27 忍び寄る影
「おい、ライミーって英国人の蔑称だってよ」
「の゛!?」
「ライム野郎という意味らしい。詳しくはググれ」
「……サボテンを笑えなくなっちゃったよ、にーちゃ……しくしく……」
「単純にアナグラムで付けたのが仇になっちゃったな……」
「いや! これはメシがアレな国だからこそ! もっとおいしいごはんをにーちゃに食べさせろという神の啓示! わたしがんばるよ、にーちゃ!」
「いや、大丈夫だから……」
……ということで、感想で指摘させて知った馬鹿な筆者。
『ライミー』から『ライム』に全面修正しました。
和名なら有名人とカブってないかググったりするんだけどなぁ……
※ブラックリストの仕様を
『拒否レベル最大で声は聞こえなくなる』と変えました。姿は双方見えます。
さらにレベルによって、『メールの送信』『同パーティへの参加』『スクリーンショット及び動画の撮影』が不可能です。
さらに『双方のフレンド登録の解除』『各種サーチ機能ヘ非表示』『双方の接触が不可能(透過)』を追加。
それとブラックリストに入れたプレイヤーが近くに居る時。
入れた側のキャラクターの頭上に赤文字で『×カクトゥス』のような文字が浮かび上がる設定にいたしました。
なお、ストーリー自体に特に変更は御座いません。
「アイダリンは魔法を使うんだよな?」
「はい! まじゅちゅし、まぢゅちし……まじゅ……、――す~、は~……ま、じゅ、つ、し、ですっ!」
「……ジョブの欄、書き換えたら?」
――と、いうことで“魔術師”改め“ウィザード”のアイダリンがパーティに加わった。
「と、なると前衛は僕だけか。まぁ、まずは適当に合わせてみよう」
「そだね、にーちゃ。今までは私がバフしてただけだしね」
そうこう話しているうちに、モンスターがPOPする。
「犬2の熊1の猪1か……猪突課長ってやつは初だが、他は大丈夫だな」
“プロボークステップ”を発動させ、敵陣に突っ込む。レッサーコボルトとクレセントベアーの攻撃を誘発させ、後方に流れて行かぬ様、その場に留まらせる。
「にーちゃ、猪突課長を引き付けたら、突進攻撃の延長線上に後衛が来ないように立ち回って!」
「あいよっ!」
猪突課長は大きな下牙を持つ猪型のモンスター。大きさは体長2メートルちょっと、高さは僕の肩ぐらいか? 黒というか濃紺色の毛皮をしているが、それが背広に似た模様をしているかどうかは、腹が下になっているので確認は出来ない。……まぁどうでもいいけど。
なかなかに凶悪な面構えで、もしかしたらボツになったオークの顔を流用しているのかもしれない。
その猪突課長が土を掻いたと思ったら、僕を狙って一直線に突撃してきた。
『ぶもぉーー!』
「っと」
突進してくる猪突課長の上を、跳び箱の要領で回避。
猪突課長は、そのまま10メートルぐらい先まで走り抜けてで行った。
なるほど、突進を身体で止められない場合、後ろのパーティメンバーに突っ込んで行っちゃうわけか。
「す、凄い避け方ですね」
「にーちゃだしね」
猪突課長が戻って来る前に、レッサーコボルド一匹を蹴り飛ばし、ライムの目の前に転がす。一匹はそのままイモ剣の錆に。
「アイダリン! 猪が突進したら、移動の終わり際に魔法を頼む!」
クレセントベアーの引っ掻きを剣でいなし、顔を盾で殴り飛ばしながら指示を出す。
その直後に猪突課長が突っ込んできた。
『部長ぉぉぉーー!』
「人違いだっ!?」
何コイツ? 部長を亡き者にして、自分がその地位に収まろうとか思ってんの? そも人違いだ! 僕は部長じゃない!
