第十話 気持ち
「……体力が……残り少ない……」
「旦那のHPが赤く点滅しているわけだな」
「HP言うな。しかし、もう動くのも億劫だ……」
無駄な動きは死につながりかねん。できるだけ派手な行動は避けるように……。
「そういえば今日の部活は陸トレだよな。筋トレをどれだけやらされることやら」
「……これ以上気が滅入るようなことを言わんでくれ……」
いかん、マジでそんなことやったら力尽きるぞ……。
「なおくん、……ちょっといいかな?」
「タツミ? 用件なら手短に頼む」
今日の体力は、できる限り使用を制限したい。
「私のお弁当、少し分けてあげようかなって」
「あなたが神か!」
「いやいや、そんな大げさなものじゃないよ!」
そんなことはない。今の俺にとっては、タツミの姿が神々しく見える……っ!
「私ごときにできることがございましたら、何なりとお申し付けください、美しいお姫様」
「うわー……旦那がプライドとかその他もろもろを投げ捨ててる……」
黙れ、災悪の元凶が。プライドでは腹は膨れないのだよ。
「ええ!? お姫様!? そんな、私……なおくんに……」
「旦那、石川さん真に受けてるぞ。昼休み終わる前に飯食えよ?」
「……そうだな。馬鹿なこと言ってないで、このおにぎりもらってもいいか?」
飯食う時間なくなるし。
「はっ!? どうぞどうぞ!」
タツミもトリップから戻ってきたようだし、小さめのおにぎりを口に含むと――――
「むぐう!?」
「……どうかな? お弁当は毎朝私が作ってるんだけど……」
「…………」
「結構自信作なんだけど……どうかな?」
「……一言いいか?」
「なに?」
一呼吸おいて、感想を述べた。
「味が濃ゆい! こんなの食ってたら生活習慣病になるぞ!?」
そう。タツミのおにぎりには、これでもかというほど塩が入っていたのである!
「味が濃い方がおいしいと思うんだけど……」
「そんなレベルじゃない! これはあれか!? 高カロリーで血圧を上げようとでもしてるのか!?」
「朝は低血圧だけど、そんなことしないよ!」
「なら改善しとけ! 数年後泣きを見ることになるから!」
「……じゃあ、このお弁当はいらないよね……」
「いや」
文句は言うが、それでも今の俺にはカロリーが必要だ。
「この弁当はありがたく分けてもらう。……その礼に大抵のことは聞いてやろう」
「え……」
「確かに味はあれだが、それでもタツミが俺にくれたというその優しさは十分に受取ったからな」
「旦那、くっせー」
「やかましいわHENJINが」
「HENJIN!?」
あー、笑う犬おもしろかった。また復活しないかな、内Pとか上々とか笑う犬とか。