神の居ない神社
ぼやっとした構想はあるものの明確な方針が定まっていないため、後付けが頻繁に起こるやもしれません。
不定期更新です。土日更新多いかもです。
上伊那抜神社には人との繋がりを強くするという類のおまじないがあった。
思えば何故あんなおまじないをしてしまったのか…。
ついさっき、1人の友人が亡くなった。
石橋和人が謎の死をとげた。
こちら側へ来て2日しか経っていない。
高校2年生では早過ぎる1人の死を見届け、今ここには7人の人間が居た。
俺達はあの日、夏休み中旬に毎年行われる祭りに来ていた。
普段は寂れた田舎町でもこの日ばかりは人が多かった。
お盆の時期と合間って大人や子供、懐かしい面々と会ったりする。
皆、中学までは一緒だったものの高校に上がるとそれぞれが会うことはめっきりと少なくなっていたが、連絡を取り合い祭りのある日には集まるようにしていた。
皆を待っていると見知った男と女が連れ添って歩いてきた。
「おー、ずいぶん早いじゃん!やっぱり可愛くなった燈ちゃんが見たかったのか?」
「え?何々?どーいうコト?しのちゃん燈の事好きなの?」
後から来たこいつらは賀川裕司と佐久間翔子、中学までは一緒だったが2人とも都内の学校に通っている。
「うっさいな、お前らには関係ないだろ」
と少し突き放した。
「らってなんだ?らって、俺はお前の事本気で心配してんだぜ?」
ニヤニヤと裕司が近寄って言う
「今回がラストチャンスじゃね?まだオトコ居ないって聞いたぞ?」
耳元で囁きながらも声は笑っている。
「自分のタイミングがあるんだよ!タイミング!」
「え〜タイミング何て待ってたらいつまで経っても、しのチャン行かないじゃん!」
とこの女は余計な事をズケズケと言い放った。
クッソ、人の弱みにつけ込んで愉しみやがって!
「言いたい時に言うからお前らのタイミングに何か合わせねーよ!」
「ね〜、何か言うつもり?」
「だから今年はちゃんと…」
2人の方向から声は聞こえてこない。
さっきからニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべている。
も、もも、もしや!
ものすごくぎこちなく、目線を声の主に合わせた。
終わった!俺の恋は終わった!
こいつら2人によって告白までのシチュエーションが壊された!
と考えていたが、平静を装い言った。
「い、い、いやーホント待ち合わせ通りに皆来ないもんだからちょっとな〜、言ってやらんとな〜、ほ、ホントかなんわー」
平静じゃなかった。
そっか、ゴメンねと謝られた。
今シュンとなって謝っている相手、井上燈に絶賛恋心抱きであった。
上ずってしまった声色に冷静さを取り繕うよう努めていた。
「いや、大丈夫だ。」
そう一言返すだけで精一杯だった。
暫くすると男1人に女3人ハーレム状態の奴が近寄って来た。
ハーレムというかパシリというか荷物持ちというか…。
若干羨ましいのだが。
別に虐められたい願望があるわけではない。
断じてない。
神野亜弥、麻耶の姉妹と鷹野姉さん、あとから続くやつが女3人に使われる石橋和人だった。
顔なじみ8人はやっと出揃い、思い思いに話をしながら夜店を周る。
毎年恒例だ。
ここまではいつも通り、そして帰り夜店などが閉まり始め少しひと気が無くなって来たあたりから始まった。
誰かが言った。
もう来年からは受験生だし、早々集まれないよね〜と、
そしてまたそれぞれが別の道を歩いても集まれるように、1人で歩くことがあってもどこかで繋がっていて、直ぐ出会えるようにと、上伊那抜神社で、おまじないをする事になった。
1人を中心に置き、周りが手を繋ぐ。
一斉に目をつむり唄を歌う。
皆が目を開け、1人欠け、また1人欠け、各々がお疲れと挨拶をして、最後に俺が神社を出た。
ハズだったのだが、神社の真下の階段に7人集まって何か話している。
早く解散すれば良いものをダラダラとしてるといくら夏でも寒くなると考えていた。
近くまで来ると少し様子が違った。
誰かが言った。
「何か静か過ぎない?」
「祭りも終わったし、変な事はないんじゃね?人なんて元から少なかったし」
「だったら片付けてる音とか声とか聞こえてきても良いんじゃないか?」
と裕司は言う。
そういえば…、耳を澄ますと風が木々の葉を揺らす音が聞こえてきた。
葉のこすれ合う音は聞こえるものの、人の声は一切聞こえてこない。
まさか屋台をそのままに帰ったりはしないよな…。
屋台を覗くと明かりがあったが人の姿は見えなかった。
隣にある焼きそばの屋台もジュウジュウと麺を焦がす音が聞こえるものの人の気配がしない。
忽然と消えてしまった様に感じた。
どうなっている!?
本当に誰もいないのか?
何があったんだ?
家は大丈夫なのか?
