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ツンデレなメインヒロインとヤンデレな幼なじみはお好きですか?  作者: 芳香サクト
第一章『ツンデレな彼女はヤンデレな幼なじみに牙を剥かない…』
19/83

エピローグ ~僕は世界の中心で愛を叫ぶ~

「っと、それより下にいる二人はどうした?」


 僕はベッドから立ち上がり、理恵に聞く。

 理恵はコホンと一つして表情をもとに戻し、手を腰に付けて言い始める。


「えっと……そうね、私の気が付いたときにはエミリーちゃんはいなくなっていて、優実ちゃんは隣でグースカ寝ていたわよ。何で私たち眠っちゃっていたのかしら……。」


 ……そうだな、美奈子による睡眠薬が原因というのは言わないでおこうか。なんか変に誤解を招かれるのも嫌だし。それに協力していたというのは多分、美奈子が来るまでの間をひきつけてね。とでも言っていたのだろう。その後のことは何も聞かされていないという感じか。エミリーはおそらく美奈子に連れていかれて優実の部屋で眠っているだろう。それにしても、美奈子はなぜ睡眠薬なんて言うものを持っていた?僕は美奈子とよく話すし、家にもお邪魔したこともあるけどそんなものを見た覚えがない。睡眠薬は単なる思い込みでできるとも聞いたことあるけど、実際はどうなのか分からない。あれからどのくらいの時間がたったのか、僕には判断することができないからだ。


 僕は万能じゃない、何でもは知らない。知っていることだけ覚えている。ただそれだけの高校生だ。


「さあ?多分、疲れていただけだ。特に何もないだろう。」


 僕の返答にじーと少し怪しげな目をして理恵が言う。


「そうかしら……なんだか物凄く嫌な予感がするの。これは私の気のせいかしら?」

「気のせいだろ。」


 むむ……今の言葉で嫌な予感までもっていくとは……ひょっとしたら物凄く勘のいいやつかもしれない。今後、失言には気を付けておこう。


「とりあえず、僕は優実を起こしに行ってくるよ。理恵はどうする?ここで待つか?」

「ううん、私も晴馬の後について行くよ。何かあったら嫌だし。」

「……。」


 今のセリフはデレとして受け取っていいのだな。


「分かった、はぐれないようにしっかりつかまっていろよ。」

「うん、頼りにしている。」


 僕の服の端っこにちょこんと理恵の手の感覚が伝わったがあえて言わないでおこうか。

 何だかものすごく疲れたけどこれでいいってことだよな。


「なぁ……。」


 僕は後ろに捕まっている理恵に話しかける。


「やめてよ、私、実はこういうのは恥ずかしくってできない人なのだから。晴馬にだけよ。」


 理恵から返答があったが再度、僕は尋ねる。


「なぁ………。」

「やめてってば。怖いものが苦手なのは知っているでしょ?」


 無論、初耳である。また一つ、理恵の苦手なものを知った。


「なぁ…………。」


 三回目である。いい加減、疲れてきた。


「やめてって……いってる。えっ?」

「お前なー」


 ここで息を吸い、少し大きな声で理恵に話しかける。


「ただ階段を降りているだけだろうか!!」

「だ、だって……怖いんだもん。」

「夜でもなんでもないし。お前、いつもどうやって降りているんだよ。」

「いつもは……こうやって手すりにつかまって……。」

「小学生か!」

「高所恐怖症だもん。」

「あ、そうなの?ごめん。」


 そうならそうと言ってくれればいいのに。なぜ僕がこんな突っ込みをしなくてはいけないのだ。他に、もっと適任がいるはず……いや、この状況だと誰もいないか。


「優実のところに行くだけだよ。怖かったら僕の部屋で待っていることはできないのか?」


 僕は怖くて足が震えている理恵に聞いた。


「ま、またあの道を行くの?……やだよ。」

「高所恐怖症は低いところから高いところもダメなのかよ。それでどうやって僕の部屋まで来ているんだよ。」

「気合い。」


 お前というやつは!!!気合と根性でどうにかなると思ったら大間違いだということを教えてやろうか!!ったく、しょうがない。


「分かったよ、じゃあ、絶対に動くんじゃねーぞ。すぐ行って帰ってくるから待っていろ。」

「う、うん。なるべく早くね。」


 もちろんそのつもりだ、だがその前に……。


「あのーですね、その、理恵さん?」

「何よ。とっとと行って来たら?」

「手、離してもらえますか?」

「ハッ、ちょっ、ちがっ。もう!」


 理恵はそういうと、おずおずと僕から手を離し、階段に座り込んだ。これでようやく移動できる。


「それじゃ、行ってくる。」


 僕は階段を下りた。辺りは薄暗くもう少しで日没という状況にいる。

 早くいってこないと……。


「よし、優実、エミリー、起きろー。」


 僕はリビングで寝ているはずの優実と優実の部屋で寝ているはずのエミリーを起こしに向かった。


「優実―、エミリー」


 僕は二度、そう呼びかけたが、二人は一向に反応がない。それどころかリビングに物音ひとつ聞こえてこないのだ。


「おかしい……ただ寝ているだけにしては妙に静かすぎる。」


 理恵は優実はグースカ寝ていたという。つまり、多少なりのいびきは聞こえていてもおかしくないのだ。

 何かあったか?

