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43 電子音痴たる者

『じーーー……』


 仮想世界から現実世界に戻って来た僕を待っていたのは、僕の顔を覗き込む実にかわいらしいSD妹だった。


「ただいま」


 僕の胸の上に乗っているミニ妹に声を掛けると、にぱりと、つぼみほころぶような笑顔を返してくれた。


 ――……ミニ妹かわええ。


 ベッドの脇からも、ひょこひょこと二つの頭が飛び出して来る。

 すげぇ、理想のハーレムだ。ミニ妹ハーレム。

 ベッドをよじよじと登ってきた妹ズは、僕のお腹の上までぽりょぽりょと移動すると、お腹の上でころんと寝転ぶ。



 うん、天国はここに在った――



 妹ズをまとめて抱きしめると、妹ズはきゃいきゃいと歓声を上げる。ビジョンモードなので触れた感覚が無いのが残念でたまらない。



「……ん?」


 ふと気付く、わずかな違和感。

 妹の――一匹? 一人? まぁ匹でいいか、小動物っぽいし――妹の一匹を高い高いの要領で掲げ上げる。

 ぷらんぷらんと足をぶらぶらさせるミニ妹は、先刻までと少しだけ違いがあった。


「三頭身……? だよな? ログイン前までは二頭身だったと思うが……」




「そのとおーーっり!」




 言わずもがな、リアル妹の登場である。

 勢い良くドアが開けられるが、『開け放たれる』のではなく、しっかりとドアノブは握られている。これなら蝶番もさほど傷むまい。あれだ、柔道でも引き手は大事だよね、うん。


「そのミニ妹は、徐々に頭身を上げる! 次は四頭身。その次は五頭身――そして、六頭身半ぐらいになった時!『あれ? これってリアル妹でも良くね? やべぇリアル妹カワイイ。しかも触れるし抱きつける!』と、気が付いた時にはにーちゃは私にメロメロになっているのだっ!!」


「な、ナンダッテー!?」


「くくく……数日後にはにーちゃは、私無しでは生きられないカラダに――」


「――アンインストール……っと」



「な……なぁあああっ!?」


 ぴょこりぴょこりと暴れ回っていたミニマムな妹たちが、砂嵐(スノーノイズ)となって消えていく。


「っふう……」


 やりきった表情で爽やかに息を吐く。


「に、にーちゃ……あのかわいらしい妹ズを迷いもせず簡単に……このド外道っ!!」


「そして再インストール」



 そして先程の逆再生のように、砂嵐(スノーノイズ)から出現する妹ちゃんたち。


 無論、狙い通りに二頭身(・・・)だ。


「パソコン音痴のにーちゃが再インストールだとっ……!?」


「甘いな……妹よ」


 パソコン音痴だからこそなのだ。『駄目なら根本からやり直す』――それを知っているから、そうするしかないからこその選択なのだ。


「く……こんな方法でリセットされるとは――……にーちゃ!」


「な、なんだ?」


 食らいつく様に迫ってきた未来に、少し怖じける僕。


「……設定を直させて。毎回再インストールだと、本体(ハード)に良くない……」


「お、おう」


 僕のVR機でなにやらを弄る妹。

 なんだか締まらないオチになった……





 ―― …… ―― …… ―― …… ――





 寝落ちするまでミニ妹ズと戯れていたので、VRメットを被ったまま寝てしまった。おかげで少し寝不足気味だ。眠る前にミニ妹ズと遊ぶのは止めにしよう。


 ちなみに、今回はビジョンモードだったので関係ないが――

 ダイブモードの時に寝入ってしまうと、VR機は自動的にシャットダウンするようにプログラムされている。

 ダイブモードのまま寝てしまうと、シャットダウンせずにそのまま脳に負担が掛かった状態が続いてしまうからだ。



 さて余談だが、元々寝落ちとは「常時接続? ナニソレ?」という、インターネットの定額接続サービス自体が存在しなかった時代。

 つまり通常電話回線を利用した――いわゆるダイアルアップ接続しかない時代があった。


 その時代に作られた古くのネトゲ、もしくはインターネットの前身となったパソコン通信には、

『一定時間入力が無い場合には自動的に回線を切断する』という機能が付いた物があった。

 通常電話回線で接続したまま睡眠に入ってしまえば、翌月の電話料金の請求が恐ろしい事になるからだ。


 つまり、そのシステムによって、『寝たら落ち(ログアウトす)る』ので、『寝落ち』と呼ばれたらしい。

 インターネット黎明期(れいめいき)に作られた言葉が、今の時代になって、また正式な意味合いを取り戻すとは、世の中は不思議なものである。




 ――まぁそれはともかくとし、いつものように朝のランニングを終え、いつものように朝食。

 今日はベーコンエッグトーストと海藻サラダ。ベーコンエッグのベーコンって噛み切り難いよね。ウチのは妹様が細かい切れ目を入れてくれてるから平気だけど。


 食事を終え、食後のコーヒーを堪能している時に、未来の携帯が振動した。その直後――


『メール、だぜ、い、としの、未来』


「おいこら」


 なんだその着信音は? 何故僕の音声がコラージュされて着信音になってるんだ?


「む、マイテからだ」

「おい、その着信音声データを消せ、今すぐ」

「にーちゃ、今日は“ぶにゃ”にログインしたら、マイテたちのお手伝いでいい?」

「無視すんなよ、なぁ? しかも『メールだ』って言ってたよな? 通常着信音は別のボイスなんだろ? 消せよ、消してくれよ、なぁ」

「えーっと、『おけー、まかせろー』――返信っと」

「聞けよ、聞いてくれよ、お兄ちゃんのお願いを聞いてくれ」


 メールの送信完了を告げる『ぺぽ』という気の抜けた電子音が、未来の手元の携帯から鳴る。


「にーちゃ」

「お、おう」


 携帯の画面に視線を落としていた未来が、こちらを見据える。


「大丈夫、家の外に出る時には着信音を替えてるから」

「そんな手間を掛けてまで、何してんだお前は」


 妹様の暴走は、今日も僕の理解の範疇を超えていました。

 再インスコしても保存データがあるなら多分イミねーよ! とか、保存データも消えたとしたら、そもそも妹のスキンデータも飛んじゃってるよ! とかいうツッコミは(∩ ゜д゜)きこえなーい



あ、後、活動報告のキャラ絵にマイテとアイダリンを地味に追加しておきました。よろしければ見てやってください。

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