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61 レーザー光線で人類滅亡(嘘)

「にゅむ……バックアタックは困る」

 

 パーティ後方からスナイパーライフルでヘッドショットを狙い、堅実にレイスの数を減らしていたショウだが、自分の後方からもやって来たレイスの大群を見て、気だるげな声を上げた。


 スナイパーにしろ魔法使いにしろ、完全に後衛。

 それが挟撃されたとなると、身の置き場と立ち回りに困惑するのも仕方ない。



「ああ、クソッ! マイテ! 前に出ろ!」


「は、はいぃっ!」


 完全に、挟みうちの様相になってしまっている。


 ゆっくりと近付いてくるレイスに徐々に距離を詰め寄られ、『ああなるほど。これがゾンビだったらお約束な感じだったろう』などと、心の脇のほうで思う。

 これでは、パニックホラーものの鉄板シーンじゃないか……。



「前は僕とマイテで抑える! みんなは逆側サイドを頼む! マイテ、盾で敵を押し返せ!」


「ひえぇぇ……」



 ゴムボートの盾を構え、マイテがレイスの中心に吶喊してゆく。盾で敵の進行を抑える様は、さながら暴徒と相対した、ライオットシールドを構えた機動隊員のようだ。


 ……ただし、その機動隊はマイテ一人のみの隊だが。


 道の細くなっている場所にマイテを配置し、彼女の盾と身体で道を塞ぐ。

 とはいってもそれだけで完全に道が封鎖できるほど狭い通路でもない。



「ぅひゃぁああ! 怖っ! 幽霊ダメ! 幽霊怖いっ!!」


 涙目になりながらも、迫り来る暴徒(レイス)をゴムボートで抑えているマイテ。


 マイテは幽霊ものは苦手なようだ。最前線で抑えろというのは失敗だったかも知れない――


 ……いや? なんか楽しそうでもあるな……。どういうことだろう?

 なんと表現するか、こう……、マゾって感じではなくて――

 そう、言うなれば怖がっている割には、何回もお化け屋敷に行きたがる人というか……ああ、アレだ。怖いモノ見たさってやつだ。


 僕はマイテの左右を駆け回り、ゴムボート盾を迂回してくるレイスをライフルで撃ち倒し、僕も僕でビート板の盾を使って敵を足止めをする。



「怖っ怖っ! あ、あはは。アハハハハッ!!」


 ……ってオマエの方が怖いよマイテっ!! いきなり笑い出すなよ、怖いって!!



 ライフルでちまちまと敵の数を削るが、一向に先が見えない。


 道の中心に立つマイテの脇を抜けてこようとするレイスだけを排除し、敵の進軍をなんとか塞き止めているが、どうしても僕のリロードの時間分だけは対処しきれない。

 その分だけジリジリと後退を余儀なくされている。


 僕たちの逆側の状況はというと、ルゥネンがなんとか頑張って回避盾の真似事をしている様子だ。

 火力(水力?)自体は向こうに集中させているが、それでも押しきれてはいない。

 ルゥネンの回避盾も頑張ってはいるが、本来はアタッカーであるルゥネンの動きはどうしても付け焼き刃の感が否めない。



 ――どう見てもジリ貧。


 漫画だったら、そろそろヒーローが現れて敵を蹴散らしてくれる場面だ。

 だが、残念ながら僕はヒーローじゃない。



「うげっマジ?」


 後方のルゥネンからの悲嘆の声。

 押し寄せる幽鬼を前に、弾幕が途切れた。


 ……どうやら後方隊の銃が、同時に弾切れを起こしてしまったらしい。

 弾幕が完全に途切れてしまったその僅かな隙に、ここぞと詰め寄る亡者の群れ――



「はーい、ルゥちゃん。しゃがんでぇー」


 今まで沈黙し、まったくもって攻撃をしていなかったキャペモが、ここにきてようやく動きを見せた。

 遠き日の記憶にあるような、竹細工の水鉄砲を振り上げてルゥネンに勧告した。


 即座に伏せるルゥネン。

 そして、何故か胸を張ったライムが腕を高々と上げ――

 そして振り下ろした。



「なぎ払えー!」


 ピーーーーーーッ!


 竹の穴から放たれた水は、まるでレーザー光線。

 レーザーは敵をなめるように薙ぐと、そこから一拍子遅れて、地面から間欠泉のように水が墳爆する。


 敵陣は半壊滅状態。高笑いを響かせる妹様。


「圧倒的じゃないか、わが軍は」

「なんか色々混ざってんぞ、マイ妹」


 と、まぁおふざけは置いといて、先程の一撃で、半数以上のレイスが吹き飛び、そして消滅した。後はリロードの終わった面々が、残党処理をすればいいだけとなった。



 ……なるほど、ヒーローの出番ではなく、秘密兵器(ジョーカー)が出てくる場面だったのか。



「っと……」


 爪を立て、腕を伸ばしてくるレイスの一撃を盾でいなし、間髪を入れず胴体に接射。敵がよろけたところで頭を撃ち抜く。


 対岸(あちら)の敵はなんとか都合が付きそうだが、此岸(こちら)の状況はまだまだ逼迫している。


「な、なんとかなりそうですね。おにーさ――ひぅっ!?」


 マイテの死角から一体のレイスが回り込み、マイテに腕を振り下ろそうとしていた。その攻撃をインターセプトして銃を撃つ。


「気を緩めるな。だけど固くなるな。こういう時が一番難しい(・・・)



 終盤直前。気を緩めてしまうとミスをする。

 それが解っているからと気を張り過ぎると、動きが固くなりミスをする。こういう状況はとにかく難しいのだ。



「ひゃ、ひゃひぃ……」


 ……まぁ、固くなるなとかマイテには無理か。常にガチガチだもんなぁ……



「キャペモ! さっきのヤツはこっちにも飛ばせないか!?」


「無理ですねー。チャージにぃ、すっごぉい時間がかかるんですぅー」


 その言葉を証明するかの様に、キャペモはレトロ水鉄砲をもう一度こちらに撃ってくれた。

 しかし竹の筒からはピュっ、とサブマシンガン一発分程度の弱々しい水弾が撃ち出されただけだった。


 まあそんなことだろうと予想はしていたが、さっきのレーザーに期待するのは無理なようだ。

 そんなに便利なものなら、とっくに使っているよな。



「と、いう訳でもうちょいガンバレ、マイテ」

「うきゃーっ!?」


 ほら、僕も頑張るからさ、ミートゥだよミートゥ。


 ――などと言ってる間に、マイテを挟んだ逆サイドの隙間に、飽和したレイスが雪崩込む。


 まずい! 残弾が――――



 ――――ゴパンッ!



 炸裂音と共に、横列を乱した幽鬼どもが吹き飛び、押し返される。


「あっちは一段落したからね。あたしゃこっちに回るよ」


 ガシャンコンとポンプアクションする姐御リンカは、そりゃあもう男前にニヤリと笑った。

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