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78 買い物でぇと

・前回のあらすじ

 明日は未来はお出かけ。主人公は、明日は一人でゲームをすることになる。

「にーちゃ、野良に行くなら装備を整えよう」


 主人公の装備を整えるため、という名目のお買い物デートの始まりである。

「にーちゃ、これなんてどう?」

「どれどれ」



 ――僕たち兄妹はファアートから離れ、ロロクの市場街へと場所を移していた。

 そして二人でロロクの市場街を歩きながら、僕の新しい装備を見繕い、歩いている。


 ライムの見せてきたのは、NPCが店番をする、プレイヤーショップにあったアイテムだ。



【バードマンヘルム + 3】:頭装備


:DEF 28

:MDEF 21

:雷耐性(小)

:AGI -3


 魔法防御も高く、雷耐性付き。

 AGIは少し下がるが、3ぐらいなら全然許容範囲。


 お値段は4,480Eと、性能と照らし合わせると割とお手頃価格だ。

 先立ってのクエストで結構な数の敵を倒したので、資金はそれなりにある。



 しかしだ。



「これか……?」

「うん? うん」


 それは鳥の仮面、いや覆面――いやさ、どう言い繕っても被り物だった。

 今にも「くるっぽー」とか言いそうなまんまる目玉。

 首まですっぽりと覆う被り物で、ぱっと見てハトのようだが、目の上が赤くなっている。

 ライトニングバードの羽根で作られているようなので、ライチョウがモチーフなのかもしれない。


 どう見てもパーティーグッズにしか見えん……



「とりあえず試してみる……ちょっと装備してみていいですか?」


 店番をしているNPCに確認をとると、こくりとひとつ首肯が返ってきたので、そのライチョウの被り物を被ってみる。



「おお、意外と視界は良いな」


 ゲームならではなのだろう。

 マスクは僕の顔ぴったりに調整され、左右を見てもズレる様子はない。

 急所である首もフォローしているし、確かに性能そのものはかなり良い。


 ……そう、性能はいいのだ。



「……よし、買おう」


 店番をしているNPCに料金を支払い、「ありがとうございました」のセリフを背にその場を離れる。


 料金を払う前に、店頭に置いてあった鏡に写った自分を見て、取り引きボタンを押す指が震えたような気がしたが、きっと気のせいだ!




――――

 引き続き、ロロクの市場街を歩く。


 ロロクの市場街は、ファアートのそれに比べて少し規模が小さい。ファアートは最初の街なだけあって、その分プレイヤーの分母も大きいからだ。


 露店そのものもファアートで店を出している人がこちらでも――というケースが多いらしい。

 もちろん二箇所同時に店番が出来るわけはないので、NPCを雇って店番をさせている露店が多いみたいだ。


 ライムと連れ合って、出店を順々に覗いてゆく。

 途中でバスタードソードの売っている店を見かけたが、芋剣の方がわずかながらに強かった……。

 気軽に買える値段でもなかったし、喉から手が出そうになるのをグっと我慢する。


 ――ああ、でもいいなぁ。まともなバスタードソード。

 でも、亀の盾とハトヘルムで、もういまさらって気もしなくもない。




――

「ところでにーちゃ」


「うん?」


「それ、いつまで被ってるの?」


「は?」


 いやいや、装備品なんだから装備するのは当たり前だろう?

 そりゃ、街中じゃ戦闘なんかしないし、別にこんなフルフェイスの被り物をファッションとして気に入ったわけじゃないけどさ。装備しておかないと、いざという時に忘れちゃいそうじゃないか?


 RPGで散々言われてるだろ?『武器や防具は装備しないと意味がないぞ!』って。



「はぁ……にーちゃ、アイテム欄を開いて」


「お、おう」


「で、その鳥マスクの詳細。そこから【グラフィックの変更】って項目に進んで、【見えなくする】のチェックボックスにチェック」


 ライムに言われるがままにウインドウを操作していくと、顔を覆っていたハトヘルムがパっと消えた。


「おおう!?」


【装備品】を見ても、バードマンヘルムはまだ装備していることになっている。



「便利だな、コレ」


「その代わり、メニュー画面から操作しないと装備の付け外しが出来ないけどね」


 見れないし触れられない状態になっているから、僕がいつもやっているように、ストレージから取り出した武器をそのまま装備するようなマネはできないらしい。


「いくらにーちゃでも、あのマスクを着けたままの人といっしょに居るのはヤダ」


「遅れて来た反抗期ッ!?」



 ――『にーちゃと一緒に居るのヤダ』か。

 ふふふ、アレ? なんでだろう。涙が出てきたぞ?



「次はブーツを探そ。――にーちゃ?」


「いや、ごめん。なんでもないんだ」


 思ったより心のやわらかい所をえぐった言葉に、しばらく僕の涙は止まらなかった――。


 全国の、妹に毛嫌いされている普通のお兄ちゃん達よ。


 ――――強く。

 強く生きてくれ!