各々が漏らし、1人また1人と消えていった。
その場に残された俺も家に帰ることにした。
家までの道を歩いても人の姿は影も形もない。
街の灯りはしっかりと放たれてはいたし、民家から漏れ出る光はあるものの人の気配が全くない。
ふと携帯電話をみるとアンテナは圏外を示している。
田舎町には有りがちではあるが、この辺りの電波があるということはこの街に住む自分自身が良く知っていた。
暫くして家に着いた。
明かりが無いのでカギの位置が分かりにくい。携帯の照明を使いカギを開けた。
「ただいま」
声は響くが玄関に返ってくるべき返事がない。
靴を脱いで足早にリビングまで急ぐが、暗くてわかりづらい。照明のスイッチを見つけたので押すとパチっという音はなるものの肝心の光が付かない。
外を見ると先程とは様子が違った。
全ての照明が暗くなっていた。
先程まで光を発していた家までも軒並み真っ暗になっていた。
家に戻りテレビのリモコンを操作する。
画面には何も映し出されるコトは無く月明かりに照らされた自分自身の影がうつるのみだった。
電気が来ていないのか?
風呂場にはお湯が張ってあった。
中々良い湯加減だったが途中までしかお湯が貯まっていなかった。
それと暖かいということはさっきまでお湯を貯めていたのだろうと推測した。
蛇口を捻ろうとしたがそもそも蛇口は閉まっていなかったからだ。
人が居なくなった?
違うな、俺たちが忽然と消えてしまったのではないか?
ある種確信にも似た考えが頭に浮かんでしまった。
こうして一日目が終わった。
ー2日目ー
次の日の朝、俺はある場所に向かった。
向かった先は学校だった。
高校生にとって多くの人間に出会う場所というのは限られている。
学校に行けば夏休み中であったとしても部活動をしている連中に会える可能性があった。
自転車をこぎながらそんなコトを考えていた。
学校に近付いて来ると人影を発見した。
見知った服を着て前を走る女生徒が居た。
なんだ、やっぱり昨日のは気のせいか。
と学校指定の赤いジャージ姿の女生徒を抜きさろうとした時気が付いた。
「神野妹じゃないか、お前部活なんてしてたっけ?」
「ちゃんと名前で呼んで下さいよ」
質問をしたのにいきなり怒られる。
「悪い悪い、麻耶」
ひとまず謝りご機嫌をうかがいつつも挨拶を済ませと途端機嫌が良くなる。
「良いですよ、おはようございます。」
「それで部活とか入ってたのか?姉貴みたいにバレー部か?」
神野妹の顔を見ると再び機嫌が悪くなる、どうやら予想は外れたようだ。
「私はバド部ですよ、神代先輩」
「昨日のことなんだけどさ、今部活中だよな?朝練してるんだよな?メンバーは今どこだ?」
考えていたことを勢いのままに質問してしまう。
あまり後輩に焦っている所をみられたくはなかったのだけれど、焦ってしまった。
少し考えて神野妹は言った。
「今は、1人ですよ。」
「1人でトレーニングしてるのか?」
「はい、部活の友達もいません。打ち合う相手もいません、誰もいません。いつもの様に練習をしていたら誰か来るかなと思っていたら、先輩が来たんですよ。」
と少し元気がなさそうだ。
どうやら期待は裏切られ、残念な結果に終わったようだ。
「やっぱり昨日の夜からおかしいよな」
と再び質問をしていた。
「はい、早朝から学校に来てまだ、誰とも会って無いですし、先輩が最初の人です。」
唐突に言われた言葉に少しドキドキしてしまった。
「麻耶、その言い方はちょっとアレだ、アレ恋人とかに言う台詞だと思う。」
「アレ?ってその…あ!」
意味が分かったのか、うつむき加減で俺を睨みつけて来た。
うーん新入生は中々可愛らしい反応をする。
ナイスだ。ビバッ後輩よ!
とニマニマしていると、神野妹から話してきた。
「そんなコトより今の状況を考えましょうよ!」
うーん最もな意見。
「そうだな、コレからどうすれば良いか…。誰も居ないこの状態がずっと続くなら生きてく為にどうすれば良いか考えてないと行けないし、俺たちだけなのか、昨日のおれら2人を含む8人全員が同じ状態なのかも把握しないとな。」
と話した所で
「そうですね、皆と連絡を取らないといけませんね」
と同意見のようだった。
コレから今の状況について事細かく話し合いをしないといけない。がなんといってもこの暑さだ。
先ずは移動しないか聞く。
「なぁ、とりあえず話をまとめ無くちゃいけない事は確かなんだけれど、ここにずっといるのも何だし、食堂か何処か落ち着ける場所で話さないか?」
と提案したところ、体力無いんですねと不満そうに答えが返ってきた。
いくら田舎育ちって言っても現代っ子だクーラー必須だ。これだから体育会系はうんたらかんたらと頭を反芻した。
俺たちはとりあえず校舎に入り食堂へと進んだ。
食堂に入り適当なテーブルを選んだ。
「とりあえずどうする?何か飲むか?」と聞くと。
ありがとうございますと言われたので適当に買ってくると言い待たせた。
自販機の前まで行って気が付いた。
電源が入っていない、忘れていた昨日から電気がつながっていないんだ。
自販機で売ってる物の方が量が多くて好きなラインナップがあるんだけど、と手で開けて取るタイプの冷蔵庫に目を向けた。
しょうがない、パックのジュースを二つずつ手に持って誰も居ないカウンターにお金を置いてテーブルに戻った。
「先輩、なかなか律義なんですね。」
と少し驚いていた。
お前はどんな目で俺を見ていたんだ。