46 災厄の再来
今日は三話連続投下します。(1/3)
森の中を進んでいく。そもそものプレイヤーの数が多いので戦闘に入ること自体が少なく、さくさくと進んでいく。
そうして道なりを進み、木々に隠れた曲がり角を曲がった瞬間――
「うお!? まぶしっ!!」
金ピカキラキラ。目を灼くほどの光の暴力。
咄嗟に眼を細め、剣を構える――
「……プレイヤー?」
すわレアモンスターでも出たか? と思ったら、どうやら謎の金色の光の正体はプレイヤーの着る金色の鎧の反射光だったようだ。
……セルシンも金色の鎧を着ていたが、あれはどちらかというとくすんだ真鍮みたいな色だったので眩しいということはなかった。
そこに居たプレイヤーの鎧はピカピカの金色で、まるで肩に「百」と書かれたモビル○ーツみたいな金色だ。
まぁ、そういうプレイヤーもいるんだろうな……と、剣を納め、「他人事他人事」とその横を通り抜けて行こうとする――
「な……なっ……テメェは!?」
ん?
「テ、テメェ! また出やがったなっ!? この悪質プレイヤーがっ!!」
――――……ん? んんんっ?
金色の鎧。金色の長髪。顔は作り物、高身長の男――そんな知り合いはいない。
…………だが、この状況自体はものすごく既視感がある。
「たぶん、サボテン……かな? にーちゃ」
ライムが僕の胸の内を代弁した。
サボテンではない。サボテンではないが――
「また出てきやがって! ストーキングか!? このチーターがっ!」
サボテンだよなぁ? どう考えても……
話し方と声がそうっぽいし……
敵意をむき出しにしてきたその金色プレイヤーの名前の欄――
そこには“ルゥーファ”――と、そう記載されていた。
「へちま?」
「へちまだね、にーちゃ」
今度はウリ科か。
「マジどーなってんだ? アイツBANされたって聞いたぞ? マイテから」
「ええと……らいむちゃんにそう聞いたんですけど……」
「ふしぎですねぇー、あ、ショウちゃん見ちゃダメですよー。目がイタイイタイしちゃいますからね」
「ぬむ……?」
あ、ライムからマイテ、マイテからルゥネンたちに情報が行ってたらしい。
サボテンはルゥネンたちにも迷惑かけていたみたいだしね。当然か。
突然現れたサボテンではないサボテンっぽいヤツに、僕たちは混乱するしかなかった。
「なんでいるの? BANされたハズ」
こういう時の斬り込み隊長、ライムさんが直接本人に問いかけた。ライム▲!
「…………っチ! そーだよ、テメーらのせいで冤罪かけられて垢消されたよ。ったく運営もナニ考えてんだかなー! もっとヤバいのが目の前にいるってのになー!」
「そういうのはいい。なんでいるの?」
「は? もう一台買ったに決まってんじゃん? そんなのもわかんねーの? ビンボーニンか?」
人を見下した態度でそう言い放つサボテン改めへちマン。
「ったく、テメーらのせいでキャラ全ロストだぜ? またステ上げすんのメンドーでしょうがねーじゃねーか。アイテムは金でなんとかなったけどよ」
……つまりは、だ。
アカウント削除されたVR機は認証ⅠDで弾かれてしまって“brand-new World”にはもう使えない。
だから新しくVR機を買った――と?
アイテムはRMTで集めた――と?
「バカバカしい……別ゲーにでも行けば良かったのにね」
「あ? なんでオレがテメーらに負けて逃げたみたいにならなきゃなんねーんだ? 」
金持ちのお坊ちゃんだったか……
まー偉そうに、自分の金でもあるまいに。
ウチの妹さんは卵の特売日とティッシュ、トイレットペーパーの安売り、調味料の安売りなんて見逃さずに、えいこらえいこら担いでスーパーから帰ってくるぞ?
「ま、いい。サボテンなのは分かった」
そう、ライムがつぶやいた瞬間。
【×ルゥーファ】【×ルゥーファ】【×ルゥーファ】
【×ルゥーファ】【×ルゥーファ】
カカカッっと、すごい勢いでパーティメンバー全員の頭の上に、赤い文字が出た!
