第三話 拒否
「で、なぜお前がここにいる? 」
まさか近所迷惑だけしに来ただけでもあるまい。
「先輩、一緒に学校行きましょう! 」
「断る」
「どうしてですか!? 石川先輩はよくて私は駄目なんて……それが先輩の答えなんですか! h返答によっては先輩の体中の爪を剥いでムヒを塗り込み……」
「怖いから! 恐ろしいから! 精神的にも肉体的にも立ち直れないダメージを受けることになるから! 」
「では納得のいくご説明を! 」
「お前の中学とうちの高校じゃ、場所が正反対だろうが! 」
保護者の中学は俺の母校でもあるからして、場所は把握している。その位置はまさにうちを挟んで正反対にあるのである。
「……あー、そういえば」
「理由は以上! 」
「なら私が先輩を高校に送ってから、うちの中学に登校します! 」
「意味ねえ! そもそも時間が足りないし! 」
「それは愛の力でカバーします! だからとりあえず一緒に登校です! 私の目の黒いうちは、石川先輩と二人っきりの登校なんて許しません! 」
こいつは言っても聞かないからな……こうなってしまったら、どうにかなだめすかして説得するしか……。
「……ここにいたんですか、探しましたよ」
「んむ? 確か君は……」
「あはは……おはよう、岬」
「山本岬、と申します。以後お見知り置きを」
「これはどうもご丁寧に、俺は三井直樹……そこの保護者のせんぱ」
「想い人、ですね。存じてますよ」
「それで、どうして岬がここに? 」
「学校行きますよ。連絡もなしに先に行くとは、どういうことかと思ってみれば」
「いやまだ先輩との話が……」
「行きますよ」
「もう少し……」
「い き ま す よ ? 」
あ、なんか迫力が……。
「もしかして岬、怒ってる? やだなあ、ほんの些細な乙女心が生み出した産物というか……」
「ルリの先輩さん、この子は借りていきますよ」
「先輩、ダメです! こう見えて岬は怒ると凄いんです! 」
「どうぞ持ってってください」
「先輩!? 」
「それでは」
「あー、せーんーぱーいー! 」
「ああ、古木さんが連れ去られていく……」
「これでよかったんだ、これで……」
「そんな戦隊物のラストみたいなセリフで閉められても……」
「いい友達をもったな、保護者……」
「それじゃなおくんが保護者みたいだよ……」
うむ、タツミは偉いな。数少ない突っ込み役として、これからも頑張ってもらわなくては。