第十二話 発見
「……それでは、今日の部活はここまでだ。お疲れ」
「終わったあああ」
何が悲しくて、大会が終わって自由なはずのこの時期に長距離走+筋トレ地獄を味わされなければならんのだろうか……。シーズンオフですよ? 水泳部ですよ? バカ広いこの学校の周囲(一周二キロ超)を走らんといかん理由などあるだろうか? 否、ない!
「これから部活の度にこんなことさせられてたら体が持たん!」
「おお、そこまで言うからには小倉さんに直談判してくれるのだな」
「……人生、諦めが肝心だと思うんだ」
「弱っ!」
だって、あんな筋肉ダルマに直談判したところでメニューが変わるとは思えんし。夏は実際変わらなかったし。頭の中身まで筋トレで筋肉に変えたに違いない、あの先生は。
「まあまあ、せっかく部活も終わったことだし、帰って体を休めようではないか」
「そうだー、この前ー、面白いものを見つけたんだー」
「何を?」
「知りたいー?」
「その言い方をされたらな。気にならないって言ったら嘘になる」
「じゃあー、教えてあげようー」
「イッシー、それはどこにあるんだ?」
「帰り道の途中だよー」
ふむ。おもしろい店でもできたのか? うまいラーメン屋とか。
「食べ物関係か?」
「おおー、三井さえてるねー。その通りだよー」
予想通りだったのか。これじゃあ、実際に見てもあまり驚けないかもしれないな。
「さあー、一緒にそこに行ってみよー」
「着いたよー」
「はあ?」
連れられて来てみたはいいけど、特に新しい店舗は見当たらない。しいて言えば、昔からある焼き肉の店(某飲食人気店紹介番組にも取り上げられたことあり)くらいだろう。
「おいおい、新しい店なんてないじゃないか」
「んー? 僕新しい店を見つけたなんて言ってないよー?」
「飲食関係って言ってただろ?」
「うんー。だからあそこー」
そう言って、石井が指し示したのは……
「自販機? これのどこがおもしろいんだ?」
「しっかり見てよー」
しっかり……?
「……っておい! なんだこの自販機!?」
「ねー、面白いでしょー?」
「この田舎都市にどうしておでん缶の自販機が!?」
「どこかの企業が設置したんでしょー?」
「購入者層がわかんねえよ!」
ちなみにレパートリーは豊富で、おでん缶のみならずパスタ、ラーメン缶も入っている。値段は三百円、四百円である。
「……誰が買うかわかんねえよ……」
「僕は全種類買ったけどねー」
「……ちなみに味は?」
「そこそこだったなー」
「そうか……って義人!?」
「なんだよ旦那」
「いくつ買うつもりだ!?」
「たくさん」
「お前アホだろ!?」
購入者層はこういう変人なんだろうな……と実感してしまった。