44 元・パーティメンバーズ
――【“brand-new World”へようこそ】――
朝食の後片付けをしている未来より一足先にログイン。
確か、なにやら今日はマイテの手伝いをするとか妹さんが言っていた。
マイテの居場所はフレンドサーチで分かるが……、未来より先に会いに行っても、正直会話に困りそうなので、未来がログインするまでぶらぶらすることにした。
――
石の街ロロクはその名の通り街の建物が殆ど石で出来ている。
それは石積みの建物と、巨大な一つの岩をくり抜いて造られた物の二種類があり、くり抜き型の方が時代が古いように感じられた。
恐らく、この土地に最初に定住した人達はこの場にある岩をくり抜き、住居にしたのだろう。
そして、その後に増えた住人は、余所から運んだ石を積んで住居を造った――……という設定なんじゃないだろうか?
そう、身も蓋もない言い方をしてしまうと、設定でありフィクションだ。ゲームだし。
他に目に付くのは、だいたいの建物の前には大小問わず様々な石像が立っていること。
玄関前に飾られた、いかにも英雄然とした戦士の石像やら、雄々しい幻獣の石像などを見ていると『魔除けや守り神の類いなのだろうか?』と思うのだが……どう見てもモンスターを模った石像やら、可愛らしい小動物の石像もあるので実態はどんな意味があるのかさっぱり分からない。
……ただのインテリアなのだろうか? あそこに見える家の天使像なんて、翼にシーツが干されてるし……
石畳の道にブーツの踵の音を響かせながら街を歩けば、意外とプレイヤーの数が多いことに気付く。僕たちがロロクに来たばかりの時は、まだプレイヤーの数はちらほらとしか見られなかったのだが……この短い間で、あの大ガエルを突破できる人がだいぶ増えたのだろうか?
適当に散策していると、ライムからのメールでログインを知らされる。
さて、今日はどうするんだろうね。
―― …… ―― …… ―― …… ――
ライムと合流の後、噴水近くの転送装置から“華の町ファアート”へ。
ライムに連れられるまま、冒険者ギルド近くの喫茶店に移動する。
前回のメンテでこういった店にも入れる様になったらしい。
「こういう場合って、酒場が定番じゃないのか?」
「全年齢対象だからね。酒場はないんだよ、にーちゃ」
なるほど、健全ですね。
――そのワリに他人にパンツが見られるようにできる設定とかもあるんだよな、このゲーム。摩訶不思議だ……
喫茶店のテーブルの中の一つ。円卓に着く男女の中に、見知った顔を見つける。
マイテだ。
「あ、らいむちゃん、お兄さん。こっちです」
席に着くのは4人。男女の内訳は男2の女2か……
マイテ以外の3人も、ライムに親しげに挨拶を交わすと、僕には会釈を向けてきた。
「お待た、久しぶりみんな」
「うす、マジ久しぶり。そっちの人がライムの言ってたお兄さんか?」
ほうれい線の目立つ、白髪混じりの壮年の男性が口を開く。
ノースリーブで、道着の様な前合わせの服と、ニッカポッカのようなダボっとしたズボン。現実で会ったなら、「土建屋さん?」と思っただろうけど、こっちでは多分、武闘家といったところだろう。
マヨネーズ顔で、無造作ヘア……と言うよりは寝起きそのままっぽい髪型で、どこにでもいる気の良いおっちゃんの印象を受ける。
「ルゥネンです、よろしく。――ライムと結構、歳が離れていそうですね? マジ兄妹なんです?」
「ん? んん……?」
離れてるどころか、一歳というか、学年で言うと一学年しか違わないんだが? なぜそんな質問を?
