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41 ダブルロール・プレイヤー

『ホーミングシュート!』


 ルシアの矢がライトニングバードに向かって放たれるが、ライトニングバードの脇をかすめるだけで命中には至らない。


 “ホーミング”と名が付いている割にはその追尾性は低いようだ。

 スキルレベルがまだ低い所為なのか、矢の速度が高すぎて誘導が追い付いていないのが仇になっているのかは分からないが……


 元々、飛んでいる鳥を弓矢で落とす事自体が不可能に近い。猟師だって羽を休めている鳥を狙う。飛んでる鳥など狙ったりはしない。



「手こずっているな、駆け出し冒険者(ルーキー)


「傭兵さんっ!」


「闇雲に矢を放ったって当たりゃしねぇよ。どら、任せてみろ」


 ルシアの引き絞った弓を下ろさせ、僕は左手をライトニングバードに向ける。


 そのまましばらく、僕とライトニングバードの睨み合い続く――が、

 やがて焦れたライトニングバードが僕を目掛けて急降下してきた。


「鳥畜生めが」


 ライトニングバードが僕に向かってくるコースは直線。

 だったら後は簡単だ。


『ファイヤーボール』


 直線と直線、重なり合った場所でライトニングバードが炎に包まれ、勘高い悲鳴を上げる。


「ッ疾!」


 そのまま、ふらふらと落ちてきた所を大剣で斬り払う。


『ピギュイー!!』


 ちりちりと火の粉を残し、ライトニングバードは光の粒子を散らして消えていった。


「ふんっ……」


 ってまぁ、かっこつけてみたけれども?

 動き回って攻撃が当てにくい敵。それが攻撃に転ずる時に動きが単調になるので、それにカウンターを当てる――とか、ゲームの攻略法としては超ど定番だよね。

 いっそ、そういう攻略法の敵が出ないアクションゲームを探せと言われたら困るレベル。


「傭兵さん」


「この程度の雑魚相手に手こずるようじゃ、まだまだだな、ルーキー」


 あー恥ずかし! 何自信満々に偉そうな台詞言ってんの? 僕。

 大体にして、このルーキーさん、僕よりステータス高いよ絶対。


 ロールプレイ中だから仕方ないんだけどさっ! もう黒歴史確定じゃん、こんなの!



「……プ」


 こら、笑うな妹。ただでさえ口の中がモニョモニョしてて、自分の滑稽さに薄ら笑いが出そうなのを必死で我慢してんだからさ……



「ん……? 何か聞こえるな」


 そうして僕が内心で悶えている間に、何処からか鈍く重い音が聞こえてきた。どうやら少し離れた所で戦闘が行われているようだ。



 音から察するにプレイヤーは一人、ソロか……敵はロックパペットが1――いや、2体か。


 少しだけ盛り上がった小丘の上に移動すると、丘の陰になっていた丘下で、一人のプレイヤーがモンスターと戦闘を繰り広げていた。

 敵の数は予想通りロックパペットが2体。



「……?」


 だが、そのプレイヤーは――


「あんな所に冒険者がっ! 助けましょう!!」


 言うが早いか、ルシアはロックパペットに向かって矢を放つ。


『バーストシュート!』


 ルシアの撃ち放った矢はロックパペットの1体に当たり、小爆発を起こした。



 ――普通に考えてこれは横殴り行為。

 当人の確認も取らずに他人の戦っているモンスターを攻撃する行為は御法度だが……


「まったく! 嬢ちゃんはお優しいこって!」


 丘を駆け下り、助走を付けたまま、プレイヤーが対峙しているロックパペットを靴底で蹴り飛ばす。


「あ、あんた達はっ!?」


「ちゃんと前を見な、この人形どもはタフだ。すぐに起き上がってくるぜ」


 そう言っている間に、蹴り飛ばされたロックパペットは膝をついて立ち上がろうとしている。

 青い大剣を抜き、起き上がった直後のロックパペットの胴体を薙ぎ払う。


「そっちの一匹は任せた!」


「あ……あぁ!」


 プレイヤーの青年は()を構え直し、もう一体のロックパペットに向き合った。




 ――……うん、でも、あんたさっきまでハンマーで戦ってたよな? ハンマーの方が、ロックパペットとは戦い易いよな?

 僕らがあんたを見つけてから、慌てて剣に装備を替えたよな?


 ……このプレイヤーの名前は【レイモンド】

 さっき街でガールト侯爵家のナリーキとかいうボンボンを演じてた人である。


 一人二役かぁ~~(遠い目)



