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20 ねんがんの レア剣を てにいれたぞ!  ≫そう いらないね  ≫もっていってくれ たのむ!!

 魔法のことはひとまず置いておいて――

 とにかく残ったモグモグ男爵を倒し、ひと息着いたところで、ライムが耳元へ口唇を近付けてきた。


「にーちゃ、なに? 今の魔法」

「それはまた後でな……」

「?」


 巨大なタワーシールドに身を隠していたマイテには、さっきの魔法は見えて無かったらしい。

 少し迂闊だったかな……と、反省したところで、リザルトを見る。


「お、ちゃんと倒せてたな」


 リザルトにはモグメークイーンの名がしっかりとあり、その分の経験値も入ったのか、ステータスが一回り上がっていた。

 そろそろAGI上げ主体のショートソードではなく、ロングソードか何かに替えてもいいかも知れない。


「あ、レアドロップがあるよ、にーちゃ」


 そう言ってライムは、地面に転がっていた剣を拾ってくる。


 ――はて? アイテムは自動分配されてアイテム欄に勝手に入ってくるものじゃないのか?


「レアアイテムだけは、その場にドロップする。『所有権を巡って仲良く喧嘩しなっ!』っていう、運営の粋な計らい――死ねばいいのに」


「こら、口が悪いぞライム」

「あはは……」


 何か運営に恨みでもあるのか? この子は……

 まぁ、ネトゲなんてしてたら、運営に文句の10や20は溜まるのが普通か……


「で……それがレアアイテムか」

「うん、そうだね、にーちゃ」



【ジャガリアンソード】


:片手剣

:植物系のモンスターに特効。

:攻撃力 32

:必要STR 16


「そこそこ強いんじゃないか?」


 確か、店売りのロングソードが攻撃力26ぐらいだったし、それよりは強い筈だ。植物系に特効まで付いているし――


「だけどね……にーちゃ」

「ああ、うん……」


 備考:イモっぽい。


 なんて言うんだろうこれ……こう、ちょっとシンプルすぎるというか、妙に丸みを帯びているというか……


「魔○陣グ○グ○の作者に、なんの変哲もないロングソードを描いて貰ったら、こんなふうになりそう……」


「おいこら、やめろ」


 いいじゃんグ○グ○。

 キ○キ○オヤジとギップ○ャー。カマドウマと尻から出る魔法しか覚えてないけど。

 後、父親から貰った割れ兜。


「じゃ、にーちゃ使う?」

「あ、いや……ほら、マイテも剣は使うだろうし?」


「あ、いえ……イモっぽいのはちょっと……」


 おいこら、マイテさん。あんた装備出来るアイテムが無いって……贅沢言える立場じゃ無かったろ?


「ネタ武器はネトゲの華。冷凍マグロを振り回す大剣使いもいるよ、にーちゃ」


 ぐいっぐいっと迫ってくる妹様。何が彼女をここまで動かすのだろう……


「いや、ネタにするにも微妙っていうかさぁーっ!? ネタに走ったけどイマイチ勢いが足りなくてダダすべり感ハンパ無いっていうかさぁーっ!! ほ、ほらマイテ。植物系に特効だぞ? 後々の為に取っておいても――」


「植物系の敵は、β当時でモグモグ男爵ぐらいだよ、にーちゃ。その先になるとこの剣じゃ弱すぎる」


「完っ全に無駄能力じゃねーか!? 嫌がらせか!? 運営ぃ!」


「さあ、っさぁ! にーちゃ! 序盤では割と強いレア剣だよ! さぁ!」


「…………」



 “brand-new World”において――僕の初レアは、イモっぽい剣でした……






 ―― …… ―― …… ―― …… ――





 しばらくオオリクガメ狩りを続け、マイテの盾と鎧を作るのに充分な量の素材が集まった頃だった。


 ピロン! という音と共に、視界の隅に四角いアイコンが表示される。


「お、メールか」

「なに? にーちゃ。知り合いできたの?」


 開いてみると、送信元はハヤトくんの姉で、生産職プレイヤーのリンカさんだった。


「ああ、市場でちょっとな。頼んでおいた服が出来たらしい」


「それじゃ、もう戻ろっか? マイテの防具も作れるだろうし」


「はい、これでなんとか、みんなについていけますぅ……」


 街に戻って冒険者ギルドに寄り、クエストアイテムのモグモグ男爵のしっぽを納品。

 それからマイテは早速、知り合いの防具職人に盾と鎧を注文しに行くという話だ。

 去り際まで、何度も礼を言われた。良い防具が出来るといいな、マイテ。


「にーちゃは、どんな服を作って貰ったの?」


「さぁ? お任せだしな……アンクレッドディアーの皮で作るとしか聞いていない」


「そか」


 兄妹並んで市場街を進む。

 リンカさんは朝と同じ場所で露店を開いていた。

 僕の姿を見つけたリンカさんは、こちらに向かって大きく手を振る。


「おー、来た来た。――……ん?」


 リンカさんは僕が近付いた瞬間に、怪訝な顔をする――


「……っぶ!?」


 あれぇ? 何故か噴き出されたぞ? そんなに僕の恰好はツボなのか……? 再度吹き出すほどなのか?