え……? あれ?
「フレンド登録してなくても、ブラックリストって出来るのか……?」
『フレンド一覧表示』に『ブラックリストに登録』っていう項目があるのは知っていたが……
へちマンはサボテンの時とIDそのものが変わっている。
ゲームのシステム上では実質他人なので、まだ誰もフレンド登録など交わしていないはず。
「にーちゃ……」
「おにいさん……」
「ライムの兄貴……」
「あらあらぁ……」
「ぬぅ……情弱……?」
酷いな、おまえら……寄ってたかって。
「テメーら! 無視すんなぁ!!」
金色ヘチマが喚き散らす。
もういいよキミ。ブラックリスト入れちゃえばいいんだろ? もう見飽きたし、その顔。作り物の顔なんてまるで味がないんだよ。
「えーとね、にーちゃ。まずウインドウを開いて――」
「ふむふむ」
悪趣味な金ぴかは放置して、ライムからブラックリストの使い方を教わる。
「テメーも無視してんじゃねぇぞっ!! このビッーー」
「――あ゛?」
「!!!? っひ――!?」
少し殺気を当ててやる。このあいだ、さんざん盾で殴ったのが効いているようだ。
だというのに、まったく学習能力のないバカだ。ヘチマみたいに中身がスカスカなのか? お前の頭は。
「ハ……ハハッ! 脅すとか、まるでDQNだな! 口で勝てねーから手が出るってか? ダッセー!」
だから毎回PVP吹っかけて来るのはお前の方だろうがよ……
はぁ……もう早くブラックリストに入れよう。そうすればこんな安っぽい挑発にイライラする必要もなくなる。
「あーあ! 底辺は底辺で慣れ合って巣から出てくんなよな! 人様に迷惑かけるのがそんなに楽しいかねーっ!?」
「――で、にーちゃ、ウインドウ開いたら今度は【情報】を選択」
……うるさくて、ライムの情報が頭に入ってこねぇ。
「だいたい“にーちゃ”ってなんだよ? キモっ! そんなキモい呼び方をさせて悦んでるとかキモすぎんだろ? オタくせ~~」
「――そこから【周囲のプレイヤー情報】を選択して、」
……ピキピキ。
「どうせ『萌え~~』とか言ってんだろ? 萌え豚っていうんだよな? そういうのってよ。こんなトコ来ないで『ライムたん萌え~』とかブヒブヒ言って家でシコってろよ!」
「――そうしたら近くにいるプレイヤーの一覧が出るから、そこから『ルゥーファ』ってのを選択して……にーちゃ?」
――――キンーーッ
金属の甲高い音。鞘から解き放った剣は、青い軌道を残しながら金色に光る男の喉元でピタリと止まる。
「ぃッ…………!」
「……いい加減にしろ。あまり下品な言葉を妹に聞かせるな」
「まったくですよぉー。教育上よろしくないですねぇー」
にこにこ笑顔のキャペモ。その両手はショウの耳を塞いでいた。ショウはショウで「おろ?」という表情でキャペモを見上げている。
こんな時でも笑顔のキャペモだが、どことなしにその笑顔は硬い。
「あーあーあ、やっぱDQNは野蛮だなー。そんなにオレと勝負したいの? 困っちゃうなー」
「声が震えてるぞ。ヘチマ野郎」
抜いた剣を鞘に戻す。明らかにヘチマ野郎はホッと息を吐いている。
そんなに腰が引けるなら、何故こうも煽ってきた? さっぱりわからん。
「ライム、PVP申請はどうやるんだ? 教えてくれ」
「……でもにーちゃ。いいの?」
まずはこの馬鹿をどうにかしないと、話も出来ないからな。
「ああ、まずはこの馬鹿を黙らせよう」
初めてのレビューをいただきました。
それを記念して――と言いたいところですが、実際はサボテン回はヘイトが酷いので一気投下(涙)




