルリ、風邪ですか?」
「おかしいな、別にそんな兆候はなかったけど」
「なら噂でもされてたのでしょうか」
「……先輩が私を恋しくなって、噂したとか!?」
「その確率は低いと思いますが」
「うるさい! きっとそうなの!」
「ではそういうことにしておきましょうか」