{第六話}フ、救世主、サルバドールとやらの力、見させてもらおうか。
そしてその後、俺が他のクラスメートたちを、先ほど俺たちがいた村に案内しようとしたが、そうすると、何故か凛が不機嫌になるので、俺は凛の機嫌を取りながら、まりちゃんに道を案内していた。凛を見ると、何故か俺に腕を巻き付けたまま、どこかを見つめている。すると、そんな様子を見たクラスの男子たちが、「ガルルル。」とでも言いそうに、俺を睨みつけてきたが、凛がそいつらを逆に睨み返し、クラスの男子たちは、「すいません。」とでも言いそうに、気まずそうな表情をしながら、目をそらすのだった。
「フ、いい気味だ。」
────なんて歪んだ優越感は、俺の頭の中に発生するはずは無く、ただ、どうしたんだ?と言う疑問が、俺の頭の中の思考を占めるのだった。
やっと、俺はまりちゃんに説明をし終えた。
「行きましょう。」
凛がそう言うと、やっと俺の腕から手を離し、馬にまたがった。俺も馬にまたがると、俺がイラシュールから貰った、隣の村への道筋を描いた地図に従い、馬で駆けて行った。
「本当に、何やってんのよ、真崎。」
と、クラスメートの女子の1人がそう言った。
「・・・放っといてくれ。」
真崎は、溢れ出る悲しそうなオーラを隠すことも無く、そう言った。
「全く、変な事言うから・・・。」
と、煌が言った。それを聞いて、真崎がその場に崩れ落ちる。やめてあげて欲しい、真崎の残りライフはもう既に0だ。
「それにしても、進君、強かったねえ~。」
と、クラスの女子の中では、一番進に強く当たっていた女子が言う。
「あぁ。」
と、勤が答える。その時、先生が声を上げた。
「みなさ~ん、行きますよ~。」
そう言って、先生が歩いていく。その先生に、クラスメートたちが付いていく。彼らと凛たちの溝は、・・・埋まらなさそうだ。
「それにしても。」
俺は、上を見上げながら言った。空を見ようとしたのだが、生い茂っている木がそれを阻んでいる。今が何時ごろなのか、それを判断する術を、今俺は何も持ち合わせていなかった。
「結局、あいつらとは違う道を歩むことになったな・・・。」
俺は一人呟く。今俺が心配しているのは、あいつらの生死だ。だが、まぁ良いか。と、俺はその考えを意識外に押し出し、もう一回地図を見た。
「進、あとどれくらい?」
と、凛が俺に聞いてきた。
「ん~、この調子だと、あと1時間ってところだ。」
地図を渡されたが、曲がりくねって歩くような道は無く、平凡に馬に揺られていれば着く、そんな道だ。
「な~んか、旅って感じがしないわね~。」
と、凛が言った。
「あ~ぁ、どこかにこう、強大なモンスターとかいないのかしらぁ。」
と、凛が気だるげそうに言った。ただ、馬に揺られているのが退屈なのだろう。その時、俺の意識に何かが引っかかった。
「シッ。」
と、凛に向かって言う。
「何かがいる。さっき俺たちが戦ったゴブリンなど、比にならないものだ。」
それを聞いて、凛が顔を固くする。
「どうする?道を変えるか?」
俺が半分笑いながら聞いた。すると、
「まっさかぁ、戦うわよ。」
「・・・・・・決まりだな。」
俺がニッ、と笑う。
「なら、最初は俺は手を出さない。その代わり、少しでも危険だと判断したら、すぐさま俺も戦闘に加わるからな。」
「えぇ、わかったわ。」
凛が答える。そして、俺に質問してきた。
「進、数は?」
「数は・・・5だ。」
「フン、私なら楽勝ね。」
「油断はするな、凛。命は、一つしかないんだからな。」
「えぇ、・・・わかってるわ。」
凛が、緊張した面持ちで答える。
「大丈夫だ、自分の力を信じろ。そうすれば、死ぬことは無い。」
俺だっているしな、と付け加える。
そして、俺たちはモンスターたちに馬を向かわせた。
「見えた。」
凛がつぶやいた。
「良いか、くれぐれも無茶はするなよ。」
俺が言うと、
「大丈夫よ。進。」
と、凛。
「あぁ、そうだな。」
俺は、凛の頼もしさにほほ笑んだ。
「行ってくるわ。」
凛が、覚悟を決めた声で言う。あぁ。
「行ってこい。」
俺がそう言うと、凛は馬から飛び降り、モンスターたちへ、自らの足で駆けて行った。
「来たか。」
目をつぶっている青年が、静かに言う。その青年の顔は、宮殿の神々しくもある光によって、見ることができない。
「これで、あいつらの力量が窺い知れる。」
そう言う青年の周りには、魔族が恭しく控えていた。そう、彼は、若くして代を継いだ、名実ともにそろっている、魔王だったのだ。そして、進らが今、倒そうとしているモンスターは、この魔王の差し金だったのだ。
「フ、救世主、サルバドールとやらの力、見させてもらおうか。」