{第七話}こっから先は本気だ
「行くわよ、私!」
そう言いながら、私は、レイピアを鞘から抜き放つ。
「進にばっか、頼るわけにはいかないもの!」
そう言うと、私はレイピアを振り上げ、モンスターにレイピアを突き刺した。
「グギャァ!?」
と、モンスターが飛び上がる。
「クッ!浅い、もっと!」
そう言いながら、私はレイピアをさらに奥に突き刺す。だが、
「グルル。」
モンスターがそう、低くうなると、私を掴みあげる。
「ちょっ!えぇ!?」
そして、モンスターが私を見ると────。
「フム、女子か。」
しゃべった。
「え、えぇぇぇーー!?!?しゃ、しゃべるのぉぉーー!?」
私は懸命にもがくがモンスターの手はビクともしない。私のステータスよりも、強い!?
「魔王、捕まえました。」
「は!?え、魔王!?ちょっ、何言ってるのよ!!」
私には、モンスターの言っていることがよくわからない。・・・魔王?
「フム、確かもう1人いたはずだが・・・。」
青年は、凛を手で捕まえているモンスターと、テレパシーを行っていた。これは、魔族特有の魔法。魔属性のモンスターと、意識を共有し自分の支配下に置く、魔法だ。
「どうしますか?」
モンスターが、魔王に聞く。
「こちらにワザワザ向かってくるのだから、それほどの力の持ち主だと思ったんだがな・・・。」
「まぁ良い。生かしておく必要も無いだろう。その女は殺せ。」
「御意。」
そう言うと、モンスターが手に力を込めだした。
「ちょ、い、痛!」
私を掴む手に力が加わり、徐々に私の体に圧力がかかっていく。
「こんなやつに!ウッ!」
声を張るが、すぐに痛みに声が出せなくなる。これでは、腕が動かせず、レイピアを振り脱出することもできない。ヤダ、ウソ。私、こんなところで死ぬの?嫌だ!そんなの嫌だ!私の頭の中が、そんな思考でいっぱいになる。ヤダよ、ねえ、助けて、
「進っ!!」
私は、力いっぱい叫んだ。すると、不意に圧力が無くなった。
「え・・・?」
私は、地表に落下していく。そんな私を、ガシッ、と力強く抱く人がいた。見ると、
「進。」
進だった。
「進。」
心の底から安心したような顔で、凛が俺の名前を呼ぶ。
「すまない、待たせたな。」
「ううん、大丈夫。」
凛が、フルフルと頭を横に振る。
「なら、ここで大人しくしててくれ。」
俺はそう言うと、優しく凛を地面に立たせた。
「うん、気を付けてね。」
「あぁ。」
俺は凛に答え、俺が凛を助け出すために、斬った右腕の肘から先が無いモンスターをにらみつける。
「てめえ、よくも凛を!」
そう言うと俺は、先ほどまで凛を握りしめていたモンスターに駆けて行った。
「やはり!」
と、魔王である青年が声を上げる。その青年の目は、どこか輝いていた。
「どうしますか?」
と言う、指示を仰ぐモンスターの声が、頭蓋内に届く。
「手加減は無用だ、殺せ。」
青年は、静かに言った。別に、死、と言う恐怖におびえながら言ったのではない。進に情けをかけたわけでもない。ただ、何かはわからないが、青年の背筋に悪寒が走っていたからだ。だが、青年は頭を振り、そのような思考を取り払うと、進とモンスターの戦闘に、気を集中した。
「斬!」
と言いながら、俺はモンスターの左腕を腕を斬りおとした。俺の脳裏に、凛の若干目を潤ませた顔が蘇る。凛は少し直情的で、俺の事になると周りが見えなくなるが、それでも俺の大切な幼馴染だ。その凛を泣かせたんだ。
「てめえら、わかってんだよな?。」
「グルル。」
俺の怒りを察知したのか、モンスターたちが警戒したように、低くうなる。
「こっから先は本気だ。」
そう言うと、俺は体を動かしやすくするために、背中に装備していた青龍偃月刀を地面に置く。
ズドォォォン
と、青龍偃月刀のあまりの重さに、地面に亀裂が走る。
「覚悟はできてるな?」
そう言いながら、俺は腰に提げた鞘から、2本の剣をすらりと抜く。モンスターたちの数は5。俺はそう認識すると、モンスターたちへ詰め寄った。一瞬で、先ほどまで凛を拘束していたモンスターに迫る。
「グガァ!」
そう言い、モンスターが俺をつぶそうと、振り上げた拳を俺に振り下ろす。
「全てが遅く感じるな。」
そう言うと、俺は高く飛び上がり、その拳を避ける。そして、モンスターの急所に剣を突き刺す。俺の計測不能な筋力をもって、無理やり剣を押し込む。そして、俺が剣を抜き、モンスターから離れると、モンスターが力尽きたように、その場に倒れた。
「あと、4。」