 僕は勇気を出してリビングの電気をつけた。


 パチン

 すると、目の前に白いものが僕の前に現れた。


「「わぁっ!!!」」


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 僕の悲鳴がリビングに響き渡った。


「ったく、これは一体どういうことだ!」


 今回の騒動というか、今回のオチ。

 それから数十分後に僕は正座されている優実、理恵、エミリー、美奈子に向かって言う。脅かしてきたのは優実とエミリーだということだ。しかも四人全員で僕を嵌めようとしていたらしい。はっきり言ってしまうと今まで僕以外の行動はすべて演技で嘘っぱちだ。

 もちろん、美奈子も睡眠薬なんてモノは用意していないし、理恵も高所恐怖症なんかじゃない。アレは僕を怖がらせるための演技の一つである。そもそも、おかしいと思ったよ。いっつもドカドカと僕の部屋に入ってくる理恵がその時だけ高所恐怖症とかありえないもん。

 この壮大な劇場の目的はエミリーと美奈子と理恵を仲良くさせること。

 僕に少しでも今自分に置かれている状況を確認させること。

 理恵と美奈子の僕に対する気持ちを確かめること。この三つだそうだ。

 そうなると、僕はとんだピエロを演じていたってワケか。何だろう、この敗北感は。


「ハル、ごめんね。」

「は、晴馬……ごめん。」

「ごめんねぇ~晴馬くん。」

「ごめんね。お兄ちゃん。」


 四人それぞれが謝ったのを確認した僕はため息をつくと特に気にせずにつぶやく。


「ああ、まったくだ。というかこんな壮大なことしなくてもよかったのに……。」

「「「え?」」」


 その言葉をほぼ同時に四人が反応をする。

 全く……お前らがコマを大きくしたせいで僕のコマが弱く見えるじゃないか。


「ったく、食器も片付けないで。何をするのかと思ったらそういうことか。別に色々こっちだって用意してあるから焦る必要なんてなかったのになぁ。」

「ん?お兄ちゃん。どういうこと?」


 優実が聞く、僕はそれに応えるように静かにモノを取り出した。


「ほれ、季節は早いけど花火を買ってきた。これで、少しは楽しもうぜ。今回のことは水に流してやるからさ。」


 僕の取り出した花火にいち早く食いついたのはエミリーだった。


「わーい、ニッポンの花火!私、一度見て見たかった。」

「それは良かった。ほら、お前らも外出てやるぞ。」


 僕の言葉に美奈子と優実もしぶしぶ頷く。


「はいはい。分かったよ。ほら、優実ちゃんも早く。」

「踊らされていたのはこっちだったのかもね。」


 三人が玄関まで行ったところで、理恵が僕の服を掴む。


「どうした?僕の顔になんかついているか?」

「いや、そうじゃなくて。少しじっとしていて。」

「?」


 そういうと理恵は僕の頬にキスをする。ちょっとびっくりしたが、幸い、エミリーが点火した花火のおかげで誰も見ていなかったようでほっと一安心している僕、それを見て理恵が言う。


「お詫びよ。」


 その言葉で理解をした僕は納得の表情を浮かべる。


「あー、そういうことね。」

「ほら、晴馬も。」

「はい?」

「………え?」

「………ん?」

「だからぁ、お返しのキスはないのって聞いているの!それくらいわかってよもう!」

「おまっ、声でけぇよ。」


 僕は震えるような目で撃ちあがっている花火を見る。すると、声に反応したのか獲物を見つけたような目をしている二人とそれを楽しそうに見つめる傍観者が一人いた。


「晴馬くん、それ、どういうこと?」

「お兄ちゃん。花火の時間って言ってなかった?」

「お、おう。そうだな。」

「おー、ハルと理恵はラブラブですねー。」

「ちょ、私と晴馬はまだそういう関係じゃ……。」

「話をややこしくするんじゃねぇ!」


 どうせこうなると思っていましたよ。ええ!


有罪(ギルティ)有罪(ギルティ)。」

「お、おい……美奈子?そのうつらうつらと思える、死神のような表情をいち早くやめろ。というか誰か止めろ。」

「ふへへ……お兄ちゃん。覚悟はいいかな。」

「お前らふざけるのはいい加減にしろよな。でぇいこうなったら仕方ない。理恵、逃げるぞ!」


 僕は理恵の腕をつかむ。


「う、うん。行こう。晴馬。」

「いってらっしゃ~い。」


 僕たちはそのまま、家を飛び出し、笑いながら逃げた。もちろん、二人もついてきたままだ。そして、走りながら理恵は言う。


「アハハ!面白いね。晴馬。」

「ああ、僕としては散々だけどな。」

「「待て――」」


 曲がり角を曲がった時に、理恵が僕に言う。


「ねぇ、晴馬。」

「ん?」


「だぁいすきっ!!」

「おうっ、僕もお前が大好きだぜ!理恵!」

「待てや。ゴラァ!!」


 僕たちは手をつなぎながら、追いかけてくる二人を必死に逃げ回った。


 これがツンデレな彼女とヤンデレな幼なじみの間か。ま、悪くないからいいかな。


 僕は愛する人の手をしっかりと握りしめながら、夜の住宅街を走った。もちろん、次の日、迷惑行動をしたという疑いはかけられたけどな。


 これは一人の少年が幸せとは何たるかを身を持ってしる物語はここで一旦終わりとしよう。しかし、初恋というものは余りにも初心なもので、確定した未来でも物語は続く。

 これはそのプロローグ。

 終わりなき恋の旅路はどこへと続いていくのやら……。


 それはまた別の物語。


 第一章 完

 今回の話で第一章は終了となります。後、この前確認したらアクセス数が六千を超えていました。こんなに見てもらえるなんて思ってもなかったのでとても嬉しいです。これからも頑張って行きますのでよろしくお願いします。毎度の事ながら誤字や評価、感想などお待ちしております。


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