{第四話}奴隷として売るのさ。
そして、俺たちは今、馬小屋に来ていた。これは何故かというと、長旅になるだろうから、と、俺たちに馬を、1人1頭ずつくれると言うのだ。俺たちは、最初にうまく乗れるかを危惧していたが、案外、簡単にうまく乗れれるようになった。
「一番上等な馬を差し上げますので、少々お待ちください。」
と、馬小屋の係りの人に言われたので、俺たちは待っていた。
5分ぐらいたっただろうか。
「お待たせしました。」
そう言いながら、3頭の馬を引き、こっちに係りの人がやってきた。
「わざわざすみません。どうも、ありがとうございます。」
と俺が言い、頭を下げると、凛もあわてて頭を下げていた。そして、俺たちは、これから自分の愛馬になるだろう馬を引きながら、門のところに向かった。
しばらく歩き、俺たちは門のところで、イラシュールらと合流した。ここにある門は、それほど大きくはないが、立派な門だ。そして、俺たちはたくさんの人から熱い声援を受けながら、馬に乗り、門をくぐった。俺たちの2人旅が、今始まった。
そして、もう後ろを振り返っても誰も見えないな、と言うぐらいになって、凛が俺に話しかけてきた。
「ねえ、進。これからどうする?」
「どうするって言ったって・・・・・・。探すしかないだろ、クラスメートたちを。」
「気は進まないがな。」
そう、俺は付け加えるのを忘れない。
「じゃあ、そうしようよ。」
と、凛が話す。
「とりあえず、他の人と合流するのを目標に移動しよう。」
「・・・・・・そうだな、そうしよう。」
俺は渋々、凛の意見に賛成した。
「それにしても・・・。」
と、いきなり凛が言葉を発した。
「何か・・・、熱烈な歓迎だったね・・・。」
と、凛が苦笑交じりに言う。
「まぁ、何か明確な希望が欲しかったんだろうな。」
俺が、表情を崩さずに言う。俺から見れば、(口は悪いが)所詮、自分らが何もできないからって、力のある子供に戦わせているに過ぎない。そのやり方は、俺はあまり好きではない。子供を守るのは、大人の役目だ。と俺は思う。
その後も他愛もない話をしながら、俺たちは馬に揺られること数十分。俺たちは、うっそうと木々が生い茂っている、森の手前で立ち止まった。
「進?」
と凛が、いきなり止まった俺に、訝しげな視線を送る。
「何か、・・・人の気配がする。」
俺は、計測不能の索敵能力で、歩いている人影を29つ知覚した。何をしているんだ?と、俺は疑問に思った。こんな広大な森の中で、何をしているのか。答えを探しても、何も見つからない。・・・いや。
「考えていても仕方がない・・・か。」
「進?」
またもや、凛が聞いてくる。
「凛。森の奥で28人、人がいる。今からそこに行くが、何が起こるかわからない。念のため、戦う準備をしておいてくれ。」
「わかった。」
と言い、凛が頷く。俺は、それを一瞥すると、その多数の人影に向かって、馬を走らせた。
「あの、おじいさん?」
「何じゃ?」
先生が、不安そうにおじいさんに話しかける。
「あの、・・・村に連れて行ってくれるんですよね?」
「そうじゃよ、安心してついてきなさい。」
「・・・わかりました。」
先生は納得していない様子だったが、渋々頷いた。
「先生?」
と、生徒が不安そうに先生に聞く。
「大丈夫よ。」
先生が、生徒を励ますように無理に笑顔を作って、そう言う。だが、その笑みはあまりにぎこちなかった。その時、先生と周りにいた生徒、つまりおじいさん以外の全員が、穴に落ちた。
「なっ!?え!?お、落とし穴!?」
と、先生が驚きに染まった叫び声をあげる。それはそうだろう。だって、歩いていたら落とし穴が。なんて、信じられない。すると、
「ヒッヒッヒッヒッヒ。」
と、いきなりおじいさんが笑い始めた。その様はまるで、魔女が歪んだ笑いをしているかのようだった。すると、いきなりおじいさんの顔が、グニャグニャとしていった。
「な、何!?」
と、先生が恐怖に染まった声色で言う。
「私はおじいさんではないよ。魔女だよ。」
そう言うと、魔女の後ろから、ゲームなどによく出てくるようなゴブリンが、たくさんでてきた。ざっと見ただけでも、50以上はいる。
「ヒッヒッヒッヒ。あんた達が誰かは知らないけどね、そんなのどうでもいいのさ。」
ゴブリンが穴に向かって手を伸ばす。
「な、何をするつもりですか!」
と、先生が叫ぶ。
「フ。奴隷として売るのさ。女と子供は金になる。」
先生と生徒の顔が、絶望に染まる。
「いやだー!」
「やめろー!」
「ごめんなさいー!」
何故か生徒の中には、何かに謝りだす者もいた。
「ダメです!生徒には指一本触れさせません!!」
だが、そんな先生の叫びを受けても、魔女は冷笑している。
「そうかい、ならまずはあんたからだね。」
ゴブリンの手が、先生に伸びていく。
「・・・!」
そして、ゴブリンの手が先生を掴む──。
──前に、ゴブリンの腕が何者かの手によって斬られた。ズドォォォンと、とても大きいゴブリンの手が、地面に落ちたことによって、地面に大きな衝撃が起きる。そして、ゴブリンが斬り刻まれ、地面に倒れる。先生と生徒、そして魔女の、全員の顔が驚愕の色に染まる。
「な、何だい!?」
と、魔女が叫ぶ。すると、穴に落ちた先生と生徒らの前に、立ちはだかるようにして、1つの人影が現れる。
「悪いな、こいつらをやらせるワケにはいかないんだ。」
そこに現れたのは
救世主、サルバドールであった。