第十一話 危険
「旦那旦那、そういえば昨日こんなものを見つけたんだが」
そう言って義人は、バッグから何か小さいものを取り出した。
「なんだそれは……?」
少しばかり警戒しながら、義人の手の中にあるものを覗き込んだ。かつて何度か馬鹿馬鹿しいトラップを仕掛けられ、見事はめられた苦い経験があるため、慎重な対応である。
「そんなに警戒心をあらわにしなくてもー」
「お前らには煮え湯を数え切れんほど飲まされてるからな。これでも足りないくらいだ」
「ちょっと待ってよー、杉田はともかくー、僕まで一緒にされるのは心外だなー」
「いやいや、俺が混ざってる方がおかしいだろ」
何言ってやがるんだこいつらは。
「俺から見れば二人とも同類だ。昔から義人にやられているのは確かだが、石井と会ってから悪化したのもまた事実だからな」
「ひどいなー」
「ああ、まったく」
「今までの行動を思い返してからその言葉を吐くんだな……。で? 義人は何を発見したんだって?」
話がそれかけたので、軌道修正。
「そうそう、こいつを見てくれ。どう思う?」
「……デジモンか? また懐かしいものを……」
「ブッブー、外れ」
「じゃあなんだよ?」
「〈ヨーカイザー〉だ」
「懐かしいなあ、おい!」
〈ヨーカイザー〉。〈デジモンペンデュラム〉とポケモンを合体させたような、万歩計の形をしたゲームである。時代が時代なので、知りたい人はヤフーででもグーグルででも調べてくれ。記憶から抹消されかけていたものを、よくもまあ見つけ出してきたものだ。
「今は東海地方を旅してる」
「しかも今になってまた始めたのか!?」
「ヨーカイ、ゲットだぜ!」
「確かにそんなゲームだけど、そのフレーズはやばいって!」
「バトルの前には振りますモンモン」
「それゲームが違うから! そっちはデジモンだから!」
「まあ、デジモンもたまごっちの二番煎じも同然だし」
「いろんなとこから苦情が来るようなこと言うんじゃない!」
「世界は模倣の上によって成り立っているのだよ」
「それはある意味正しいが、ここで使うのは間違ってる!」
「アイデア? パクられたのに気がつかない方が悪いんだよ」
「模倣大国、中国か貴様は!」
「……旦那、色々とまずい気がしてきた」
「今さら!? 俺はさっきから冷や冷やもんだよ!」
「中国人はクレヨンしんちゃんは中国で作られたものだと思ってるとか、言わないようにしておこうな」
「……堂々と口に出してるじゃねえか!」