第二十話 昔話
評価欄、ミクシイ、メッセージなど様々な場所での応援のコメント、ありがとうございました。なりかけていた鬱も多少良くなったので、不定期更新という形でまた書かせていただきます。
「どうしてあんな甲斐性皆無鈍感突込男を好きになったんですか?」
「久しぶりの登場なのに黒すぎない? 岬。無理があるよ、その読み方は」
中学校からの帰宅途中、親友である岬はとんでもないことを質問してきた。
「いえ、気に障ったなら謝りますが、ルリは成績優秀にして、顔も可愛い部類に入ります。体つきは(失笑)あれですが」
「……持ち上げてから落とすのはやめてくれないかな? 露骨に失笑されると、さすがの私も怒りを鎮められそうにないよ?」
「失礼しました。体つきは残念ですが」
「真顔で言いなおされるのも、相当腹が立つなあ! しかもオブラートに包んでたところも言っちゃってるし!」
「あんな鈍感な三井先輩以外でも、ルリなら選り取り見取りでしょうに」
「まあ、確かに告白されたことはあるけど……」
「よければ理由を教えていただけますか?」
「待った。それなら先輩のところに行ってからにしよう」
「なぜですか」
「……聞えよがしに自分のことを話されたら、先輩でも私の話が気になるでしょう」
「かもしれませんね」
「そこで聞き耳をたてる先輩に、私の健気さを存分にアピールするって寸法よ」
「……姑息ですね」
「なんとでも言いなさい。それに、他にも聞きたがってた人もいるからちょうどいいし」
「他にも……?」
「先輩、お疲れ様です」
「……なぜお前がここに?」
陸トレが終わって、グラウンド(プール兼部室からは徒歩五分かかる)から帰ってみれば、部外者がいる。よくもまあここまで図々しく育ったものだ。親の顔が見てみたい。
「……ってお前が保護者か。うっかり」
「なにか失礼なこと考えてませんでした?」
別に考えてない。なぜなら保護者が保護者なのは自明のことだから。よってこれは失礼ではない。
「……まあ先輩が無礼なのはいつものことなのでスルーの方向で」
「お前も失礼だな」
「なおくん、五十歩百歩って知ってる? 因果応報とか」
「それで、今日ここまで来たのは昔話をするためなんですよ!」
ばばーん、とない胸を張って偉そうにふんぞり返った。
「昔っていつの話だ?」
正直興味がわかないんだが。
「私が先輩を好きになった経緯です!」
時間を聞いたら内容が返ってきた。日本語は正しく使え。
「……あほか。そんなこと聞きたい奴なんかこの部室の中にはいな―――」
「お、面白そうだな」
「……知りたい、かな……」
「それはよかったよー。三井のデータは収集しておけば何かの役に立つかもだしー」
この部室にはおかしい奴しかいないのか。