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25 イメージとしては少女マンガで「カレといると楽しい」という吹き出しと同時に1ページでデート内容が終わる――デート回

 日刊の方の順位が落ち着いて来ましたので……

 週刊総合23位、週刊ジャンル別1位を取ることが出来ました。これも一重に皆さまの応援、ご愛顧のおかげです。


 さ、後は落ちるだけだ! ここんとこソワソワしっぱなしでどうしようもなかったんですよぅ(汗)

 大切な子を突き飛ばした。

 その子は目をまるくして、呆然としていた。


 ごめん、嫌いで突き飛ばしたんじゃないんだよ?


 なんだか顔がむず痒い。手で擦って見ると、真っ赤になった。

 知ってる。これは血だ。


 あの子が泣いてしまった。泣かせてしまった。

 ごめんね、怖かったよね。


 周りが騒がしくなって、僕はすぐに抱きかかえられる。どこかへ連れていかれてしまうみたいだ。

 まって、と言っても待ってくれない。

 あの子が泣いている。僕はあの子を守らなきゃいけないのに――


 幼い僕は、泣きじゃくるその子に手も差し伸べられないでいた。






 ――――



「“夢で逢いましょう”……か」


 寝癖頭をわしわしと掻いて、僕はベッドから降りた。



 朝の5時に起きた僕は、いつもの日課のランニングを終え、帰宅した。

 僕が帰る頃には、未来が朝食の用意を始めてくれている。


「和洋折衷とマサチューセッツって似てるよね、にーちゃ」

「何がだ」

「語感」


 チーズ納豆トーストを囓りながらそんなことを話す。

 どうやら妹様の様子もいつもの通り。元に戻ったようだ。



 食休みにぼーっとテレビを見ていると、洗濯を終えた未来が隣に座った。


「今、妹の部屋に行くと、妹のパンツが部屋干ししてあるよ、にーちゃ」

「あっそ」

「今日の妹パンツはピンクのリボンがついた白だよ。にーちゃ」

「そーですか」

「しかもアダルトなオープンショーツだよ」

「…………」

「想像した?」

「しねーよ!」


 ちなみに嘘だそうです。



「にーちゃ、デートしよう」

「ん? どっか出かけるのか?」

「のんのん、デート。遊びに行こう」

「いいけど……何処に行くんだ?」

「んー、水族館とかどうかな?」


 テレビには、魚市場の映像が流れている。


「……食えんぞ?」

「帰りにお魚買って帰ろう」

「……まぁいいか」



 一度部屋に戻り、部屋着から外出着に着替える。とは言っても、ジーンズとTシャツに着替えて、ペンダントとバングルを着けただけだが……それすら妹セレクションでの購入ですが何か?

