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夢見る子供

                   夏の季節

                 10時25分

                 某市津妻公園



まさりは緊張していた。

これから出会う人に対しての。


「服装はこんなもんだろ・・・・」


緑色の服。茶色のスーツ。いつもながら、センスのない服選びだった。

髪は朝起きた時からそのままにしてある。何故か、綺麗にできていた。


「はぁ・・・こんなことになるとは・・・」


生まれ初めてのデート。2人っきりの雰囲気。

そんな妄想をしていたが、やって来る女のことを考えると、幻滅する。

2度目のため息が出ると、女が来た。


「おはよう! ごめん。遅れたの」


短いツインテール。季節に会う白いワンピース。


「メイクはしたのか」

「女だからね」

「今回の目的、分かっているのか? デートじゃないんだぞ」

「うん。分かっているの。好きな人は別々に居ることもね」


見た目は、女の子。聞けば、10歳だという。


「知っているか? 女は歳を言わないものだ」

「え`」

「もう手遅れだ。・・・・ところで今日は何と呼べたらいい?」

「ん~。らんちゃん」

「却下」

「まりちゃん」

「却下」

「ピンク」

「意味を勘違いするから、無効」

「えーーーー。じゃあ、何がいいの!?」


数秒間、思考してから。


「のっぼさん」

「何それ!!!!」


結局、「小海」に落ち着いた。


「意味は?」

「んなもん、知るか」


本当は「心は海のように綺麗けど、狭い」という理由から。


「それしても・・・同姓愛カップルとは・・・」

「それを言うなら、逆転性愛カップルでしょ」

「中身は違っても、男女だから、同じだろ」

「むーーーー」


そう。俺たちは、外見と中身は合わないのだ。

まさりは女だが、考え方は男。

小海は男だが、考え方は女。


世間に言う「性同一性障害」だ。


「さあて、行くか」

「どこに?」

「好きな人の行きそうな所だ」



ーーーーーー



まさりという名前は本名ではない。

元の名前は板野 政彦。10歳だ。

何故、まさりと名乗るというと、その原因は一組の漫才コンビにある。

以前は周りに対して、女ということで通してきたが、本人は不満を持っていた。

「もっと素直になりたい」

そんな考えを持ち始めた頃、たまたま見た番組に売れない漫才コンビがあった。

そのネタ名は、「暴走女」。

その通り、ただ暴れるだけの漫才であったが、ウケなかった。

政彦以外には。


「これ・・・・だわ・・・!!」


閃いた。もっと強くなろう。そのためには、アニメのキャラになりきろう。


こうして、多くのキャラからパクリ、架空の人物を作り上げ、なりきった。


そのためには、元々長い髪を思い切って切り、男用の服を使用するようになった。


最初は男らしい名前を名乗っていたが、母にバレてしまい、

「どうして、私が付けた名前を捨てるの? そのキャラにするなら、簡単な呼び名を考えてあげるから、捨てないで」


と叱られ、母により、「まさり」と命名された。


父親は居なかったものの、渋々妥協する事になった。



ーーーー



                 11時00分

                市内の某カフェ


「お客様。保護者は居られますか?」


店員の一言によって、まさりたちは外に放り出された。

目的の人達を目前にして、店内に入れないというのは歯痒い思いだ。


「仕方ない。あいつらが出るまで待とう」

「どっかで休む?」

「それらしい店もないし、適当に散歩するか」


まさりと小海はカフェの近くにある神社まで歩くことになった。


「そんなに離れて大丈夫?」

「ん。予定表を盗ってきたし。次は映画館に向かうから、そこまで行けばいいだろ」

「・・・・・予定表?」

「あいつの女、かなり真面目でな、いつも予定を組むんだ。今回はおばさんに頼んで、コピーしてきた」


ポケットにしまってある予定表を取り出し、小海に見せる。


「小海の好きな人は女の言うことを聞くから、予定に違う行動は取らないと思うぞ」

「確かに、そーゆー人だったけど・・・・何で知っているの? 私たち、出会ったの2日前でしょ」


小海の言う通りだ。2日前、まさりは好きな人、つまり今回追いかけているカップルの女、桜子と話していたら、桜子の彼氏が現れた。

まさりは悲しむ顔を見せず、むしろ喜んでいた。(この時は既に「まさり」になりきっていた)


