清秋様子を見に来る
「 梅」
お医者に向かって駆け出そうと店を出ると、ちょうど清秋様に行き会った。
「 清秋様。こんにちは。どこかにいらっしゃるの?」
清秋様は急いでいらっしゃるように見えたのだが一応確認してみた。
「 ああ?いや、そういう訳では」
「 まあ、ちょうど良かった。少しの間お願いしてもいい?」
本当にちょうど良かった。
お医者様に行く間、矢野様をひとりにするのが心配だったのだ。
「 なんだ?」
清秋様は怪訝な顔をなさった。
「 私ちょっとお医者様のところまで行ってきますから・・」
そう言いながら一度奥に戻った。二人は面識がないはずだから矢野様にも伝えていこう。
矢野様は先程の体勢のままぐったりとなさっていたが、こちら側の腕を身体のわきに下ろしていらっしゃったので、そっとその手に触れ声をかけた。
「 私、お医者様に行ってきますから、その間清秋様にいてもらいますね。お寺の方ですから」
心配なさらないで、と続けようとしたら、触れていた手がぎゅっと掴まれた。
「 嫌だよ。君がここにいて。彼に使いを頼んでよ・・・」
先程はひとりで戻るなとおっしゃっていたのに、やはり熱で朦朧としていらっしゃるのだろう。
子供が駄々をこねるようにおっしゃった様子はとてもお可愛らしく、離れがたかった。
「 大丈夫すぐ戻りますから。お寺の方ですから安心して休んでらしてください」
名残惜しさを感じながらももう一度そう伝えると、力の強い矢野様の手を頑張って剥がし、振り返った。
膝くらいの高さの座敷に屈んでいたので、見上げる程大きな清秋様が立ちふさがっていてびっくりした。
「 わ!びっくりした。清秋様、そういう訳で、お客様の具合がお悪いのでお医者様を呼んできますから、その間ここにいて下さいね」
狭い店の奥に立ちふさがっている清秋様のお腹を遠慮なく押して退かしながらお願いした。
清秋様は座敷の矢野様を窺いながらやけに大きな声でおっしゃった。
「 お前が残らなくていいのか?俺が行った方が早いだろう?」
「 もう!休んでらっしゃるんだから静かにしてください。私が行ってきますからお願いします」
声を潜めてそう伝えると、医者に向かって掛け出した。