 そうして玄関先で待っていると、着替えを終えた未来が二階の階段から現れる。


「おまたー」


 未来はフリルが少しついた、真っ白なサマードレスに、スラウチハット姿だった。

 避暑に来た深窓のご令嬢風だ。


「あ、にーちゃ。帽子被んないと駄目だよー」


 と、カーキ色のキャスケット帽を被らされる。


 玄関を出ると、さんさんと白い光を放つ太陽が僕たちを出迎えた。


「ふー、午前中なのにあっついねー」

「だな」


 スマホを取り出して気象予報を見ると、今日は35℃にもなるらしい。

 ちなみにこのスマホ。着信履歴を見ると、妹妹妹妹妹妹親妹妹妹妹妹親妹妹妹――とかになってる。

 うん、見なかったことにしよう……



 電車を乗り継ぎ、海沿いへ。

 潮の匂いを風が運んでくる。


「どうせなら海水浴してく?」

「水着なんて持ってきてないぞ」

「買おうよ、持ってるの、どうせ去年のでしょ?」

「男はそんなに頻繁に買い替えねーよ」


 水族館が開くまで時間があるので、コンビニでアイスを買って海沿いをふらふら。


「海沿いのコンビニって、水着まで売ってるんだね」

「釣り道具も売ってたぞ」

「まぁ、あそこで水着は買わないかな。シンプル過ぎるのしか無かったし」

「僕はシンプルなのでいいんだがな」

「どっちみちコンビニだから、それはそれで高い」

「しっかりしていらっしゃる」



 水族館の開館時間が来たので中に。


「しまった」

「どうした?」

「開館直後だから、そんなに混んでない」

「いいじゃないか?」

「にーちゃに『ほれ……はぐれちまうだろ』とか言わせて、手を握らせる作戦が……」

「ほれ、手ぐらい握りゃいいだろ」

「へへ……」

「腕を組めとは言ってない」

「外は暑かったから」

「理由になってねぇ」


 ――


「にーちゃにーちゃ」

「ん?」

「イッカクのツノだって、ユニコーンのツノみたいだね」

「ああ、確かどっかの博物館には、イッカクのツノをユニコーンのツノだって言って飾られているらしい」

「へー……? あっちにはユニコーンっていた?」

「さぁ? 居るって伝承があるっていう、幻影の森ってのはあったが、魔王関係ないし行かなかったからなぁ、ゲームじゃあるまいし世界の全てを虱潰(しらみつぶ)しになんてできないしなぁ」

「ありゃりゃ、ぶにゃにも出るかな? ユニコーン」

「さぁ? まぁ出ても敵じゃあな……」

「非処女と男にだけ襲いかかるモンスター!」

「最低だな、どうやって純潔じゃないとか判るんだよ……」

「外見だって完全トレースしてるんだし、システムで分かっちゃうんじゃない?」

「最低だな……! 個人情報すっぱ抜きかよ!」

「……私は処女だよ?」

「うん、まぁそんな気はしてる」

「にーちゃ次第で今夜にでもユニコーンに襲われてしまう身体になっても――!!!!」

「だから、周りを見ような?」

「……はい」


 ――


「オットセイのショーだって、でも時間合わないねぇ」

「ふむ、ところで妹よ」

「なに? 兄者よ」

「オットセイとアシカとトド、見分けがつくかね?」

「アザラシなら」

「だよね」


 ――


「マンボウっていないのかな?」

「でかい上に死にやすいらしいからなぁ……飼育が難しいんじゃないか?」

「そんなに死にやすいの?」

「水槽に当たって死亡。太陽光で死亡。餌を食って死亡。ジャンプして死亡。仲間の死を見て死亡。とにかくストレスで死亡」

「うわぁ……」

「海のマンボウ、陸のナマケモノってところだな」


 ――


「コバンザメだってよ」

「寄生プレイヤーだ!」

「なになに?『コバンザメは他の生物にくっついてないと大きな不安に駆られるちいさな魚です』だってさ」

「ぎゅー」

「……なんだ?」

「コバンザメ」


 ――


「納得いかない」

「なんだ?」

「なんでマンボウのヌイグルミが売ってるの!? いないのにっ!」

「うん、まぁ……」

「こっちはクジラがあった。いたっけクジラ?」

「イッカクだってクジラだぞ」

「イッカクもいなかったじゃん、ツノだけで」


 ――



 水族館を出て昼前。割と近くにショッピングモールがあったので、そちらに移動。


「じゃあ、水着を選んでくるから、にーちゃも何か買っておいて」

「お前のことだから、僕に選べって言うかと思ってた。あ、フリじゃないからな?」

「こういうのは、サプライズが必要だよ、にーちゃ」


 ――


「にーちゃ、買った?」

「買ったよ、一番安いの」

「じゃ、にーちゃ。下着売場に行こう!」

「……なぜ今行く必要がある?」

「にーちゃの好みを訊く為に決まってるけど?」

「そっちは僕に訊くんだ? 普通は逆じゃないか……?」

「水着は他の人にも見られるものだから、あまり過激なのは駄目」

「僕がどんなのを選ぶと思ってるんだ、お前は……そもそも下着売り場になんか行かんわ、阿呆」


 ――



 100均で大判タオルを数枚買い込み、海の家で着替える。

 ロッカーに全ての荷物を詰め込み、海水浴場へ。


 未来の水着はピンクと水色と黄色のドット柄が混然となって散りばめられた柄のタンキニ。

 ボトムはボーイレッグと、意外にも露出の少ない水着だった。

 ――あれ? 僕って妹のことを露出狂だと認識してる……?

