プロローグ ~じょーじょーゆーじょー~
始まりました本編です。
かつて、こんな診断を聞いたことがあるだろうか……もしかしたら、初めて聞いたかもしれないが、それでも聞いてくれると助かる。
例えば、ツンツンしている彼女だが、二人きりになると急にデレデレしてくるとか。
例えば、本当は面倒を見たいのに性格のせいでなかなか言い出せないとか。
例えば、ネットワーク上ではそこまで会話をしないのに面と向かってはものすごく会話をしてくるとか。
そういう人、身近にいると思うんだ。
おめでとう、当てはまった君たちは『ツンデレ派』の人間だ。
『ツンデレ』それは数あるヒロインポジションの中でも一番主人公の事を思ってくれている存在の事。
「勘違いしないでよね。あんたの為じゃないんだから」というのが口癖でツンツン丸出しだが、いざという時は「あんたは駄目駄目だけどいいところもあるじゃない。」とか言って主人公にデレる。そういう所に数多ある男たちは萌えるのである。
ん?では当てはまらなかった人たちは何だって?まあまあ、そう焦らせないでよ。準備というのは大切だからね。じゃあ、もう一つだけ診断してみようか。
例えば、彼女がものすごく、自分のことを知りたがっているとか。
例えば、常に一緒にいたいとか。
例えば、表現としてはあまり適切ではないけど、殺してでも自分のそばに置きたいとか。
そういう人、身近にいると思うんだ。
おめでとう、当てはまった人は『ヤンデレ派』の人間だ。
『ヤンデレ』それは数ある幼なじみポジションの中でも一番主人公の事を思ってくれている存在の事。
「君はぜーんぶ、僕のものだから。拒否権なんかないよ。」的な言葉が口癖で主人公がほかの女の子と会話をしているだけで異端審問が始まるレベル。
基本的にはボクっ娘が多いというのが調査で分かっている。そういう所に数多ある男たちは萌えるのである。
さてと、僕はもう行かないと……君たちとの診断。楽しかったよ。
「はーるーまーくん。朝だよー。」
僕を目覚める声が聞こえる。というかまだ、八時くらいだろう……四月の入学式は明日のはずなのにこんな朝早くから僕を起こすのは一人しかいない……はずだ。
「あのな、こんな朝早くからうちに来ているんじゃないよ。美奈子。」
「晴馬くんは、いつでもボクに甘えていいよ。ほら、目覚めのキスをしましょうか。」
「やれやれ、甘いな。美奈子。僕をずっと子供のままだと思うなよ。」
美奈子が僕に構うまいとおはようのキスをしようと迫ってくる。僕も対抗したが美奈子の圧倒的な圧力に勝てない。
お前握力強いって。痛いって。
だが、済んでのところで理恵からのストップがかかった。
「はい、そこまで。晴馬は私の彼氏なんだからあんまり勝手なことをしないこと。いいね。」
ストップがかかって拗ねた美奈子は「ぶー」と文句らしき態度をとって部屋から出て行く。僕はストップをかけた理恵に言う。
「理恵、お前は良いのか?こう言っちゃアレだが、僕は理恵の彼氏だ。美奈子のあれを辞めさせない事にはことは始まらないだろ。」
「なっ……なに。バッカじゃないの!朝から彼氏とか言ってんのよ。うーわキモッ、べっ、別にあんたのためにやったんじゃないのよ。」
付け加えに「ふん」と置き文句を言い、理恵も部屋から出て行く。
「やれやれ、こんな休日がいつもなんて僕はあんまり信じたくはないんだけどね。」
いきなりこんなことを書き始めるのもあれだが自己紹介をしよう。
僕こと石倉 晴馬は小学校、中学校とボッチで過ごした人間だ。友達なんてもちろんいない。というか友達を不要としている人間だ。背丈も特別高いわけでもなければ低いわけでもない。いたって普通の男子高校生だ。それ以上に説明することは無い。
だが、そんな僕にも転機があった。中学三年生、卒業の時になんと告白された。
それも当時学校で学園のアイドルといわれている釘瀬 理恵だ。
理恵は黒髪ロングで、身長は確か僕よりも少し小さい。その容姿は誰にも愛想をつかさない、言いたいことははっきりという、ギャルゲーやエロゲーでよく見るような完璧な美少女キャラ。そのため、中学一年生のころからモテていた。当然だろうな。登校二日目にしてイケメン男子生徒二人から告白されるという偉業を成し遂げたやつだが、理恵は強度の男性恐怖症なのか決して男子生徒に心を開くことはなかった。(中学のクラスの男子生徒調べによる)
