{第二話}異世界に来て早々にこんな事が起きるのか?
「君、今何をした?空から降ってきたように見えるが、・・・。」
げ、マジかよ。異世界に来て早々にこんな事が起きるのか?いいや、俺が読んだラノベではこんなことは無かったはずだ。と、俺はパニックから自問自答してしまう。
「上級回復魔法なら、深い傷も簡単に治せるらしいが・・・。恐らく、君たちは特別な力は使ってないだろう?」
そう、若干問い詰めている感じで、兵士が質問をしてくる。何かを言おうとした凛を目で制すと、俺は口を開いた。
「これは、自分の身を守るための、特殊な技能です。」
俺はそう言った。これが、思いつく限りで、最も無難な答えだったからだ。
「そうか、とにかく一緒に付いて来てくれ。」
そう言い、兵士は歩いて行った。さも、俺たちが付いていくのが当然、と言わんばかりに。俺たちは顔を見合わせたが、ついていくことにした。とにかく、反抗的な素振りは見せないほうがいい。俺は、そう思ったのである。
そして、連れてこられたのは、木で作られた簡易宿泊所のようなところであった。くっついてないベッドが2つ。この部屋にはそれしかない。
「ここで大人しくしててくれ。」
その兵士にはそう言われた。
「それと、俺の名前はスパイル・ガーシーだ。他の奴に何でここにいるのか聞かれたら、俺の名前を出せ。そうすれば、大丈夫だ。」
スパイルはそう告げると、どこかに行ってしまった。
「ねえ、どうする?」
「どうするって言ったって・・・。どうしようも無いだろ。」
俺はそう、凛に答えた。
「私たち、これからどうなっちゃうんだろ?」
と、不安そうに凛が言ったので、
「大丈夫だ。凛の事ぐらい、俺が守ってやる。」
俺はそう言った。
そして、
ガチャッ
とドアが開いた。俺はとっさに身構える。ここは異世界。俺たちがこれまでいた安全な地球ではない。何があるか、わからない。
「まぁまぁ、何もそこまで警戒するな。」
そう言い、入ってきたのはおじいさんであった。
「俺は碓崎 進。あんたは?」
「ワシはイラシュール、技術顧問をしておる者じゃ。」
「そして、ワシが今からするのは提案じゃ。」
「うぅ。」
彼らは、そう言いながら目を覚ました。彼らは、進のクラスメートだ。
「ここは・・・どこだ?」
煌がそう言った。そして煌のそう言った言葉につられ、他のクラスメートが辺りを見回す。周りには、見渡す限り木が広がっている。彼らは空から落ちたのではなく、ここの地面に寝ていたのであろう。まだ、目を覚ましていない生徒が、チラホラと見える。
「え?」
「ちょっと、どういうこと?」
「意味わかんないんだけど!」
クラスメートたちが、一斉に叫びだす。無理もない。いきなり異世界に放り込まれたのだから。
「落ち着いて!」
そこで、可愛い声を出しながら、1人の女性が立ち上がる。
「まりちゃん・・・。」
と、一人が漏らす。そう、彼らの先生であった。何故、先生なのに、まりちゃん、と呼ばれているかと言うと、この先生はまだ若く、新任であるため、どこか初々しく、男にとったら庇護欲を掻き立てられるような、そんな存在だからだ。いつもは、まりちゃんと呼ばれ怒る先生も、今となっては耳にすら入っていない様子であった。
「とにかく、落ち着いてください。」
「私も、今に気が狂ってしまいそうです。でも、何とか落ち着いてください。」
「とりあえず、全員いるか確認をします。この世界に来たのが、あの教室で体験した白い光が原因ならば、全員ここにいるということで間違いはないはずです。」
そして、先生が数えていくと・・・。
「あれ?おかしいな。2人いない・・・。」
その時、煌が言葉を発した。
「まりちゃん、凛と・・・あと進がいない。」
煌は、進の名を呼ぶのに抵抗しつつも、先生の前なので、しっかりと言っておく。
「えぇっ!?ど、どうしましょう・・・。」
そこで、先生がオロオロとしだした。
「先生・・・。」
そこで、その様子を見た生徒の一人が、不安げに漏らす。先生と言っているのは、無意識に頼りたくなっているからかもしれない。
「そうですね・・・。とりあえず、私たちが生き残る方法を探しましょう。」
そして、彼ら一行はとりあえず、この森を抜けることにした。
一時間ぐらい歩いただろうか。前に、1人のおじいさんが見えてきた。
「まりちゃん。」
「えぇ、あの人に話しかけてみましょう。」
そして、先生が話しかけた。
「あの~。」
「何か用かの?」
その優しそうなおじいさんの受け答えに、先生はホッとした。
「オカルトとかって・・・信じますか?」
「ま、まりちゃん?」
煌が、驚いたように先生に言う。何故そんなことを言ったのか、わからなかったからだ。
「えぇ、もちろん。」
「ほ、本当ですかっ!?」
どうやら、このおじいさんはオカルト系を信じるらしいが、それがどうしたのか。このとき、生徒たちは全員、そのような事を思っていた。
「なら、単刀直入に言います。私たち、実は異世界転移してこちらの世界に来てしまったんです!!」
先生が、胸を張ってそう言った。