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30 昼の一間(セルシンver)

タイトルとあらすじをちょっと変えました。

新しいタイトルは『勇者さま(が)プレイ! 〜妹もいるよ〜』になります。


※ブラックリストの機能に

『双方のフレンド登録の解除』『各種サーチ機能ヘ非表示』『双方の接触が不可能(透過)』を追加しました。

 本文がほんの少し変わりましたが、内容に変更は御座いません。


※『華の街ファート』を『華の街ファアート』に変更。

「ふッハぁ……」

「ふー」

「はぁー」


 『……なんだか疲れた』

 それがみんなの共通意思だった。


「もちょっとでお昼だね、にーちゃ」

「だな……」

「攻略は後にしましょう~……」


「じゃ、後はお昼ごはんの後ということで――」



 ログアウト。





――【サーバーとの通信を切断しました。またのプレイをお待ちしております】――





 ジャージャーと、台所で何かを炒める音がかすかに聞こえる。


 庭に独り立ち、右手に剣。左手に盾を持ち、僕は意識を集中させる――。


 徐々に輪郭を帯びてくる人型。それは大きく、強く、硬い。


 僕よりもふた周りほども大きな身体。

 金色の鎧に金色の盾――

 使い込んだそれは、くすんだ色をしており、輝きは鈍い。


 イメージは形を作り、そして僕の前に現れる。



『久しぶりだな。ユー』


 “宝盾”セルシン。俺の大事な仲間。


「ああ、久しぶり」


『なんだ? いつもはアルと乳繰り合っているのに、今日はオレか?』


「気色悪い言い方をするな、たまにはいいだろ?」


 金色の瞳を細め、セルシンはニッと笑って、その巨大な盾を構える。


『おう、来い、ユー』


「頼むぜ、セルシン」


 そして、剣を正眼に構えた。





――


 セルシンの武器は巨大な盾と短い手槍。

 セルシンの盾は、決して防具ではない。武器でもあるのだ。


 じりじりと間合いを詰めてくるセルシン。


「…………」


 そして、槍の間合いギリギリに来た時、その動きを止める。


『勝利条件はどうするか……オレの後ろのあの木に、剣先だろうが魔法だろうが当てられたらお前の勝ちでいいか?』


「魔法なんて使えねぇっての、お前といいアルといい……」


『そりゃ失礼した』


「全くだ――よっ!!」


 弾けるようにセルシンの右側に回る。

 しかし、突き出された槍に行く手を遮られた。


「ちっ!」


 槍の柄を盾で叩き上げ、進路を確保――


『足が鈍ったぞ』


 正面からごぉう! と唸り声を上げ、巨大な盾が襲ってくる。


 ひやりと、後ろに飛び退く。あんなもので殴られたら、たまったものではない。


『まだ盾の扱いが雑だな。盾は受ける、流す、弾く、叩く、ぶつかる、だ。今の場面は弾くではなく、流すが正解だ』


「んな馬鹿デカい鉄の塊をブンブン振り回すやつに雑とか言われたくねぇ~」


『鉄じゃない、ガーマンタイトだ』


「余計にだ! このデカブツ!」


 鉄の三倍の重量じゃねーか。大抵の奴はバックラーサイズでも扱えないぞ。


『まあいい、ほら次だ。勇者様』


「ち……」


 じりじりと擦り足で移動する。それに合わせてセルシンもじりじりと位置取りを整える。


 こいつの横を抜けられるイメージが湧かない……流石はその大盾でずっと仲間たちを守ってきたセルシンだ。


「お前こっちじゃ、ゴールキーパーかディフェンダーをやるといいよ」

『なんだそれは?』

「こっちの競技のポジション名」

『なんのことやら分からんが、ディフェンダーという響きはいいな』

「守護者、という意味だ」

『素晴らしい』


 再度右手に回り込むように駆ける。

 そこで急転換し、セルシンに向けて盾で体当たり(シールドチャージ)


