58 たどりついたのは――(挿絵アリ)
最後にヘタクソな鉛筆画の挿絵があります。見たくない方は右上の「表示調整」から「挿絵表示中」をクリックして挿絵をオフにしてください。
ロロクから西。つまりはファアートと繋がる峡谷がある方向が、今回の目的地らしい。
まるで第二の街から第一の街まで逆走するかのように、僕たち八人は歩いていた。
道中の敵はファアート周辺と変わりない雑魚ばかりで、一角うさぎとスライム。たまにはぐれワーウルフという狼のモンスターが出てくるぐらいだった。
ちなみにパーティの最大人数は6人なので全員ではパーティが組めない。
なので、いつものルゥネンチームと残りの4人のチームと分かれてパーティを組んでいた。
「まぁ、剣が無い今は楽でいいが……」
僕のメイン装備とも言える片手剣は処分し、ライムの知り合いに注文したバスタードソードが出来るまでは、あまりまともな戦い方が出来そうにない。
とりあえず今は蒼軽鉄の大剣を使っていた。
なんだかメイン装備が無い状態というのは、首の辺りがムズムズする気分だ。
某ロボットの大戦ゲームで言うと、ストーリーの都合でアム□かゲ○ター□ボが出撃出来ない状態。
もしくは初夏に毛布からタオルケットに替えたばかりの時のような気持ち。
……まぁ、そんなソワソワ感がする。
――ロロクを出てからしばらく西に進むと、途中で北に進路を取る。
当然だが、どうやら峡谷を逆走するわけではないようだ。
峡谷のあった岩山に沿って、そのまま北に進んでゆく。
すると岩山の切れ目に林が見えた。その林の中へと皆で入ってゆく。
ここにダンジョンがあるのか? と誰かに問う前に、林の中の木々が前方から見えなくなった。
「――海? いや、湖か?」
視界に現れたのは淡い青。
広く見渡せるそれはかなりの大きさを持つ湖だった。
海独特の磯臭さが無く、波も風に水面が揺れる程度のそれしかない。
湖の周りは砂地になっており、遠浅の水面が白く光を返している。
「それーっ」
ライムの掛け声。
それと共に、僕以外の七人の身体が、キラキラとしたエフェクトに包まれる――。
その一拍後には、そこにカラフルな水着を着た集団がいた。
「今日は湖水浴だよ! にーちゃ!」
……今日はみんなでレジャーでしたか。どうでもいいが、『こすいよく』って語呂が悪いな。
「ヒャッホーッイ!!」
まっさきに飛び出したルゥネンが、湖の中を駆けてゆく。
そしてすぐに大きな水柱が立った。
「にーちゃ、どう? どう?」
僕に水着を見せつけるように立つライム。
その水着は黄色と浅葱色のツートンカラーのパターン模様で、大きなフリルが――
「さっきリアルで見たのとそっくりだな……」
厳密に言えばちょっと違う。リアルでは黄色と白だったし、模様もちょっと違う。
フリルの大きさもリアルの方が若干大きかったし、折り方も違って見える。
それにしてもぱっと見た印象は似た感じで、ミ○ビシとダイ○ツの軽トラックの違い程度にしか思えなかった。
「クッ……手痛い失策ッ……」
どうせアレだろ? 僕がログアウトしたら『うわっ、なんでゲームと同じ水着を着た妹が、僕の隣で寝てるんだっ!?』――とかやらせるつもりだったんだろ……?
「ノーコメント」
だ、そうです。
……まぁそれはいいや。
「海ですよっ、師匠! うーみーー!」
「“みず”うみ、だけどな?」
アイダリンはホルターネックのモノキニ水着にパレオを巻いた姿だ。
清涼感のあふれる水色で、胸元の中央にはアゲハ蝶を象ったリボン。
パレオはオレンジと水色のグラデーションで、ちらりと見えるトライアングルが眩しい。
……ちなみに、けっこう着痩せするタイプらしい。
「らいむちゃん……この水着、けっこう恥ずかしい…………」
マイテの水着はメインカラーがえんじ色でサブカラーが蜜柑色のビキニタイプ。
透明度が高く、丈の短いレースのパレオを胸元で巻いた様子が、まるでベビードールのように見えて、少しドキっとする。
マイテのセリフから、この水着は妹さんが用意したものみたいだ。いったいいつの間に……
「そういや、僕は水着なんて持ってないぞ」
サプライズで連れて来られたのは別にいい。みんなで泳ぐのも楽しいだろう。
だけど、僕だけコート姿というのもなぁ……
ゲームだから、濡れてもどうということは無いのだろうけど。
「にーちゃの水着はコレ」
と、やはりライムは僕の分の水着も用意していてくれていた様子。
アイテムストレージから取り出したのは、黄金のスパンコールでキラッキラに光るブーメランパンツ――。
無言で叩き落とした。
「じゃあ、コレ?」
真っ赤なスリングショット。
返す平手でベシっと叩き飛ばす。
「もう、ワガママだなにーちゃ」
「お約束すぎてもう何も言えねぇ」
――結局、黒地に赤ラインのサーフパンツを出して貰いました。
――――
取りあえずその水着に着替えをしたが、やはり傷痕だらけの上半身が気になる。
このアバターには、僕自身でももう、全てを把握しきれないほどの傷が全身に入っているのだ。
「贅沢を言うならラッシュガードの上着とかが欲しいな」
「それを隠すなどとんでもない」
妹さんの熱視線が刺さる……。ホント筋肉好きね? おまえ。
「まぁ、どっちみちラッシュガードを作るには素材が足りなかったから仕方ないよ、にーちゃ」
「なのにネタ水着は作ったワケねっ!?」
「アレは布地面積少ないから」
「それを僕に着せようとするな!」
相変わらずの妹さんだ……
「おーい? オレ一人だけとかマジ寂しいんだけど?」
湖の中に入ってるのは、今のところルゥネンのみ。
ルゥネンはトランクスタイプの――いや、どうでもいいか。需要ないし……
ショウ少年はキャペモに視られながら準備運動をしている。
……VRで必要か? ソレ。
ちなみにショウはダイビングスーツのようなツナギ型の水着。
キャペモは群青色に緑ラインの入った競泳水着タイプを着ていた。
「ホントすごいねソレ。どのくらいキャラメイクに時間が掛かったんだい?」
リンカがライムと一緒に、僕の身体を興味深そうに観察している。
リンカはシンプルな黒ビキニだった。
シンプルなゆえにその放漫なボディがとても際立って見える。
……キャラメイクとか、数分だったけどね。
まさか異世界うんぬんの話は出来ないので、曖昧な笑みを浮かべて誤魔化しておく。
「ちなみににーちゃ。今回の水着作成はリンカさんに依頼」
「あのどうしようもないヤツもか……」
「そしてあのテイルレッドスネーク狩りは、水着の素材集めでした」
「あのどうでもいい伏線がいま回収っ!?」
どこが必須アイテムだよ! 水着を作る為にゲンゴロウやらゲンゴロウブナやらヒルやらと戦わされたのか!?
「夏の必須アイテムだよ?」
「ゲーム攻略の必須アイテムを求めろよ」
まぁ、どーせどうしようもないことに使うとは予想してたけどな。
「水着サービス回が必須では無いと? 貴兄はそうおっしゃるか?」
「アニメじゃないんだから」
ゲームだけど。
「……おーい。お前ら、せっかく来たんだから、水の中に入れよ、マジ」
ひとりぼっちで水面に揺蕩う
ルゥネンの情けない声が、微かに耳に届いた。