「悪化……! 悪化してる……っ! なんで朝から悪化してんの……!? 普通、良い武器買ってマシな恰好になるモンじゃないのッ……!?」


 ……ああ、そういやショートソードからイモっぽい剣に変更したんだった。

 鞘の上からでも、シンプルすぎるデザインが伝わってしまうんだよなぁ……この剣。


 そのうえ何が腹立たしいかと言うと、地味に強いんだわ、この剣……少なくとも、普通のロングソードと買い換える気が無くなるぐらいには……


「い、厳つい顔なのに……オモチャみたいな剣って……! パーティグッズのソフビみたいな剣って……!」


 おう……笑うがいいさ。もう諦めた。なんだか無我の境地まで達しそうな感じだわ……


「それをなんとかする為に、あんたに服を頼んだんだがなぁ? 出来てるんだろ?」


「あ、ああ。出来てるよ。お代は――っぷ! 後でいいから! 早く着替えとくれ!」


 未だに肩を震わすリンカさんに手渡された赤い服をアイテムストレージに入れると、早速装備の変更をする。


 布の服がキラリと光ったと思ったら、僕の身体は赤い服に纏われていた――


「おぉ」

「……へぇ」

「ふむぅ」


 赤いロングコートの様な服で、所々に黒っぽいリトルビッツウルフの革が使われている。

 特に肩についたファーのようなリトルビッツウルフの毛がアクセントになって、ちょっとワイルドさが出ており、顔の傷に合っているかと思う。

 赤とはいえ、落ち着いた感じのダークレッドなので、悪目立ちすることも無さそうだ。


「この時期にロングコートってのはどうかと思うが……他は気に入ったよ。ありがとう」


「リアルじゃ夏だしね。逆にそういうモンが作りたくなるのさ。2000Eでいいかい?」


「おう、サンキューな」


 たぶんかなりの割安だろう2000Eを渡す。


「なんだか、髪の毛をツンツンにして、剣より銃を持ったほうが似合いそうだね、にーちゃ」


 ……だからなんで君は版権物に流れるの? そりゃ、あの人間台風も全身傷だらけでしたが。


「……ところで、にーちゃ。この人が知り合いになった服屋さん?」


「ん? ああ、そうだが?」


「美人ですね」

「あ、ああ、うん……」

「ばいんばいんですね」

「ま、まあな……」

「たゆんたゆんですね」

「何が言いたい?」


「おや? そっちが例の妹ちゃんかい?」


 僕を責めるように詰め寄ってきていたライムが、キッ! っとリンカさんに向き直る。


「はいムッツリでロリコンでシスコンで貧乳好きのユーシの妹で恋人で内縁の妻のライムですよろしくお願いします」


 ノーブレスで何言ってんの? この子……


「……ということで、妹のライムだ。よろしくしてやってくれ」


「あっは、お兄ちゃん大好きのライムちゃんね? 分かったわ」


「今はハヤトは居ないんだな?」


「ええ、朝はちょっと手伝わせたけど、今頃仲間のパーティで狩りでもしてるんじゃないかねぇ?」


 ふーん? そんなにお互いで干渉はしないか。まぁ、普通の姉弟はそんなもんだろうな。


「にーちゃ、ハヤトって?」


「ああ、昨日知り合った子でなリンカさんの弟だ」


「男……?」

「だよ」


 幼い顔つきはしていたが、確実に男の子ではあった。


 …………


「かわいい?」

「お……おう」


 なんだか人懐っこい小動物みたいで可愛いやつだった。


 …………


「男装女子ってセンは――」

「ねーよ馬鹿……」


 普通に男だろう。そこのリンカさんが弟だって言ってたしな。


 …………


「もしかして……私の妹という立場を揺るがそうとする、弟というライバル的な存在に――」

「ならんならん」


 お持ち帰りしたいとは思ったが、まぁ半分以上冗談だ。

 …………


「考え直してっ……! にーちゃ! いくら可愛くても、その子には付いて(・・・)るんだよっ!? 妹の方が良いじゃない!! 妹だったら付いて(・・・)ないんだから!」


「お前の暴走癖は、そろそろマジに治したほうがいいと思うんだ」


「あっはは!」


「っと……」


 よく考えてみたら、ここは市場で、リンカの店の真ん前だった。営業妨害もいいとこだ。


「すまん、邪魔したな。服気に入ったよサンキュ。また頼むよ」


「あっは、可愛い妹ちゃんじゃないか。アンタと良い仲になったら、その娘が妹になるってことか……それも悪くないかもね?」


「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス――――」


「リンカも煽んなっ!! ほら! 行くぞライム!」


 口から呪詛を吐き出す妹様を引きずって、リンカの店を後にする。

 駄目だこいつら……会わせちゃいけない人種だったのかも知れない……


「にーちゃ、離して、アイツ殺せない」

「そもそもPKできねーから、このゲーム」



 妹を引きずりながら遠ざかっていく僕たちにリンカがなにやら口を開いていた。たぶん、別れの挨拶でも言ってくれたのだろう。



――――


「アンタ、妹ちゃんの前では、表情も口調も柔らかいんだねぇ」

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