そんな理恵の中学の偉業はこれだけではなかった。
ある日、登校してきた理恵は下駄箱に入っている数十枚のラブレターをご丁寧に読まずに教室のゴミ箱にほおり投げるということをしたり、クリスマス、ホワイトデー、誕生日、バレンタインと事あるごと理恵に関わる事なら男子生徒は全力を注いで猛アピールした。
だが、クリスマスには半年前から断りの電話を入れていたそうで、ホワイトデーには学校を欠席、誕生日は女子たち数十名を使ってバリケード的なものを作る。バレンタインにいたっては基本的には女子から上げるものだがなんと男子からホワイトデーの先出しとか言って山のようなチョコレートを抱えているのを一度見たことがある。
まあ、想像するだけで恐ろしい奴で、やれやれ、どこかのお嬢様かと言いたいくらいだ。(同じくクラスの男子生徒調べによる)
そんな奴から告白されることになるとは正直、僕も思ってなかった。
最初はメチャクチャ嬉しかった。だって、中学ボッチの奴に告白してくるとかどんなイベントだよ。好感度上げてないのに急に来るこのサプライズは騙されているのかと感じるくらいだ。
だが、僕にはもう一人、理恵の告白を受けるうえで気を付けておかなくてはいけない存在の人物がいる。それが、僕の幼なじみでさっきまでの襲撃者でもある白井 美奈子という女子生徒だ。
白井 美奈子は理恵ほど男子生徒に人気はなかったが、黒髪のショートカットで身長は理恵と同じくらい。少し控えめでおとなしい。そのため、一部の男子生徒によると隠れモテキャラとして理恵に敗れた連中が美奈子に告白したりしていた。
だが、美奈子の方は理恵と違ってあっさりしていた。それもそうだ、「ごめんなさい。」と一言いうだけで告白した男子生徒は納得がいっていたらしい。理由こそ教えてもらえなかったが、告白したやつは皆、口を揃えて「あれはダメだ。」と言う。
僕はそういうことに関しては一切の関わりがなかったので確かめようがなかった。
そんな美奈子だが、小学生のころいじめにあっていた。
幼いころからの弱弱しい見た目とボクっ娘。ただそれだけで男子生徒からはいじめの対象、女子生徒からは無視、これが小学校生活の六年間続いていた。まぁ、ただそれだけでいじめが発生するとか正直、バカげている。
僕はそのころから精神状態的に人と関わりたくない、もし、人に関わったら後悔すると思い、一人で過ごしていた。いわゆるボッチである。
悪いか?別にいいだろう。それが僕の生き方なんだから。
コホン、話を戻すと、僕は逆にそういう行動をする連中が好きではなかった。詳しく言えばそういうやつらの人間心理・心境がわからなかった。そもそも、小学生にそんなことなんてわかるわけがないだが、どうしても分かりたかった。
でも、分かることはできなかった。というよりも、自分の中でむかむかしたものが出てきたりした。だったらと当時、いじめられていた美奈子に「おい、お前さ。いじめられたくなかったら僕のところに来い。僕は人と関わることはしない人だから。僕と一緒にいるならいじめを出来なくさせる。」と言って、連中から距離を置くことができた。
次の日からは美奈子と僕は一緒に行動することになった。美奈子に構おうとする男子は近くにいる僕の眼を見た瞬間、美奈子も同類と感じたのか美奈子によることはなかった。
女子の方に至ってはそもそもの話だ。無視なんてものはこちら側が話しかけなければ成立しないものだ。
だが、一番の心配は男子と女子が違う授業を受ける『体育』だ。
僕は先生に特別に体育の日記帳を授業があったときにつけるという約束の元、美奈子と一緒に授業を受けることを許してもらった。そんなことがあったおかげか、中学校に入ってからもそういう関係が続き、一部では『石倉と白井が付き合っている説』までが浮上した。
噂とかは正直どうでもよかったが、聞かれるときもあった。もちろん、全否定だ。確かに美奈子の事は好きだけど、彼女にしたいとか言うそういうものじゃない。ただ、ほっとけないだけだ。理恵的に言うと『べ、別に彼女にしたいとかそういうのじゃないんだからね。』というツンデレができる。僕ってまさかツンデレなのか?
