71 意外と強かった中二病
途中、セイの戦い方の説明が入りますが、クソ長いので説明に入ったら「◇」マークまで読み飛ばしても構いません(そうなると今回の話は酷く短くなりますが)
後書きに箇条書きで概要を説明させていただきます。
追記:やっぱり長過ぎたのでかなり削りました。
少年は懐からナイフを取り出した。
そのナイフは、まるで虹色の宝石のような輝きを持つナイフ。
どうやら直接攻撃をする為の刃物ではなく、魔法の杖代わりのマジックダガーだろう。
確か、マジックダガーの特性は――
杖に比べてしまうと、魔法攻撃力の上昇値は低いが、その分、特殊効果がある場合が多い……だったかな?
「フン……さっさと始めるぞ。闘いをな……」
「……そうだったな。始めよう」
カウントダウンが始まる。
相手の少年――アイディは片手を顔にかざしたままの妙なポーズで、カウントの終わりを待っていた。
――【Go!!】――
「地よりも深く、闇よりも深き黑の世界より出し漆黒の焔よ。其は全ての罪を無へと還す罪咎の炎なり。其の業を以って拷と為さんっ!『煉獄の断罪者!!』」
「詠唱なっが!?」
マジックダガーの先端から、ごぅ――と、風音を立てて、炎の玉が迫る。
でもこれ、ただの【ファイヤーボール】だよな?
漆黒とか言ってたけども、黒くもなんともないファイヤーボールを横にかわす。
「……」
ただ撃たれるファイヤーボールを避ける事は難しくない。
「ふん、避けたか。まぁこの程度は小手調べだ」
ファイヤーボールのスキルレベルもそれほどでもない。
この分だと、ステータスもそれなり程度なんじゃないだろうか?
――だが、彼の持っているものが、ただそれだけだとは到底思えない。
自信ありげな少年の顔は、なにか別の何かを隠し持っている人間の表情だ。
「ならばこうだ」
少年はおもむろに、左手をポケットの中に突っ込んだ。
ポケットから手を取り出したとき、その小指から親指まで――
全ての指に指輪が嵌まっていた。
「マジックアイテム――?」
昨日、リンカが見せたマジックアイテムとそっくりの指輪だ。
おそらくは、あれを使用することで何かしらの魔法が使えるのだと思うが……
「ご明察。そしてこうだ。『バンッ』」
少年が人差し指を突き付け、そう口にする。
すると突然、僕の足元を中心に、半径1メートルほどの円陣が発生した。
「ちぃっ!」
この円陣は見たことがある。
ライトニングバードの使っていた雷魔法と同じものだ。
――だが、それでも大したことは無い。
横に跳躍すると、今まで立っていた場所の円陣を目標地点に雷が落ちる。
雷のエフェクトから見るに大した威力は無さそうだ。指輪自体のスキルレベルが低いのだろう。
確かに速度の高い攻撃だが、落雷前に円陣が現れるので回避するのは難しくない。
『バンっ』
再度の魔法攻撃。だがそれも簡単に避けられる。
――またしても僕の横で、雷が音を立てて落ちた。
「当たらないぞ?」
これが少年の自信の元だとすれば、これでは足りない……まったくもって足りない。
果たして過信ゆえの暴走なのか? それとも、もっと別な何かを持っているのか――
……おそらくは後者だろうな。
少年の眼は、まだ何かに裏打ちされた自信に満ち溢れている。
少年はニヤリと不敵に嗤う。
「フッ、ではこれならどうだ?『バンっ』『バンっ』」
少年が左手の人差し指、中指を交互に僕に突き立て、『バン』と唱えた。
「!?」
生まれた円陣はふたつ――
二回の落雷がディレイをかけて僕に襲いかかる。
それをなんとか横跳びで回避。
「まだまだ。『バンっ、バンバン』」
「くっ」
続けざまに生まれる円陣。僕を襲う雷。
――どういうことだ? いくら初歩的な魔法と言えど、クールタイムがまったく無い?
それに、さっきから『バン』の一声で魔法が発動している。
アクティブスキルはスキル名を唱えないと使えないはずではなかったのか?
そんな考え事をしている間にも、少年の雷魔法が次々と僕に襲いかかっている。
回避しきれないわけではないが、回避するだけで手一杯で攻め入ることは出来ない。
「説明しよう!」
「うわ! びっくりした」
こっちは神経を尖らせて、雷を避け続けている最中だというのに、いきなり横合いから響くライムの声。
「あれはだね、にーちゃ――」
「まてまて! そんなの聞いてる余裕はないっての!」
僕を目掛けて、ガスガスと雷が落ちて来てるんだからさ!
