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act.32v.s.シャ……ジュイス!

 ジュイスとの戦闘だけですから、少し短いです。最後、ちょっと無理やりな展開な気がしますがそこはご勘弁を……


 あ、途中、月という描写がありますが、これは拓海が勝手に月と呼んでいるだけで実際は別名です。

act.32v.s.シャ……ジュイス!

 王都最北に存在する城を飛び出し数刻。視界からは次第に建物が減り、植物が多くなってくる。森林のように背丈が高い植物ではなく、草原に近いからか余り背丈が高いものではく、膝に届くかどうか、といった程度だ。

 そうそう、結局迷彩はスニーキングではなくAUSCAM DESERTに着替えた。これから行く草原はそちらの方が目立たないらしい。本来なら草系統の迷彩の方がいいらしいのだがスニーキングと同じくAUSCAMにはダメージカット効果を持つ為だ。……それじゃスニーキングでもいいんじゃね? とも思ったがゼウス曰く、全く隠れないで半減、と少しでも隠れつつで三分の二なら後者の方が有利らしい。良く分からんが……




「ほう、まさか本当に来るとはな……」

「……呼び出した割には期待してなかったのかよ……まあ、お前さんの性格だと放っておいたら王国襲いに来そうだったからな」

「ク、ククク……フハハハハハハ!!!」

「な、なんだぁ!?」

 突如として高笑いをあげ、しばらく収まっていないジュイスを見て、俺はポカンとしてしまう。いや、確かにコイツは寡黙なタイプじゃなかったけどさ。

「クク、ク……いや、失礼した。なに、私は確かに魔王軍所属だがね、実際はどうでもいいのだよ」

「……は!?」

「私は魔王に忠誠は誓ってはいない。ただの雇われさ」

 雇われ……それは、彼が傭兵とでもいうのだろうか。いや、それなら王国についた方が待遇も良いし、魔王軍に入る訳が分からない。

「私は両親が魔王軍でねぇ。無論、魔王軍にいるような両親だ。私を育てるようなことはせず、私は物心ついたときからある王国の家庭に養子として養われていた。しかし、噂ではあったが……私の両親の所在が判明してね、私は雇われの傭兵と偽って魔王の配下についたのさ。両親が私の顔を覚えているとは思わなかったが、ね。

 一応両親は見つかったさ。魔王に聞いただけだがね。しかし、両親は前線で戦う一組の猛夫婦として魔王軍の間では有名な戦士だった。既に父は他界していた。母には会ったがやはり顔など覚えていない。私が息子だと告げたら流石に何かを感じたらしいが……魔王軍に入っていると告げると涙を流して喜んでくれたさ。だが……結局彼女は翌日に戦死した。私は再び独りになって戦いに明け暮れ……今に至る。後ろには崩落した道しかない。前には今にも崩れそうな一本の道。そして、その壁として今君が目の前に立っている」

 俺は、ジュイスの語りに相槌を挟むことなく黙って聞いていた。彼が魔王軍にいる訳も判明した。そして、今ここに彼がいる理由も。

「君はどうやら誰も殺そうとはしないらしいな。しかし……私は殺されぬ限り何度でも君を排除しようとするだろうな」

「それはそれで面白そうだけどな。ま……手加減はできないぜ?」

 それを合図に、二人はそれぞれの武器を握る手に力を込める。こちらはビームライフル(ゼウス曰く雷の魔力を収束し放つらしい)、ジュイスはマシンガン。


 少しだけ風が吹き、草同士の擦れる音が辺りを騒がしくする。月明かりが流れてきた雲に隠れ、数秒後再び顔を出す。風は止み、辺りが静寂を取り戻す。

 打ち合わせたかのように同時に、二人は消えた。否、正確には走りだしたのだ。一直線に相手に突っ込んだのではなく横に飛ぶように走るその様は、まさに消えたかのようだった。

 一直線に走る収束された雷の一閃と、連続で打ちだされる風の弾丸。貫通力を持つ一閃と連続発射される弾丸は互いに一発であれば前者が確実に勝利する。しかし、連続で発射された弾丸は少しずつ貫通力を削いでいき、互いに打ち消し合い、小規模の爆発を起こした。衝撃波は周囲の草を揺らし、二人の移動を一瞬だけ隠す。数瞬の後に再び発射され、同じく小規模の爆発。二人はそれに乗じて移動を開始し、互いの目をくらます。

 幾度かの爆発は二人を微かに削っていく。微かにではあるが蓄積されるそれは、疲労と相まって二人の呼吸を肩でさせるほどとなる。

「いい加減……沈めオラァ!」

「まだだ! まだ終わらんよ!」

 草は千切れ、大地は抉れ、二人には少しずつ傷ができ始める。

 空気が震え、火花が弾け、二人の呼吸は荒くなってゆく。


 次第に、銃撃戦のみではなく近接戦闘も増えてきた。蒼鬼と向こうの持つ赤い斧(ヒートアックスか?)が衝突し、火花を散らす。しかし、俺の本領はここからである。

 蒼鬼を持っていた右手と盾を持っていた左手を開放し、右腕と胸倉を保持し右足をかけて重心を崩す。直後、延髄を地面に叩きつけるように投げ、ハッシュパピーをつきつける。容赦なく雷での弾丸を発射し、高圧電流を流されたジュイスは呆気なく気絶した。

「はぁ……っつぅ…………やっぱつえーわ、コイツ……」



 蒼鬼と盾を回収し、背中に納める。ビームライフルは既に背中にあるホルスターにしまってある。そして、俺は後ろを向いて……ハッシュパピーとナイフを構える。

「ソコにいるんだろう? 出て来い。さもなくば……撃つ!」

 どうも先程から気配を感じるのだ。こちらに危害を加える素振りは見せないが、放っておくわけにもいくまい。それに、これで出てこないようなら危険である。

「うわっ! 待て待て! 何もしないって!!」

 出てきたのは…………総勢七名。何を隠そう、国王直属部隊隊長のメンバー全員だ。

「ほう……貴様ら、どうやら俺と組み手をやりたいらしいな? いいだろう、行くぞ!」

 隠すことなく怒気と殺気を纏い、彼ら目掛けて走りだす。無論、風を纏って高速で。

 何やら悲鳴を上げて逃げていく彼らだが、こちらにあるのは遠距離武器。ビームライフルに持ち替え、容赦なく雷を叩き込んで足止め。そして捕縛。



 数分後。全員つかまった彼ら彼女らは……何というか、ガクガクと震えていた。無論、俺が怒気や殺気を出しているからだがね。

「さて……貴様ら。明日の訓練が楽しみだな、あぁん!?」

 ビクリ、と肩を竦める彼ら……本当にこれで優秀な軍隊の部隊長なのかと疑いたくなるが……

「と、とりあえずアイツ王国まで連れ帰るから。手伝え。無論拒否権は無いぞ?」

「で、でもよ……大丈夫なのか? ソイツは俺らじゃ抑えきれんぞ、もし暴れでもしたら……」

「大丈夫、そんなことにならんように縛って連れていくから」

 かくして、俺の勝手な提案でジュイスは王国に連れていくことになった。まあ、なんというか……この世界に来て、俺も多少甘くなってしまったようだ……

 と、いうわけでジュイスを(健全かつ言葉通りの意味で)お持ち帰りです。はい、今後の展開には大して関わ……らないのかなぁ……

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