余程ライムがロリっ子に見えているのか、それとも僕が老け――あ……
「ルゥネン。にーちゃもエイジング加工のキャラ。実際はピチピチのDK」
おい、男子高校生にピチピチという修飾語はどうなんだ? それとダイニングキッチンみたいな略語は止めろ。訳がわからない。
「マジ? そうなんだ? そんじゃ年下か。俺もリアルだと大学生。このキャラみたいなトシじゃないよ」
……ああ、壮年の男性がこんな平日の朝からネトゲとか、大丈夫かな……? とかちょっと思ったんだけど、大学生らしい。
学生は夏休みだけど、社会人はお盆期間ぐらいしか休めないもんね、普通。
「大学五年生。ルゥネンというより留年。名は体を表すだよ、にーちゃ」
「やかましいわ。必修科目の単位取りそこねたんだよ。マジあの教授アタマ堅てぇ」
ここにいるメンバーは、ライムがオーペンベータをやっていた時に、一緒に固定でパーティを組んでいた友人たちなんだそうだ。
オープンベータ時代は一緒にパーティを組んでいただけあって、ライムとルゥネンは気安い仲の様子。
「後は錬金術士のキャペモと、魔法使いのショウ」
少しぽっちゃりめの錬金術士の女性キャペモと、160センチにも充たない低身長の少年ショウ。
「はじめましてぇー」「ンむ……ども」
キャペモは、肩までの赤茶色の髪の女性で、毛髪の半分ほどはゆるいソバージュが掛かっている。尖った耳の先端が髪の中から飛び出しているので、種族はエルフらしい。
紺色の生地に、金糸で縁取り刺繍がされたゆったりとしたローブを着ており、体型も話し方も丸い――というかおっとりとした雰囲気だ。
ショウ少年はブラストマッシュの黒髪の上に猫の耳が乗っかっている砂糖顔の少年で、お姉様がたに人気が出そうだ。見た感じ小学校高学年から中学校一、二年生といったぐらい。
黒地のマントの下は胸元を紐でレースアップしたシャツと、そして膝上のハーフパンツーー
……なんだろう。お姉さま方人気を狙ってやっている様にしか見えない……
「ショウの装備はキャペモが見立ててる」
……なるほど、キャペモさんがショタコ――いや、皆まで言うまい、藪を突付いて、蛇どころか鬼が出そうだ……
と、まぁこの四人が、β時代にライムと固定パーティを組んでいた人達らしい。
今日はこの人達の手伝いをするとライムから聞いているけど、一体何を手伝うんだろう?
「あ、お兄さん。今日は東の森の攻略に付き合って貰いたいんですけど、ライムから聞いてますか?」
「いや、マイテ達の手伝いとは言われたが……あのカエル退治か?」
マイテは猫耳をぴょこぴょことさせながら、「ですです」と頷いた。
「私たちはまったり派なんですけど、なかなかジャイアントポイズントードが倒せなくてですね――」
「マジ、俺らもそろそろファアート地域から抜け出したくてな。ライム達はあのボスに三人ぽっちで勝ったんだろ? なら傭兵頼むかーってね」
白髪混じりの頭をボリボリと掻きながら笑顔を向けて来るルゥネン。
……倒したって言っても、かなりの苦戦で、冷々の辛勝なんだが……
「ちょうよゆう。ボス戦で使ったヒールは一回のみ。にーちゃにかかれば指先ひとつで『たわばっ』也」
「おいこら」
一撃喰らったら即死亡みたいな状況で、ヒールの出番なんぞあるか。
そんなオワタ式プレイで、ギリギリで勝って『余裕!』なんて言えるか。
「お兄さんさすがー」
「マジスゲーな兄さん」
「すごいですねぇー」
「ふむ……マーベラス」
「にーちゃマジパネェ」
僕を取り囲み、ぱちぱちぱち、と散発的な拍手が贈られる。
なにこれ? どういう状況? 補完されちゃった人類?
……ああ、いまのでよく解ったよ。お前らがライムの友人だってことがな!
PVが100万に到達しました。これも皆さまのご愛顧のおかげです。どうもありがとうございます。
これからも是非よろしくお願いします。m(_ _)m