やれやれ、別にどうでもいいがな。
と、とにかく話を戻そう、僕は理恵から告白された。それも二人きりとかじゃなくて大勢の目の前で。勿論、その場には美奈子もいたし、何より僕の親もいたし、理恵や美奈子のお母さんもいた。最初、周りからの男子は「何であいつが?」というような眼で僕を見ていた。
えっ、何でわかるかって?それは、小学、中学とボッチで過ごした僕だから分かることで人と関わることをしないとその人の目を見るだけで大体言っていることが分かってしまうのだ。我ながらつまらんスキルだが利用できるものは利用しないとな。
「何で僕なのかな?他にもいろいろな人がいるじゃないか。」
僕は周囲からの視線に耐えきることができず、そう言った。そしたら理恵は
「あんたじゃないとだめなのよ。私が好きになったのは、あんたなのよ。」
と上目遣い、ツンデレ萌え要素全開で僕に迫ってきた。僕は理恵の萌え要素に勝てることができず、つい衝動でOKしてしまった。
やれやれ、当時のあれには勝てるわけがないね。その時の、美奈子の表情は間違いなく『こいつ、後で殺す』的な表情をしていたのを覚えている。まぁ、死ななかったことだけが幸いだけどね。
そして、現在に至る。
「やれやれ、僕も高校生になってから変わると思っていたけど、まさか三人とも同じ高校を受けると思ってなかったし、何かの偶然かと思っていたけどまさか、美奈子の方は意図的に仕組んだらしいし、理恵に至ってはどこからか情報が漏れたのか、僕のお母さんから僕がここに行くっていうのを偶然聞いたのか知らないけど同じ高校になったし……このもどかしい関係を何とかしないといけないのかもしれないな……。」
僕はそういって自分の部屋をでてリビングに行くと理恵と美奈子と僕の妹の優実が家事を手伝っている。
「うーっす。おはよ。」
「おはよ。お兄ちゃん。」
僕は優実に一言だけいうと自分の席に座った。
右隣には僕の彼女の釘瀬理恵、左隣には僕の幼馴染みの白井美奈子、そして向かいには僕の妹という僕にとっては見慣れたポジションだ。
はっきり言って意味が分からん。僕になんで妹がいるかって?いやいや、そこじゃなくてなんで僕がこの二人と一緒に朝ご飯を食べているということがだよ。
石倉 優実、僕の妹。
背丈は理恵と美奈子より少し大きく、髪形はボーイッシュ的な感じ……背丈については僕ほどではないが、女子としては結構高い。そして、何より僕が一番愛しているといってもいいくらいの人物である。
趣味は……正直、しらん。勉強は結構できるし、いや、あまりできないな。
うーん、家庭的な一面とか?というか、妹の紹介をする兄ってメチャクチャ恥ずかしいのだが妹のいない人たちのためにも紹介せざるを得ない。
とにかく、僕は基本、妹と二人で朝ご飯を食べる。
両親はジャーナリストをしていて、常に忙しく僕や優実が寝ている時に帰宅、そして早朝から出勤という社畜を味わっている。時には海外に行き一か月くらい帰ってこない時もある。どーも毎日ご苦労さん(棒)
そのため、僕と優実はゆっくりと今を過ごしている訳なのだが……。
「ちょっと、くっつきすぎ、離れなさいよ。美奈子。」
「そんなことないよ。理恵ちゃんこそ晴馬くんに近いよ。少し離れてよ。」
「わ、私は別にいいのよ。一応、彼女なんだし?」
見ての通り、理恵と美奈子がほとんど毎日うちに来ている状況。
おかしくね?あと、一応って何だ一応って…僕、傷つくぞ…いや、十分この空間だけでもいろいろな男子生徒に白い目で見られているのだろうけど…。
「そんなことってないよ。そういうものは晴馬くんが決めるんだよ。」
「そうよね、晴馬、どっちがいい?」
「お前ら、二人とも家に帰って飯食ってからうちに来いよ…。」
僕はそういいながら頼みの綱である妹に視線を送った。頼んだぜ、妹よ。
優実はちらりと僕を見ると僕と視線で会話をし始めた。
ちなみに後ろは会話の中心である僕を置き去りにして言い争いをしている。兄妹ってもんは、非常事態にこういう事ができるようになるのだ。
『頼む……助けてくれ。』
『無理。そんなことになったのはお兄ちゃんが原因じゃん。』
『そんなこと言ったって……そ、そうだ。お前がこの前、雑誌で見ていたショートケーキ買ってきてやるから…な。』
『そんなものでつられるほどあたしは甘くないよ。ショートケーキだけに。』
『ダジャレを言ってる場合か、少しは何とかしようとは思わないのか。』
『あたしはお兄ちゃんがどうなろうか知らないもん。』
『そこを何とか……。』
『ふんだ、知らないもんね。』
だめだ、完全に知らん顔をしている。くっ…どうするか。
そう思った時だった。
「お兄ちゃん!味噌汁こぼしてる!」
えっ…。
僕はお椀を見っている左手見る。すると、びちゃびちゃと零れているのが分かる。
「わぁぁぁぁ!!!」