らんらんと目を輝かせて突進してくる猪突課長を、今度は横に躱し、後はアイダリンの魔法に任せる。
ちなみに本物の猪は小回り効くからね? 横に避けても普通に吹っ飛ばされるよ。
猪突猛進っていうのは、猟師から逃げる時の猪の様子らしい。最短距離で逃げるんだね。猪突猛進というより、猪突猛退だよね。
『ファイアボム!』
そうしてクレセントベアーの首を跳ねた時、アイダリンの魔法が炸裂し背後から爆音が響いた。
その余波が生んだ空気の振動が、ピリピリと肌を撫でる。
「……浅いな」
だが、僕の予測した猪突課長の位置と、爆発の振動の発生源が微妙にズレている。
僕はその場で反転すると、剣を構え、もうもうと立つ土煙の中に突っ込んでいく。
「いた、やはりか」
土煙の中に薄っすらと見えた猪突課長。
ダメージは入ったのだろうが、まだ倒し切れてはいない。
僕に気付き、こちらに突進を始めた猪突課長の額に、走り込んだ勢いのまま剣を突き立てる。
『ぶもぉぉぉおおお!』
ずぶり、と剣は剣身の半分ほど突き刺さった。
剣は額に突き立てたが、身体に残った慣性は抜けない。
そのまま勢いを殺す為に、猪突課長の背中の上をゴロゴロと転が――
「いてっ!」
――ろうとしたら、その途中で猪突課長が粒子になって消滅してしまったので、僕はあえなく地面に叩きつけられてしまった。
「うわぁ、かっこわる……」
むくりと立ち上がり、その場に転がるイモ剣を拾うと、鞘に納める。
まぁ、みっともない終わり方だったが、あの二人には、土煙が邪魔で見えなかっただろう……
「終わったよ」
戦闘を終え、僕は二人の元に戻ると、アイダリンがキラキラした眼で僕を見上げてきた。
この眼は――アレか? アレをまたやっちゃうのか? ネット小説で定番のアレか?
「す、凄いです! まるでアクション映画みたいな動きでしたっ! 剣はイモで盾は亀ですけど」
ほっとけや。イモでも亀でもいいじゃないか。
「さすあに」
お前はお前でやる気なさそうだな、妹よ。
「……ま、次行くか」
得も言われぬしょんぼり感を抱き、僕は先に進むのだった。
―― …… ―― …… ―― …… ――
森での戦闘はそれなりに順調に進んだ。アイダリンの魔法は猪突課長に使わせるより、他の敵の殲滅に使ったほうが良かったようだ。そうすれば基本的には僕が猪突課長に専念すれば良い。
ちなみに猪突課長はタンクが突進を止めるのが定石らしい。
すげーなタンク。流石タンクだ、ビクともしないぜ。
セルシンだったらどうだろうなぁ? 猪の突進ぐらいなら簡単に止められるか。マンティコアも止めてたしな。
猪程度なら、盾で殴って、殺すまであるな。
よくよく化け物揃いだったな、あの仲間たち。
「もうすこし進むと洞窟があるよ、にーちゃ。そこからはインスタンスダンジョンだよ」
話によると、そのインスタンスダンジョンを進んでいくと、次の街へ行くための門番となるボスモンスターが出るのだそうだ。
インスタンスダンジョンならば、他のパーティがボスを倒した後に通り抜けるという手は使えない。
「なるほど、だからクリア出来ないと次の街に行けないのか」
「次の街さえ行けば、そこまで悪評は広まってないと思うのですが……」
華の街ファアートでパーティ募集をしているということは、基本的にはまだ次の街ロロクには行けない人ばかりだということ。
別に手配書が出回っているわけでもあるまいし、ロロクに行けばきっと大丈夫だろう。
まったく、アイダリンはごくまともな子なのに、馬鹿に付き纏われた所為で可哀想なモンだな……
「さっさとブラックリストしちゃえば良かったのに、アイダリン」
「はい、えー……っと、最初は偶然一緒になってるのかなぁ? とか思ってて、ちょっと経ってやっぱり変だなって思っても、ブラックリスト入りはちょっと気が引けるな……とか思っちゃって……気が付けば私まで爪弾き者に……」
不憫やね……アイダリン。
ブラックリストは便利な機能ではあるが、こういう気の弱い子にはなかなか使いどころが難しいみたいだ。
――と、そこに、どこかで聞いたことのある声が森の中を駆け抜けた。
「あ! てめぇ! 今度はアイダリンまでちょっかい出してんのかっ! テメー!!」
あれ? あれれ? この展開……覚えがあるぞぉ?




