第十四話 恩師
井上と別れ、職員室に着いた俺たちは、生徒の質問に答えている神田先生を発見した。神田先生も俺たちを見つけたらしく、質問を切り上げて俺たちの相手をしてくれた。
「お久しぶりです、神田先生。ご無沙汰してました」
「お久です先生。ああ、別に御茶菓子とかはいりませんよ? ただ、もしどうしても俺に御馳走したくてたまらないというなら別です。歓迎してくれるというなら、ありがたくその気持ちと品物はいただきましょう」
「御茶菓子とか歓迎とか、そんなこと言ってねえだろ! いきなり図々しいわ義人!」
「だからいらないって言ったじゃん」
「もの欲しそうな目で見ておいて、よく言うわ! もらおうって気満々だろうが!」
「半年ぶりだというのに、変わらんなーお前らは」
再開早々バカな言い争いをし始めた俺たちを見て、神田先生は目を細めてそう言った。俺たちがここに通っていた時期を思い出したのかもしれない。あの時期は……あれ? もしかして今とあんま変わってない? 特に義人とか。
「どうだ? 高校生活は上手くいってるか?」
「義人を筆頭に、変人の集団に囲まれて窒息死しそうです。何か病原菌を持っているのではないかと、常識人の俺は疑うほどで」
「旦那たちと順風満帆に、楽しい学園生活を送ってるから心配しなくっていいですよ」
「そうか、それはよかった」
なんで!?
「ちょっと先生!? 聞いてました!? 悪性のウイルスが蔓延してる北高で、唯一まともだと言っても過言ではない俺が苦しんでるって言ってるんですよ!?」
「いやでも血色いいし」
「若いから当たり前です! 血色とかでなしに中身の方……精神状態がいっぱいいっぱいなのがわかりませんか!?」
「直樹は突っ込みを入れてるときが一番生き生きしとるな」
「そうなんですよ。突っ込みドランキーとでも申しましょうか」
「なるほど、それは重症だ」
「二人して、なに人を病人に仕立て上げようとしてるんですか!」
「だって、病んでるんだろ?」
「ああ言えばこう言う……」
「ところで二人とも。お前らのやり取りとかを授業中ネタに使ってるから。構わないよな?」
「構いますよ! 他の奴らに聞きましたけど、なんてことしてんですか!」
「そうですよ!」
義人、もっと言ってやれ!
「著作権は俺たちにあるんですから、費用を払っていただかないと」
「そこじゃねえよ!」
「ふむ、今のやり取りもネタにさせてもらおう」
「エサ与えてどうすんだ!」