第二十一話 未来
「……それで、この人たちですか、聞きたがってた人というのは。初めまして。ルリの親友、山本です」
「健三さんの娘さんだよねー、知ってるよー。来年はうちの高校に来るみたいだねー。成績もいいみたいだしー」
「…………」
おお、あの子石井を不審者だと認識したようだ。あからさまに警戒してる。
「ああ、健三さんがいつも話してるしな。反抗期で辛いんです、だから今日は授業はここまで。……とか」
「私はさぼりの口実にされているんですか……!」
……なぜだろうか。俺はこの子に近いものを感じる。……苦労人体質、みたいな。
「もしもーし、いいですかー? 説明始めますよ?」
「健三さんの愛娘さんー、黙ってもらえるー?」
「人が話をするときは、静かに聞くのがマナーだよ?」
「そうだぞ。来年は高校生ならそれくらいの節度は……」
石井もタツミも義人も聞く気満々だな。そしてとばっちりを受けた健三さんジュニア、ドンマイ。そういう星のもとに生まれついたと思ってあきらめるんだ。俺もそうしてるから。
「……なぜに三井先輩はそこまで達観した表情を浮かべていられるのですか……?」
「それはひとえに経験の差かな……」
まぶたを閉じれば浮かんでくる、不条理に降りかかってくる災難の数々。よくここまで道を踏み外さずやってこれたものだと思う。俺ってすごいと思うよ、実際。
「そうですか。それはご愁傷様です。そんな経験頼まれたって受けたくはありませんが」
「……いや、近い将来、君は確実に似たような経験を積んでいくことになるだろう……!」
「なんて嫌な予言ですか。迷惑この上ない」
顔をしかめ、困ったような顔をする健三さんの娘。だが、彼女は少し誤解をしているようだ。
「予言? そんな胡散臭いものではないよ。……これは確信だ」
「革新……? 根拠でもあるんですか?」
動揺したようだな。根拠? そんなものは決まっている。
「君がこの高校に入学するであろうこと。保護者が親友であること。そしてそれに耐えうる、日ごろ培われた精神力。……君も薄々感づいてはいるんだろう……? このまま奇人にまみれ、突っ込みに明け暮れる日々が来ることを……!」
「うう……それは……」
認めたくない現実を認めてしまったのか、膝をつく健三さんの娘。ふふふ……ここにまた一人、優秀な人材が暗黒面へと……
「なおくん、古木さんの話が始められないから黙って」
……真顔でたしなめられた。怖い。何気にタツミが、この話に一番興味を持ってるんじゃないか……?