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act.36魔王完全復活対策

 いい加減魔王襲って来やがれ! とお思いの方。朗報です。次話やっと襲ってくるかもです。かも、の領域をでてないのは……お察し下さい。

act.36魔王完全復活対策

「……誰だ? こんなふざけた張り紙を張ったのは?」

 あきれた様子でデフィアが会議室前に貼られた張り紙をビリビリと破り捨てる。その紙には『魔王対策本部』なる字が書かれていた。こういうの書くのって日本の警察以外あったんだね。

「全くだ……一体誰が書いたんだよ、こんなもん」

 ゼルキスが同調していたその時、俺は背に冷や汗が流れるのを感じた。何かを確認すべく後ろを向けば……ある人物がこめかみに青筋を浮かべ、笑顔で立っていた。

「お、お前ら……よくそんな勇気あるな……」

「そうか? ま、先生より……は……」

 振り向きつつゼルキスが言う。しかし、それは最後まで紡がれることは無かった。

「お前ら……そうかそうか、今回の作戦の前にちょっとした準備運動が必要じゃな? では、ちょっと失礼するぞ?」

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「申し訳ありませんでしたあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 襟を掴まれ、ずりずりと引き摺られていく二人。それを他は呆れつつ笑いつつで眺めていく。やがてそれも見えなくなった。

「国王様……本気で怒ってらっしゃるな」

「そのようだ。ま、フツー怒るわなぁありゃ。で、どーする?」

「どうするって?」

「このまま待つのか?」

「……先に始めていよう」

 警吏から鍵を受け取り、中に入って各自席につく。丁度大学の講義室が国会みたいな扇状になった感じの部屋は、適度な清潔感を感じさせる。




 ふぁぁぁぁ……寝そう……

 いやね、結局国王も帰ってきて(ゼルキスとデフィアもボロボロで帰ってきた)、会議は進んでるんだけど。

 日本で言う夏にあたる季節を迎えたこの国では、氷の魔法を応用して作られた装置により、かなり快適な気温が保たれている。つまりクーラーがかかっている状態なわけで。そんな状態に人間を放り込んだらどうなるか、想像は難しくないと思う。よーするに眠い。

「で、ここが…………だから…………」

 辛うじて起きてはいるが……完全に内容が頭に入らない。も、もう駄目……寝る………………

「くぅ……寝る訳には……」

 辛うじて理性を取り戻し、自身に多少の電撃を流してみた。全く、完全に目が覚めた……はじめっからやれば良かったなこれ。

「で、だ。今回、この隊の全体顧問である先生から既に布陣は聞いているが……その後指示された細かい作戦。これを打ち合わせしておこう」

 あっぶねぇぇぇぇぇぇぇ! い、一番大事なとこじゃん! 起きて良かったぁぁぁ!




 んでもって。結局、俺はそれぞれの作戦全てに許可を出すまでに至った。多少手を加えたりしたところもある。が、概ね完成していて、俺が手を加えたと言ってもほんの一つまみにもみたないだろう。

「では……これにて会議を終了、解散としよう。異議、質問がある者はいるか?」

 恒例の言葉で会議を閉める国王。威厳を持ったその言葉は、静寂を保った会議室に静かに響いた。皆は質問その他が無いということを沈黙で示し、国王は頷いて解散と再び告げた。


「さて……デフィア、イース。ちょっとついてきてくれ」

 会議室を出てすぐ、俺は二人を呼びとめる。すぐさま振り向いて反応した二人は、目的が分からないからか疑問を抱いたようだが……なんだかんだついてきてくれた。


「で、ここにきて何をするつもりです?」

「いやね、最終確認を手伝ってほしいのよ」

「最終確認? 一体何をするつもりだ?」

 二人に目的を告げ、少し考えて承諾してくれたのを見て早速作業に取り掛かる。主なものとしては、射出する際に弾丸が曲がらないよう、バレル部分の調整。イース達が隠れる為のスペースを岩に追加で掘る。丁度天井と壁の裏にスペースを作る感じだ。他には籠る為の物資を幾らか運び込んだりして、最終調整を終了した。

「なあ、先生よ?」

「何だ?」

「お前はここで戦況をひっくり返すつもりか?」

「……その通りだぞ。楽しみじゃないか」

 その直後、イースが窓を背に壁に隠れ、どこかを睨んでいる。それを見て俺達も隠れ、イースに尋ねる。

「どうした?」

「偵察が一人いるようです。そこの木の影ですね。折角ですから、それの威力を試すついでに撃ってみては?」

「いいアイデアだ。デフィア、準備するんだ」

「了解。多少素早さ重視の荒いサイティングになるから、気をつけてくれ」

「あいよ。イース、他に敵はいないな?」

「……はい、いませんね」

 イースの回答に安心し、両掌に雷の魔力を蓄積させる。ただ、今回は前回の反省からかなり控えめであるが。

「今だっ!」

 バンッ! と音がするほど掌を強く叩きつけ、魔力を即座に流し込む。トリガーを引き、弾丸を投射すべく内部に電撃が奔る。

電磁投射砲レールガン、投射!」

 一瞬バレルから蒼い閃光が程走り、直後何かが飛んで行った感覚が残る。放熱板が開くと同時に、着弾を知らせる爆音と衝撃波。数本の木々は倒れ、地面が抉れている。

「あ……死んでないよな?」

「降りましょう。多分死んではいませんが……尚更降りねば回収できませんから」



 結局降りて現場に行ってみると……その凄惨な現場の中心地に、一人の女性が倒れている。ただ、緑色の軍服である為魔王軍であるのは確実だ。

「……連行するぞ。さて、帰るか?」

「了解だ。そういえば放熱の時間は計ったか?」

「あ……ちょっと待ってろ、見てくるから」

 デフィアに言われて初めて思い出し、風の力で一気に窓からやぐらに入る。良かった、まだ閉じていない。さっきのやりとりから考えて、そこまで時間は経っていないだろう。

 カチャリ、という音と共に放熱板が閉じた。同時にトリガーの辺りからリミッターの金具が外れる音が聞こえ、再投射準備完了を告げた。

「……おおよそ五分か。長いな」


 降りて結果を報告し、俺達は王城への帰路へとついた。

 うん、いろいろと間違ったフラグを立てた気がする。

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