 盾と盾がぶつかり合い、ごうんと鈍重な音を立てる。


「ぐ……」


 しかし超重量級のセルシンは小揺ぎもしない。逆にこちらの体勢が崩れた。


『悪くはない』


 そのまま盾で弾き飛ばされ、無様に転がる。

 起き上がる頃には間合いを詰められ、目標の木がさらに遠くなってしまった。


『だが、姿勢の不安定な状態での体当たりは、腰を据えた相手にやるもんじゃないな。弾き返されるのが落ちだ』


 巨大な盾の横から槍が突き出される。

 それを剣で逸らすが、ノータイムで襲いかかって来る金色の壁――


「がぁっ……!!」


 また吹き飛ばされる。そして間合いを詰められる――

 どんどん押し戻され、遠くなってゆく標的……


「だからお前と()るのは嫌なんだよ。攻め口がねーじゃねーか」


『お褒めいただき光栄だ。守護者が隙だらけでは物の役には立たん』


 剣と盾を構え直し、セルシンの全身を視界に入れる。瞬きひとつ見逃さぬよう、腰を浮かし、足の爪先に力を流す。


 じりじりと夏の太陽が身体を灼き、汗が蒸気を上げ、剣と盾が熱を持つ。


(あの鎧で涼しい顔をしやがって……)


 汗が顎を滴り、喉が灼けるように渇く……


 ――刹那。右目の視界がぼやけた。



(……!! 汗がっ!?)



 次の瞬間。俺の身体は宙に浮く。

 視界に入るのは青い空と白い雲。


 ――ああ……


 どう、と倒れて、空を見上げる。

 呼吸は荒く、吹き出した汗が全身を濡らす。




「にーちゃー、ご飯だよ。今日はどうだった?」


「……ああ、ありがとう未来」


 むっくと起き上がり、土を払う。

 未来から手渡されたタオルは、ふんわりと柔らかく、いい香りがした。


「完敗だよ、ちくしょう」






 ―― …… ―― …… ―― …… ――






 未来の作った有り物チャーハンと玉子スープで昼食を取り、シャワーを浴びる。


 かいた汗の分、ごっごとスポーツ飲料を煽り、リビングで洗濯物を畳む未来に一声掛けてから部屋に戻った。



 洗濯物を畳むぐらいは手伝いたいものだが、何故、これみよがしに自分の下着を見やすい場所に置いておくんだ? 妹よ……

 と、いうか、下着だけは自分の部屋で干しているはずじゃないか……わざわざリビングに持ってきて畳む理由がわからん。


 ちなみに上の下着――ブラを見た記憶はない。小さいのを気にしてるんだろうか?



 部屋のベッドで横になり、VR端末を起動。“brand-new World”にログインする。

 ――そういえば枕……まだ未来のやつのまま交換してないや。





――【“brand-new World”へようこそ】――





 さて、ログインしたはいいが、ライムもアイダリンもまだ来てはいない。


 フィールドエリアやダンジョンがログイン地点の場合、ログインした場所から少し移動しないと敵に襲われないように出来ている。


 これを利用すれば、ログアウトとログインの連続でエンカウント無しで進めるので、ステータスが足りずに今まで行けなかった場所まで行けたりするらしい。

 だが、行った先で何をするんだ? と言われたらそれまでだよねって話だ……

 結局ここのボスみたいに、倒さないと先に進めない敵が各所にいるらしいしね。


 ちなみにこの無敵状態だと、宝箱も開けられないし、採集も出来ないようになっている。


 アイダリンと初めて会ったとき、彼女が森の中でじっとしていたのも、このシステムがあったからだ。

 “帰還の晶石”を買い忘れたって言ってたし、帰るに帰れなかったわけだね。



 しかし……暇だ。

 わざと移動して、ログイン無敵を切ってから雑魚狩りをしているのもなんだし……


 手持ち無沙汰な僕は、いつもはライムの情報に任せきりで、ロクに触っていないウインドウ画面を弄ってみることにした。




アイテム:用途のわからない素材が貯まっている。これは処分していいのか? ……後でライムに聞こう。


装備:まぁ、問題なし。頭装備が空欄なのが気になるな。ブーツもいい加減に換えたい。

 後は……うん、アンクレッドロングコートが僕の癒しだよ……


スキル:魔法系を覚えたから、結構増えたな。

 パワースラッシュがレベル3になってるが……ライムの言うパワーチャージはいつ覚えるんだろうなぁ……



 ん? 習得可能スキル? なんだこれ?