 ―― …… ―― …… ―― …… ――






「と、こんなモンかな?」

「そうだな。こんなもんでいいだろう」


 ブーツも今までの薄茶色の、一件ヘロヘロになった長靴みたいな外見のものから、金属の鋲が付いた黒艶のブーツに変更した。


 ……素材にゲンゴロウが使われていたのは見なかったことにしよう。


 装飾品(アクセサリー)もメカっぽい歯車からチェーンが伸びたような、メンズがつけても変じゃないブローチを、ライムが買ってくれた。


 この間の【ニゲラのブローチ】のお返しらしい。




【ギア・ブローチ】:装飾品


:アクティブスキル【エクスチェンジ】

:MPを消費してスタミナを回復させる。

:変換率はMP/2



――

「高かったんじゃないか? これ」


「そうでもないよ。変換率が微妙だから」


 本当かね……?

 リアルでは、コンシューマー版とはいえVR機をポンっと寄越してきた妹さんの言葉だからなぁ……


 それにこの子は、β時代の遺産(ひきつぎ)があるので、割とお金は持っているはずなのだ。



 ――等と気に病む僕とは裏腹に、ライムは何処吹く風。

 辺りを見回し、まだ露店をきょろきょろと見ている。


 ……まぁ、あんまり気にしても仕方がないか。ありがたく頂いておこう。


「ところでライム。あの装備品の【グラフィックの変更】なんだが」

「うん」

「【見えなくする】以外にも、【他のグラフィックの使用】って項目があったんだが……」


 僕の予想が正しければ、それが出来るなら何も芋剣や亀盾を、そのまんまのグラフィックのまま使う必要はないんじゃあ……?


「うん、他の装備品のグラフィックと差し替えが出来るよ。わたしの装備もソレ使ってる」

「やっぱりかっ!?」


 そういえば、ずいぶん前からライムの装備するアイテムの外見が変わっていない。

 β時代から装備品をステータス順に用意しておいたと言っていたから、変わっていないのはおかしいはずだったんだ!


「な、ならすぐにさっきのバスタードソードを買いに――」


「ただし、武器と盾は適応外」


「なんでやねんっ!!!!!!」


 ――はっ! つい思わず安易な関西弁で突っ込んでしまった。


「A:武器や盾は形状や見た目も性能の一部となりえるので、見た目の変更は出来ません」


「なんだその『よくあるご質問』の回答例からそのまま持ってきたような文言は……」


 ハトヘルムはなんとか回避できたが、芋剣と亀盾はどうやらまだそのままらしい。

 とほほ……



――

「あ、にーちゃ。あっちで大道芸してる人がいる」


「ああ、VRだからそういうパフォーマンスも出来るのか」


 ライムの視線の先には、五本のナイフでジャグリングする大道芸人。

 五本が六本に、六本が七本に増えてゆき、その高さも段々と上がってゆく。


 VRなので失敗しても怪我はしないし、人前で芸をする度胸もつく。案外良い手なのかもな。

 そういえばあの演劇部の二人も、似たような理由でロールプレイをしていたのだった。



「よし、見て行くか?」


「いこういこう」



 ――ジャグリングに続きパントマイム、火の輪くぐり、玉乗りなどを見る。

 乱入でブレイクダンスを披露する人もいた。


 それらをひとしきり見て、満足したところで今日はもう就寝の時間。



 明日は隣にライムがいないことを少しさみしく思いながら、僕はログアウトした。






――【サーバーとの通信を切断しました。またのプレイをお待ちしております】――

主人公のハトヘルム絵を何故か書きました。見たい方は活動報告からどうぞ


------

『ロロクとファアートの市場街の違い』の設定を本文の中に入れようと思いましたが、やたらと冗長になってしまったのでボツにしました。

 以下、読みたい方はどうぞ。



------------


 ロロクの街にある市場街は、ファアートのそれよりは、少し規模が小さい。


 外見的なものはロロクの市場街もファアートの市場街も変わりはないのだが、活気がまるで違う。

 販売している人も、プレイヤーではなく、雇われたNPCがほとんどだ。



 戦闘力にいまいち乏しい生産職のプレイヤーが、なかなかロロクまで来れない事も原因ではあるが、ファアートはゲームの最初の街だけあって、絶対的なプレイヤー人口が多いからだ。


 生産職をしている限り、生産したアイテムをプレイヤーに売る必要があるので、どうしても客層の厚い場所で店を開きたい。

 となると、購買者の分母が多いファアートで店を開くのが最適だ。


 だが、そうなってしまうと、今度は販売する物品が初心者向けから上級者向けの物まで幅広く入り乱れてごちゃごちゃになってしまう。

 これでは購入者が欲しいものを見つけにくくなってしまうので、購入者層が絞れなくなってしまう。


 それなので、その土地土地のレベルに合わせた装備品は、その街の市場街で売るように、生産プレイヤーの間で自然と住み分けられるようになったんだそうだ。

 売り子にはNPCを使うこともできるしね。


 それでも中にはNPCを雇う料金をケチっているとか、あっちこっちの街で販売アイテムを変えるのが面倒だとか、もしくは販売しているものが消耗品などで、レベル帯なんてそもそも無いようなアイテムを扱っている。生産プレイヤーではなく、不用品を売りたいだけのプレイヤーなのであっちこっちで店を開くつもりはない――


 そんな事情もあって、ファアートでしか店を開かないプレイヤーも多い。


 そういったプレイヤーの掘り出し物を探す為に、購買者もまたファアートに集まることも多くなる。


 手早く必要なものを買いたい時は各街。

 掘り出し物を見つけたい時はファアートに行くのがだいたいのプレイヤーの認識だ。

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