『いやー。良かったな。彼氏居ない歴がさらに延ばしたと思ったぜ」

『あ、あはは・・・・笑えない冗談ね」

『まさりだったね? 話は聞いているよ。これからよろしく』

『あ~あ。そこの兄さんに言われる日が来るとは。先のことはわかんねぇもんだな』

『ま、まさり!!!!』

『まあまあ。桜子。後でおいしいお茶を飲もう。どころでまさりに紹介したい子が居るんだ。その子、少し手が負えなくてね。困っているんだ』


こうして、小海と出会った。


「しかし、小海が同姓愛者で、桜子の彼氏が好きだったとは・・・・」

「今でもあきらめないから」

「あんな楽しそうに話している姿を見ても、か?」

「・・・・・」


「ま、とんこん追いかけろ。そうすれば、心が折れる日が来るからな!」


「ひどっ!」


会話が途切れた頃、そろそろ映画館に桜子たちが移動する時間になったので、小海と一緒に向かう。


映画館は、ラブストーリーが上映されていた。まさりは小海に、

「俺は一人で待つ。お前だけで入れ」

言い放ち、その場から離れた。

小海が何やら騒いでいるが、無視することにした。



                 15時23分                映画館の休憩室


まさりは自動販売機でジュースを買い、のんびり過ごしていた。

「・・・・小海が本物の女だったらな・・・・」

小海は桜子の彼氏にしか見てなかった。その思いは未だに断ち切れてない。

「さて、どうしたもんかな」


                 15時40分

               映画館の出入り口


まさりは外で小海が出てくるのを待った。

「あ。まさり」

振り返ると、桜子達が居た。

「やっぱりつけてきたのね。後ろに、(小海の本名)が見えたのよ。今頃は寝ているかも」

まさりは苦笑しながら、「あのヤロー」と呟く。

「まぁ、(小海の本名)に見られながら、デートするのはいいことだよ。おかげで僕らはどれだけ幸せなのか実感できたよ」


「・・・・まさか、小海にわざとつけられるように予定表を残したのか?」


「あ、ああああ、あらあら、そうだったの? わたしったらバカねーーーー」


どう見ても図星である。

要するに、まさりと小海はハメられたのだ。


「仕方ないことだったんだ。(小海の本名)に現実に知ってもらうにはこれしかなかった」

「(小海の本名)の将来が心配だけどね」


今夜はホテルに泊まるから、と桜子たちは立ち去っていった。


10分後。

やっと小海が出てきた。


「ふぁ~。ねむぃ」


とりあえずぶん殴る。


「いったっ。まさり何怒っているのよ」

「怒るわ!! 桜子たちにバレバレだったし、あいつらはもう行ったし、しまいにちゃ、ラブストーリーを見ておきながら、寝る・・・・やる気あるんか!!!?」


「う・・・・」


「言い訳は聞かない。まずは反省しろよ・・・・まったく」

「自分だけ休憩室に居たまさりが言うことかな?」

「俺は興味が無いし、あるとしたら、あいつらがうまくやっているのかを観察しただけ」


「ぐ・・・・・」


まさりはため息を吐きながら、


「もう帰るぞ。母が待っている。後が怖いしな」

「・・・・・」

「それに、他にも素敵な人は世界中いっぱい居る。探せ。というか、アメリカに行け」

「む~~~~~~。そんなことを言うなら、まさりを彼氏にしてあげないから!」


「・・・・彼氏にしてください」


頭を下げて真摯に要求する。


「断ります」


数秒でフラれるまさり。



「っと、もうこんな時間!!!」

「やべ、急げ!!!!!」




これは、青春に夢を持って全力で駆けてきた、とある人の物語ーーー。




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