 ……しょうがないよな。隙あらばパンツを見せようとしてくる妹だもの……


 僕は黒いサーフパンツと半袖の白いラッシュガード。

 勇者時代に傷痕だらけだったこともあって、あんまり肌を出したくない。まぁ巻き戻りで傷痕はないんだけど、気分的にね。


「やっぱ人多いね、にーちゃ」

「シーズンだしなぁ」

「ところで、水着、女の子と一緒。とくればお約束があるよね? にーちゃ」

「ああ、可愛いよ未来。よく似合ってる」

「……!? にーちゃがデレた……!?」

「おいお前、僕だって、普通にしてれば褒めぐらいするわ」

「よし、段々と薄着にしていって、にーちゃを慣れさせればいいんだね? そうすれば下着姿も褒めてくれるはず――!」

「ないわー」



 ――


「ふ、これを見よ、にーちゃ」

「どっから出した、その水鉄砲。しかもデカいな?」

「ふ、今時の100均には色々なものが売ってる」

「その言葉は三十代以上の人のセリフだ。ちなみに昔から色々あったそうだぞ」

「不意打ちっ!」

「……『不意打ち』って言葉をかけてから撃つなよ、不意打ちにならん」

「なぜだ! なぜ当たらん! ええい、ヤツはニュータイプかッ!?」

「いえ、元勇者です」

「そうだった!」


 ――


「にーちゃ、もうお昼だいぶ過ぎたね」

「ああ、そうだな……財布はロッカーの中か」

「ふ、にーちゃ」

「ビニールのソフトケースに小銭入れだと……!?」

「100均にはなんでも売っている。さあ、にーちゃ、海の家の高くて不味いラーメンを食べにいこう!」

「大きな声で言うことじゃないな」


 ――


「……意外と美味しかった」

「具の海老とか新鮮だったしな」

「ちっ……ハズレか」

「……当たりだろうよ、普通に考えて」


 ――


「にーちゃー、浮き輪押してー」

「あいよ」

「……にーちゃ、なに? その泳ぎ方」

「古式泳法」

「……異世界で覚えてきたかー」

「いや、こっちで」

「なぜ覚えた」


 ――


「にーちゃ、ちょっと顔色が悪い? 大丈夫?」

「ああ……ちょっとな……むこうで砂の城を作っていた子供がいただろう?」

「……? うん」

「あの城が魔王城にそっくりでな……」

「……意外な才能を持つ子だね」


 ――


「そろそろ帰ろうぜ」

「はーい」


「今晩は?」

「アジの照り焼き!」

「水槽の中で元気に泳いでたしなぁ……」

「それともイルカ肉でも食べる?」

「時流的にそれはどうなんだ……? てか、旨いの?」

「ぐにょんぐにょんして獣臭い」

「やめとこ……」



 ――――


「ねむい……」

「結構動いたしな。お風呂入って早めに寝ちゃえよ」

「うん……今日はぶにゃ無理だー」



「お休み」

「うん、おやすー」



 ぱたりと閉じる部屋のドアに、一日の終わりを感じた。部屋の窓を開けると、入ってきた風が鼻の奥にかすかに残った潮の香りをくすぐった。


 ――さて、少しは夏休みの課題を進めてから寝るか。


 ちなみにマンボウですが、本当はそこまで死にやすい生き物でもないそうです。

 デリケートな生き物には変わらないですけどね。

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