その声に言い争いをしていた二人も動きをピタリとやめ、声の主である我が妹に全員が視線を向けた。
「ゆ、優実。はやくティッシュを。」
「分かってるよ。理恵さん、このタオル濡らしてきて。美奈子さんは食器をずらして。」
「う、うん。」
「分かった。」
優実はキッチンからペーパーふきんを持ってくる。
「お兄ちゃん、拭いて。」
「あいよ。」
僕はもらったふきんでこぼした味噌汁を拭く。
「優実ちゃん、これ。」
洗面所でタオルを濡らしていた理恵が戻って優実に渡す。
「サンキュー、ほら、お兄ちゃん、どいて。」
優実は僕の有無を言わずにタオルであたり一面を掃除する。
まったく、手際のいい妹をもってお兄ちゃんはうれしいよ。
あらかた掃除が終わったところで優実が僕に言う。
「お兄ちゃんはそんなんだから二人に迷惑をかけているんでしょ。」
「はい、すみません。」
「それと、理恵さん。」
「は、はいっ。」
「お兄ちゃんはこういう人間なので学校でも迷惑をかけるかもだけどいろいろ教えてあげてね。」
おい、何だ。その何にも分かってない赤子のような存在の人間は…あっ、僕か。
「分かりました。優実ちゃんの為にもこいつを改心させるわ。」
「前言撤回、お兄ちゃんをこいつ呼ばわりしないで。」
「晴馬くんをこいつとか呼んじゃダメよ。」
「アッハイ。」
会話の通りだが、優実は人間関係ができない僕を何とかしようとこれまで努力をしてきた。だが、すべて僕に届くはずがなく、だったらいっそそのままでもいいかなと思い始めたころに僕が告白をされたのだ。
そう考えると優実はただのブラコンとかいう奴なのかもしれない。やれやれ、今後の妹の将来が急に心配になってきたぞ、お兄ちゃん。
妹はそんな僕の心配を無視して、今度は美奈子の方を向いて言った。
「美奈子ちゃん、小学校からお兄ちゃんをよく見ててくれてありがとう。でも、もう大丈夫だと思うよ。」
「そ、そんなぁ。高校に入って理恵ちゃんが何かしでかさないかボクは心配しているのに…。」
「よろしい、ならば、許してやろう。」
「ちょっと、勝手に決めないでよ。」
僕の意志はないんですかね……。あと、妹、年上に上から目線はやめなさい。
「ボクはただ、晴馬くんと一緒にこの時を過ごせるだけでいいのに……。」
唐突に何を言い出すんだこの小娘は。
「わ、私だって晴馬といればそれだけでいいもん。」
なんで張り合っているんですかね、というかお前が張り合ったところで優実に勝てるわけがない。
「ふむふむ、二人の言いたいことはよくわかったよ。今の関係を許そうじゃないか。ねえ、お兄ちゃん。」
妹よ、重要なところだけお兄ちゃんに振るんじゃないぞ。
「やれやれ、ま、いいか。この関係がずっと続いても…」
「「やったーーー」」
僕の言葉に二人が同時に喜んでハイタッチしている。
あれ?君たちさっきまで喧嘩してなかったっけ?
そんな僕の考えとは裏腹にいえーいいえーいとハイタッチをし続けているお二人さんがいるわけで…。
え?ああ、はいはい、いえーいいえーい。
「とりあえず、遅くなったけど、残りの朝飯を食べるぞ。いただきます。」
「「「いただきます。」」」
朝飯はご飯に目玉焼きに味噌汁とまあ、一般的な家庭料理だ。まぁ、味噌汁はこぼしちゃったから僕のはないけどね。
「そうそう、晴馬くんに理恵ちゃん、入学式は明日だけど準備はできているのかな?」
またいきなり、何を言い出すんだよこの女子高生は。あ、でもまだ入学してないから女子高生じゃないか。
「いや、まったくやってないけど。っていうか僕より自分の心配をしたらどうなんだ。僕はもとよりお前たちは結構あれだろ、その……なんて言うか、モテるからさ。いろいろ大変じゃないのか?」
「「うん?そんな心配は不要だよ。」」
なに二人そろって同じ言葉を言っているんですかね?
「だって、私はもう晴馬っていう彼氏がいるんだし何かあったら晴馬を盾にするわよ。」
人を武器扱いしないでくれません?それに僕はあんまり使い物にはならないぞ。
「ボクも大丈夫、晴馬くんがまた助けてくれるよ。」
人を都合のいいヒーローみたいにしないでくれません?それに僕は毎回助けるほどお人よしじゃないぞ。
「まあ、二人がそう言っているならいいか。」
僕はこの話を早くやめさせようとご飯を速攻で食べ終え、「ごちそうさま。お前たちも早く自分の家に帰れよ。」と言って自分の部屋へと戻った。しかし、戻ることなく、二人は僕の部屋へとやってくる、僕はそれを見る。
「いい加減、お前ら帰れよ!!!!」
今日も、僕の家で叫ぶのであった。
この物語はツンデレヒロインとヤンデレ幼なじみに囲まれた一人の少年の話である。
あるときはヒロインに泣きつき、ある時は幼なじみに修羅場が出来たり、と色々あるが、まずはその一ページをご覧いただいた。
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