 ――その先の選択し、進んで見るとなにやら【剣術】【盾術】【格闘】【回避術】【創作魔法】【目利き】【気配察知】とあった。

 ……なんだこりゃ?



「おまたせ、にーちゃ」


 その時、ちょうどライムがログインしてきた。色々と訊いてみることにしよう。





 ――


「あ……言ってなかったっけ……一定の行動を取ると、新しくスキルが覚えられるんだよ、にーちゃ」


 つまり、剣で戦っていたから【剣術】が習得可能になった……と。


「勝手に覚えるもんじゃないのか、それは……」


「スキルポイントを使って覚えるんだよ、にーちゃ」


 スキルのレベルが上がると、スキルポイントが1増える。それを使って、覚えているスキルをさらにレベルアップさせるか、習得スキル欄にある新しいスキルを覚えることが可能らしい。


「僕……ほとんどスキルとか使ってないんだけど?」

「それはにーちゃが悪い。通常攻撃のみで戦えるにーちゃが変」


 変と来ましたか。


「剣術とかってなんなんだ? いまいち想像がつかないんだが……」


「うーん……にーちゃ、今から杖で殴るから、受け止めて」


 ライムは杖を構えると、僕に向かって真っ直ぐに振り下ろした。

 ――ひゅ、っと風切り音がして、受け止めた僕の手に衝撃が伝わる。


「これが【杖術】あり。これをOFFにするね、にーちゃ」


 ウインドウを操作してから、もう一度杖を構え、振り下ろすライム。

 ――へろへろ、っと杖の先がぶれ、僕の手の中に。


「衝撃の強さは変わらんが、振った武器の動きに補正がかかるのか」


「うん、カメラの手ぶれ補正機能みたいなものだね、にーちゃ」


 うん――いらん!


 勝手に補正されるとか、やりにくくなるだけだ。


「パッシブは放っておいてもレベルが上がるから、にーちゃは習得しといた方がいいよ? さっきみたいに効果OFFにしておけば、経験値だけ入ってレベル上がるし」


「そ、そうですか……」


 どうやら、習得したほうが良さそうです。


 それと、【目利き】は価値の高いアイテム(売品)からなんとなくオーラが見えるスキル。基準はNPC売却時の価格設定。

 たぶんブローチを買った時に習得可能になっただろう。

 【気配察知】は敵のいる方向の肌がほんの少しだけピリピリするらしい。

 ……いらんなぁ



「お、おまたせして申し訳ありません!」


 と、ここでアイダリンがログインしてきた。


「おかえり」「おかー」


「よ、良かった……もしかしたら置いて行かれちゃったんじゃないかと……」


 ……なんだかトラウマになっちゃったっぽいね。クソサボテンの所為で……


「だいじょーぶ。にーちゃにスキルの基本的な説明をしてたから」


「え? ユーシさんって、かなりやり込んでいて、物凄くスキルレベルが高いんじゃないんですか? 人間離れした動きをしてましたし……」


「にーちゃ。これが一般的な人の意見」


 仕方ないだろ? 魔王と戦えるレベルまで鍛えれば、あれぐらいは出来るようになるって、普通。

 ……普通? 前提から言って普通じゃないのか?

 魔王は倒さないかぁ、普通は……


「それで【創作魔法】だが……」


アレ(・・)だよね。スキルとして存在してたんだね。あの時にーちゃに何か習得スキルが生えてないか訊いておけば良かった」


「【創作魔法】ですか? なんですか、それ?」


 キョトンとした顔で訪ねてくるアイダリン。


「魔法だったら興味があります。なんでしょう? 教えてくださいよー」


 ……まぁ、スキルとして出て来ているなら、教えても問題は無い――のか?

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