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act.40……?

 閑話休題です。ちょっと暗いので、飛ばしても構いません。次話以降に必要な情報等はないはずなので、どうぞご安心ください。

act.40……?

 ここは……何処、だ? 全く見覚えがない。ただ……目の前には惨状と呼ぶに相応しい状況となっている。

「な、なんだ……これは……誰かいないのか!?」

 朱に染まる夕陽と異なり、空は紅に染まっている。それに、目の前にはその原因と思われる炎が広がっている。

 草も、地面も、空も、全てが炎の色に染められている。よく見れば……その炎に焼かれたのか焦げた屍が幾つも転がっている。その中に、幾つか見覚えのある屍が見えた。

「な……!? 国王と……直属部隊……?」

 一部が焦げているが、はっきりとわかった。いや、わかってしまった。国王のあまり絢爛さを表に出さない、それでも立派なローブ。黒い特徴的な軍服。見慣れた顔。そして彼らが愛用していた、一部が壊れている武器の数々。

「なんで……なんで、こんなことに…………!!」


 そして、今になって気付いた。ここは、見覚えのない場所でも無かった。ここは、王城だ。崩れていた為気付かなかったが、ここは俺が住まわせてもらっていた王国中心地、王城だ。そして俺は、彼らや王国を守れなかったのだ、と悟った。大きな力を持つ者として、せめてこの国は守りたかった。彼らの生活を守りたかった。それなのに……!

 両手を地につき、立つことすらできなくなった俺。そして、見ればもうすぐそこまで火の海は迫っていた。それなのに、なぜか熱く感じない。

 ただ、何となく逃げる気は起らなかった。もう、守れるものもない。この世界で生きる理由を見失ってしまった。

 


 そんな時だ。俺のすぐ横に、人が立つ気配がする。振り向けば、そこにいたのは厳しい顔をしたゼウスとテュポンだった。

「ゼウス……テュポン……」

「……どうやら、お前に力を貸したのは失敗だったようだな」

 いきなり、冷たい口調で放たれたゼウスの言葉に、俺は最初聞き間違いかと思った。だが、その顔つきをみるにどうやら聞き違いではないらしい。

「な……どういう……事だ? 一体、何があった!?」

「お前を……見放させてもらうよ。失望した、拓海」

 テュポンも、ゼウスと同じく冷たい口調で言い放つ。一体、何がどうなっている。どうしてこうなっている!?


 俺の疑問をよそに、ゼウスとテュポンはその後無言で一振りずつ剣をとりだした。両刃で細身のそれは、レイピア程ではないが刺突に特化した物だろう。

 その剣を、立ち上がった俺に躊躇なく突き刺してきた。

「ッが!?」

「すぐには殺さん。この罪、償ってもらう!」

 右肺に一本、胃の辺りにもう一本。肺に穴が開いた事で呼吸が苦しくなり、胃に穴があいて漏れだした胃液の持つ酸性で俺の体は蝕まれていく。

「っが……は……な、ぜ……」

「まだ、死ぬなよ?」

 ぐりぐり、と剣を動かす二人。その度に視界が霞み、倒れこみそうになる。すると剣が更に傷を広げ、出血量が増えていく。


 ぐちゃり、という嫌な音と共に剣が引き抜かれ、一気に出血が酷くなる。支えを失い、自身が作った血の池に倒れ込み、どんどんと意識が薄れていく。

「お前の罪は、死ですら償いきれぬ。死後の世界で待っていてやる、覚悟しておけ」

 静かに、そして憎しみが籠った声で、吐き捨てるように言い放ったゼウスは、テュポンと共に目の前から消え去った。

 不思議と、痛みを実感できなかった俺。しかし、それも出血が多すぎて感じないだけなのだろう。俺の意識はブラックアウトすらせず、自分が倒れている地面をいつまでも見ている。そして、少し見上げれば見慣れた、仲の良くなった人物達の死体とそれを作りだした炎。俺は次第に震えてきた。多分、ゼウス達の言動から察するに……俺がやったのだろう。






「…………ッッ!!!」

 バサリ、と布団が擦れる音が聞こえ、自分が座っている状態になっている事を認識する。先程の音と、薄暗いながらも微かに見える視界に映る景色から、そこが俺が寝泊まりしている部屋のベッドの中ということが分かる。

「……夢、か?」

 どうりで、熱くも痛くも無かった訳だ。少しだけほっとし、自分の掌を見る。汗でびっしょりになったその両掌を見て、大きなため息を吐いた。壁に寄りかかり外を見やれば既に陽が昇り始めている。迷彩服をズボン以外脱ぎ、最近王城内で購入したパジャマ代わりの白いT-シャツを着ている自分の姿と、普段と変わりない外の景色を見て、今のが夢だったと確信できた。それと同時に一気に安心して、脱力する。

「にしても……なんて夢だ……」

 自分が王国を攻撃した。そして、今まで親しかった者達まで殺していた。そんな夢、見ていい気分でいられるわけがない。

 汗でぐっしょりとした自分に気付き備え付けのシャワールームへと向かう足取りは、自分でもわかる程ふらふらとしていた。いやまったく、夢で良かった……



 シャワーを浴び、幾らかすっきりとできた。上半身裸ネイキッド迷彩(と、言って良いのかは知らん)状態である俺は、いつもより早く起きてしまったことに対してどう過ごすか少し悩んだ。今から眠る、というわけにもいかないし、朝食にも早い。はあ……

 あ、そう言えば鍛錬場が空いているな。そう思いだし、とりあえずそのままの格好で蒼鬼、ナイフ、ハッシュパピー、ビームライフルという武装一式を持って鍛錬場に向かうこととする。最近、あまり鍛錬という鍛錬を出来ていない。腕立てなどの基礎筋トレは部屋で出来るから良いが、流石に刀や銃器を振り回す訳にもいかないので、この機会に少し体を動かすこととしよう。

 一応、夢でした。この夢は、ある種今度掲載しようと思っているこの作品の続編に対する伏線的な感じです。見なくてもぜんっぜん大丈夫だったりしますが。



 そろそろ、フィナーレへと近づいてまいりました。五十話に突入しそうで怖いですけどね。それでも、後考えているイベントはほぼ無いので(魔王との戦闘位)、あまり長くはならないと思います。

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