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act.30国王の御子息登場

 次話へのつなぎになりますが……

act.30国王の御子息登場

 何とも言えない厨二以下の称号を貰った後の話だ。昼食を部屋で食べていた時、コンコン、とドアをノックされそれに答えた。どうもドアを叩いたのはアクトらしく、ドアをあけて入ってきた。

「ちょっと良いか? 国王様から言伝を依頼されてな」

「なんだ?」

「今夜の食事だが……お前さんも今日はこの部屋じゃなくてほら、歓迎会で使った部屋があるだろ? あそこで食べてほしいってさ」

「……そりゃまたなんで?」

「さあ……それは俺達も知らんが。セシアにでも聞いてみたらどうだ、と言われそうだから先に言っておくが、セシアも情報はつかめていないようだ」

「そうか……まあ、悪い事じゃなさそうだし行くけどさ。道迷うと困るし早めに出よう……」

「うん?」

 最後の方はボソボソと呟くように言った為、アクトには聞き取れなかったようだ。

「いや、何でもない。しかし何だろうな?」

「さあ……ただ、今回は任務の話とか魔王軍云々、ってんじゃあないらしいぜ? たまには戦抜きで食事してくれってさ」

「そりゃありがたいことだ。さって、と……アクト、訓練の集合まで後十分を切っているが大丈夫か?」

「うぉっ!? し、しまった! そ、それじゃお先にっ!!」

 ドタドタと慌ただしく駆け出して行ったアクトを見て思わず苦笑してしまう。平和だなぁ。




 その後、三時間程の午後の訓練を終了し、俺達は解散した。俺は再び部屋に戻り、迷彩服からタキシードに着替える。食事会の時まで迷彩服でいる程俺も馬鹿じゃあない。

 しばらくくつろぎ、西が朱に染まり始めたころ、俺は部屋を出発した。この城は夕食は日が沈んだ後に開始なのだが……数回この部屋と食事会に使う部屋を往復した位で道を覚えられる広さではない。そもそも俺がいるのは城の一階、西側の部屋。そして問題のその部屋は城の四階中央だ。単純に四階からは簡単なのだが、その四階までたどり着くまでが難しい。

 まず、ここから反対側に位置する昇り階段をのぼり、南にある三階への昇り階段を上るまでに、既に分かれ道が四つ。更に三階から四階までの階段に分かれ道は三つ。これを一発で覚える事ができる人がいたら、俺は素直に尊敬できる。


 結局俺は道に一度迷い、数十分ロスした。たかが建物と侮るなかれ、中庭だけでも625㎡もあるような城だ。城の外周はすでに1kmを越えているし、一番内側の、つまり中庭に接する壁


でさえ一階は合計700m近くもある。つまりもはや建物の領域を越えた広さを持つのだ。

 俺が部屋に到着した時には既に陽が沈む直前で、既に空は暗くなりかけている。その部屋の扉両脇には兵士が二人歩哨をしており、その内の一人に挨拶すると門を開けてくれた。

「相変わらずだだっ広いなぁ……」

 思わず呟いてしまうのも仕方が無い。幾らかこの城に慣れたとは言えど、この途方もなく広い部屋には流石に……

 国王が俺を見つけ、笑みを浮かべて椅子をすすめてくれる。素直に薦めてくれた椅子に座……薦めてくれたのどの椅子だろう?




 その日、俺はどうやらトリップする程緊張しないで済んでいるようだ。料理もちゃんとウマイそうに見える。と、その時だ。

「さて……そろそろ本題に入ろうか。今日はお主らに紹介したい人物がおる。入ってきてくれ」

 そう言われて入ってきたのは男性と女性がそれぞれ一人ずつ。

 男女共顔が整っており、清潔な印象を持たせる。何より二人の顔はとても似ていて兄妹、あるいは姉弟の関係だと分かる。しかし……二人は誰かに似ているような気がする。

「紹介しよう。ワシの息子、エリムと娘、フェニアだ」

 あー……国王か、誰かに似ていると思ったら。

「ああ、もう旅は終えたのですね。どうでしたか?」

「各地を巡って様々な体験や人々との交流ができましたよ」

「とても良い勉強になりました」

 ふむ……他の奴らは国王の子供達を知っていたらしい……って当然か。で、どうやら彼らは見聞を広める為か各地を旅行していたらしいな。で、今日帰って来た事をサプライズ的に知らせる、と……

「ところで父上、彼は一体?」

 俺は彼らを知らなかった。つまりは向こうもこちらを知らなくて当然である。俺は国王が目配せするのを感じ取って、自己紹介をすべく立ち上がった。

「どうも、市川 拓海と申します。国王直属部隊全体顧問をさせていただいております。以後、お見知りおきを」

 笑顔でそう自己紹介する。すると、息子の方……えーと、エリムだっけ。が、とんでもない事を言い出した。

「ぜ、全体顧問!? そ、それほどならば是非、私とお手合わせ願えないでしょうか!?」

 手合わせ……無論、掌同士を合わせて、ってことじゃなく、試合である。しかも……国王もフェニアも賛成らしい。相変わらず、この世界において俺は拒否権を持てないようだ。

「では、夕食の後にこの部屋にいる皆だけで試合を見ると致しましょう。それでよろしいですか?」

 王女の提案、となれば断れるのは国王と王子だけ。つまり実質満場一致の賛成状態……はぁ。

「タクミよ、王子様はかなりの実力者だ。実力だけで言えば直属部隊の隊員にもなれるレベルだ、油断するなよ?」

 まじかよ……王子様超強いのか。そりゃ、国王の息子、しかも次期国王候補の一人ともなれば軍隊にゃ入れんだろうけどさ。




 結局、だ。以前顧問になることが確定してしまった現場と同じく中庭に、俺達は集まっていた。ちなみに審判はアクトとレムの二人体勢。国王の名指しで。

「ルールは致命傷になり得る攻撃の禁止、負けを認める行為があった場合、即座に攻撃を中止する事」

「敗北条件は気絶、ギブアップ、フロアからの脱落およびフロア以外のどこかに体が触れること。質問は?」

 俺とエリムは互いに向き合い、質問および異議が無い事を示す。俺は蒼鬼を、エリムはサーベルをそれぞれ腰から抜き、互いに切っ先を向け、刃先を合わせる。

「それでは……試合、開始ッ!」

 レムのコールと共にお互いに後ろに飛び、距離をとる。そうして、俺と王子の手合わせは始まった。空は既に群青色に染まっていたが、盛り上がりは一日で最大となった。

 申し訳ありません。ちょっと次話へのつなぎになったので短くなってしまいました……手合わせの中身は次話をお待ちいただけるとありがたいです。

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