冬の妖精
「妖精さん、こんにちわ」
その女の子は空を舞う白い白い雪に話しかけました。
「今日も寒いね」
白い白いコートに、引きずるほど長くて赤いマフラーが映えています。
女の子はマフラーと同じ色のミトンを口元に持っていって、「はぁ〜」と息を吐きました。
「こうすると暖かいね。えへへ。そうだ、妖精さんもスノーブが暖めてあげるね」
女の子は手で口を覆わずに、「は〜」と息を吐きました。
「暖かいでしょ〜。えへへ」
笑っているスノーブの回りを雪がひらりひらりと落ちていきます。
「スノーブね、そろそろ大人になってもいいよって、ママに言われたの」
ちょっとだけ風が弱まって、雪はふわふわと落ちていきます。
「そんなに悲しまないで。スノーブもさみしいんだよ」
スノーブは悲しそうに下を見ました。
「でもね、喜んでいいことなんだって。だから、スノーブは嬉しいんだよ」
風の方向が変わって、スノーブをお祝いするかのように雪を舞い上がらせました。
スノーブのリンゴみたいに真っ赤だったほっぺたがうんと赤くなりました。
「うん。ありがとう。スノーブ、そろそろ行くね。……ばいばい」
赤いミトンをふると、スノーブはおうちに帰りました。
「ママ、ただいま」
「お帰りなさい。スノヴィーノ」
ママはストーブの前で編み物をしていました。
「ママ、お友だちにさようさらしてきたよ」
「そう。じゃあ、準備はいいのね?」
「うん。ちょっとさびしいけど、大丈夫だよ」
ママは編み棒をかごに入れて、スノーブを呼びました。
ママのところにいくと、ママはスノーブの頭を撫でました。
「これから、あなたは冬になるのよ。立派な冬の精霊に」
暖かな光が2人を包み込みます。
「あったかい……」
「スノーブ、さよならね。あなたなら立派な精霊になれるわ」
光が消えると、ママも消えていました。机や椅子がいつもより低く見えます。
「母さん!」
思わず叫んだ言葉にスノーブは驚きました。
「私、何でママのことを母さんだなんて……」
スノーブはまたまた驚きました。
「ストーブのこと、私って……」
スノーブはそこで気がつきました。
「そうか、これが大人になるってことなのね」
親と離れ、自立すること。スノヴィーノはそう悟りました。
「私はもうスノーブじゃない。スノヴィーノなのね」
さっきまで窓を叩いていた風や雪が止まりました。
スノヴィーノは窓の方を見ると、手をかざしました。
「スノヴィーノは冬の精霊。だからお仕事しなくちゃいけない。雪よ、新たな生命を培うために。風よ、雪を運ぶために」
スノヴィーノが叫ぶと吹雪が始まりました。
「暖かな春になるまで積もり続けよ。新たな命に幸多からんと」