 とにかく今は目の前のロックパペットである。

 さっき戦った感じでは、動きはかなり遅いので倒すのに苦は無いが、関節を叩いて倒すのは、如何(いかん)せん時間が掛かり過ぎる。


 雷属性攻撃が有効のようだが、MPと威力の兼ね合いで、魔法のみで戦うというのも消耗が厳しい。さてどうしたものか……


『サンダーブレイド!』


 なので、ロロクのスキルショップで覚えるだけ覚えておいた属性付与(エンチャント)魔法を使ってみることにした。

 青の剣に黄色のエフェクトが乗り、合わさって緑色っぽい剣になる。


「っせい!」


 雷の属性を帯びた剣で、ロックパペットの胸元を突く。ズクリ――と、切先がわずかに刺し入った感触の後に、ロックパペットの躰が突き飛んでゆく。


「効くな」


「雷エンチャはペネトレイト(貫通)効果があるからね、にーちゃ」


 魔法の中には特殊効果を持つものがある。火魔法なんかは【状態異常:火傷】を持つ物などが多く、氷魔法などは【状態異常:凍結】を持つものが多い。

 雷もそれらと同じ様に、敵のガードの上から攻撃してもダメージが通る(50%ダメージ)【貫通効果】を持つ魔法が多い。

 サンダーブレイドはその例に漏れず、ペネトレイト(貫通)効果があるそうだ。

 ……まぁ当然、前にライムに聞いた話だけど。


「重畳」


 追撃。

 ロックパペットの両腕を斬り落とした後、胴体に連撃を入れる。

 僕の攻撃力では、一撃一撃の攻撃は大したダメージにはならない。

 だが、さっきみたいにロックパペットの関節を破壊し切ってから再生を待っているよりは、ずっと早くHPを減らせる。


 動きの鈍いロックパペットをに連続して剣を叩きつけていると、流石に防御力の高いモンスターでもみるみるとHPが減ってゆく。


「終いだ」


 トドメのパワースラッシュ。

 HPが残り少なくなったロックパペット。その胴体を肩口から脇腹までざっくりと斬り裂く。

 HPの尽きたロックパペットは光の砂と化して風に散った。


 向こうのもう一体の方は、ルシアの弓、ライムの魔法、レイモンドの剣、と三人の集中攻撃を受けているので間もなく終わりそうだ。



「喰らえぇぇえ!」


 レイモンドの剣がロックパペットの胴体を叩く。

 胴体を普通に攻撃しても、耐久超過(トランプル)ダメージが入っている様子なので、僕なんかよりずっと、STR値が高いのだろう。


 ――程なくして、レイモンド達の相手するロックパペットも倒れ、レイモンドは剣を納めた。

 この人も両手剣使いか……

 流行ってるの? 両手剣。僕みたいに片手剣と盾の人ってほとんど見ないんだが……


「助かったよ、有難う――……ルシア? 何故こんな所に……」


「レイモンドお兄ちゃん……? お兄ちゃんこそ何故?」


 口先から、『いや、もう分かってたでしょ? 戦闘中にお互いガン見してたじゃん?』と出そうになるがグッと我慢する。

 ……なんだろう、精神衛生上すっごく良くない。ツッコミたい。


「……はぁ? お兄ちゃんって?」


 と、なんだか素の声を出したレイモンドさんに、ルシアが駆け寄って耳元でこしょこしょ小声話。


 ――さてさて、その内容は、僕流の読唇術によると、

『あの二人を見てたら、兄妹って設定もいいかなーって思って』

『えぇ~? 二人は幼馴染ってことになってたじゃん』

『駄目?』

『ん~…………じゃあ、呼び名は“レイ兄”な。“レイモンドお兄ちゃん”はちょっとイメージと違うわ』

『う~ん、そっだね。じゃ“レイ兄”で』



 …………


 ててて、と距離を離す二人。

 そして元の立ち位置に戻って向かい合う。


「私はファルデンシアの花を探しに来たのよ、レイ兄」


「お前もか……。帰れっ! ファルデンシアの花はオレが持って帰ってやる! お前には危険だ!」


「!? 帰らないわ! レイ兄だって危ないところだったじゃない!?」



 ――アドリブで設定変更かよ!?

 そういうことすると、どんどんキャラに妙な裏設定が出来るんだよ! その内『龍の巫女』とか『前世で聖女だった』とか『命を削って極大魔法が使える』とか『身体の中に悪魔が封印されている』とか、余計な設定が膨れ上がって行くからやめとけよ!? 収集つかなくなるって!



「私は大丈夫よ、傭兵さんに付いてきて貰ったもの。ファルデンシアの花ぐらい採って帰れるわ!」


「……ふざけるな! そんな傭兵を雇う金なんて家には無かったろ!? 騙されてんだよ、お前は!」


 すんません、その傭兵めっちゃ弱いです。ロックパペットのガードを耐久超過(トランプル)できません……


「失礼なことを言わないで! 傭兵さんは……傭兵さんは……」


 ――と、ここで言い争い(の演技)をしていた二人から僕に視線が集まった。


 ……え? なに? と僕が困惑していると、ルシアがこちらに向けて口をパクパクと動かすジェスチャーを見せた。


 ……え? あ、僕の台詞の番ってこと?

 ちょ、ま……いきなりアドリブを求められても……

 えーっと、うんーっと……


「あ~…………、お前の兄貴の言う通り、あまり簡単に人を信用するもんじゃないな。俺はお前を攫って、あの貴族に売ることだって出来たんだぜ?」


 でもまぁ、その貴族さん、貴方の目の前にいるんですけどね?


「……でも、傭兵さんはここに連れて来てくれました。それが全てです」


 はい、良い笑顔を貰いました。特に守りたくもない、この笑顔。


「……ふん、なら勝手にしろ。オレは行くぞ」


 レイモンドが背を向け、歩き出す。

 そっちの方向は帰り道だぞ? とか言っちゃ駄目かな? 駄目だろうな、うん。


「レイ兄……」


 去り行く兄の背を、ルシアは何時までも見つめていたのであった――


 ――――

 ――




「…………」

「…………」

「…………」


 とまぁ、物語なら『暗転、後に場面切り替え』ってシーンだけど……

 生憎、緞帳もなければ「カット!」と叫ぶ映像監督も居ない。


 ……これ、どうすればいいんだろうか? いつまで僕らは固まっていればいいんだろうか?



「――そろそろ行こ、日付け越えちゃう前に終わらせる約束」


 (一般人)Tueee!!!!

素人の下手な鉛筆絵ですが、主人公(ユーシ)とライムのイメージ絵を書いてみました。

見てみたいという物好きな方は、活動報告からご覧ください。

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