「それとこれは勝負だ。片方のプレイヤーに情報を与えるのは卑怯じゃないか?」
……サボテンの時は教えてもらった気もするけど、まぁアレはノーカンだよね? ぶっちゃけインチキだったし。
――と、僕を襲う雷が突然に止まった。
どういう事だ? 種切れというわけでもあるまい。
「ふっ――」
長い前髪を一束捩り、少年が笑う。
「よかろう。その女が話し終わるまで待ってやる。どうせ何を知ったところで我の【恒久の黑弾】を前に、キサマになすすべなどない」
お前はポル○レフか? それともム○カか!?
「……だそうだ、頼むライム」
「うむす」
せっかく許可出たので説明を聞こう。
「にーちゃ、あの指輪は【サンダーボルト】の魔法が使えるマジックアイテム」
魔法の効果が込められたマジックアイテム――まぁそこまでは僕にも分かる。
「で、普通、スキル名を言わないとスキルは発動しない。だけど、別のキーワードを設定することもできる。そうすればその言葉でも発動させることが可能。でも滅多に使わない言葉じゃないと、妙なときに発動する恐れがあるから注意」
そういえば、マイテも『ばっちこい』で【ウォーハウンド】を発動していたな。
アクティブスキルを使うには、二つの条件が必要になる。
『スキル名を唱えること』と『特定のキー動作を行うこと』だ。
例えば【パワースラッシュ】を使う時には、剣を振り上げた状態で『パワースラッシュ』と発言しなければならない。魔法を使うにも「杖を構える」「手をかざす」等のキー動作も必要になる。
あの指輪の場合『指にはめた状態で、相手を指差してキーワードを唱える』という動作を行うことで、魔法が発動するようだ。
しかし、そのキーワード自体があまりにも簡単な言葉だと、無意識に発動してしまう事態も有り得る。
キーワードが「あ」なら、杖を構えた状態で「あした」と発言した時点で魔法が出てしまうわけだ。
「その点、マジックアイテムだと、アイテム自体を出していない時には発動しないから、簡単な言葉でも大丈夫」
使う時以外は仕舞っておけば、魔法は発動しない、か……
「――そしてマジックアイテムは『使用者にクールタイム』がつくんじゃなくて、『マジックアイテムそのものにクールタイム』がつく」
……なるほど。
「だとすると、差す指を一度ずつ切り替えているのは、クールタイム対策ってことか?」
「いえすざっつらい」
親指から始まって順に小指まで使った頃には、もう親指の指輪のクールタイムは終わっているってことか……
なかなか考えられているな。
「レベルの低い『サンダーボルト』の指輪だから威力は低いけど、消費MPも低くて、クールタイムも長くない。さらにあのマジックダガーはたぶん『消費MP軽減』とかのエンチャントアビリティが付いてると思う』
燃費が悪くても、そもそも消費MPの少ない弱魔法ならば問題はない。
そして装備のアビリティでさらに軽減。
さらに大まかに指差しさえすれば、ほぼオートロックオン。弾道を気にする必要はない。
細かい狙いをつける必要のない上に、盾で防いでも貫通する雷属性の魔法――
さらに回避するには足元に注意する必要があり、実弾は上空からの攻撃。
それが相俟ってなかなか正面の敵を注視できない。
「凄いな、かなり考えられている」
「うん、かなりの強敵だよ、にーちゃ」
◇
「フンっ、もう終わったか? 待ちくたびれて寝るところだったぞ」
ただの中二病患者だと侮っていたのは僕の方かも知れないな……
「君、確か名前は“セイ”だったな?」
「……そうだ、“神聖なる闇黑の氷炎術師”セイ・アイディ――――覚えておけ、貴様を地獄に送る男の名だ」
「ああ、覚えておくよ」
流石に二つ名は覚えられなさそうだけどね。
「……貴様の名は?」
「ユーシ。二つ名なんて無いぞ」
「覚えておいてやる。“名無し”のユーシ」
いや、無理やりに二つ名っぽく言わなくていいから……。
名前あるのに『名無し』ってなんだよ……?
「逝くぞ“名無し”」
「ああ、やろう。セイくん」
さぁ、闘いの続きだ。
ちょっと凝った戦い方をすると、説明が長くなってしまって仕方がないですね。申し訳ありません……
・マジックアイテムを使用した魔法は、使用者ではなくマジックアイテム自体にクールタイムが課せられる。
・スキルの発動キーワードは追加変更可能。セイは極短い『バン』で【サンダーボルト】を発動できるようにしている。
・なので、五本指のマジックアイテムを一本ずつ使っていけば、MPが続く限り常に連続して魔法が使い続けられる。
・セイのマジックダガーは『MP消費量軽減』
・オートロックオンの【サンダーボルト】の魔法なので、かなり適当に使っても敵をロックできる。
セイの使用アイテム
【マジックリング:サンダーボルト Lv2】:マジックアイテム
:サンダーボルト Lv2 を使用できる。なお、威力は(DEX+INT)/2
:使用後に消費されない




