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act.28俺と魔王と光と闇と

 ようやっと魔王さんと初対面でございます。

act.28俺と魔王と光と闇と

 幾度かジュイスとの戦闘を行い、撤退を繰り返してきた。結局奴は逃げ、どこかへと行ってしまった。が、もう魔王の部屋も目前。ヤツとの戦闘は唯一この世界で互角だった為多少は楽しかったのだが……まあ仕方がない。

 俺は魔王の部屋へと歩みを進め、他はこの小規模なフロアで追手を待ち構えている。ざっと二十人はまだ傷一つ負ってないんだ、ここは崩れることは無いだろう。


「さて……覚悟はいいかい、魔王さんよ?」

「速い、な。もうここまで来るとは……しかし貴様は私には勝てぬよ。理由は分かるだろう?」

「ク、ククク……お前さんはお気楽だよなぁ」

 俺はここに来るまで、風と雷しか使っていない。……手の内ってのはむやみやたらと晒さないもんだ。

「フフフ、では……行くぞ?」

「貴様の王位もここまでだ。流石に……アンタは生かしておくこたぁできないな」

 魔王は黒く巨大なマントを後ろに羽織り直し、背から巨大な細身の剣をとりだす。刃の部分だけでも……余裕で2m近くあるだろう。柄を含めれば2m半はある。しかし、魔王の持つ剣は質実剛健といった印象を持たせる。何の飾り気もないが、逆にそれこそが強さを証明しているかのようだ。

 俺も蒼鬼を抜き放つ。ゆっくりと抜かれたそれは、光を反射し、普段より一段と蒼さを増していた。

 鯉口を切る音と、魔王が構えた剣が全身を露わすのはほぼ同時だった。

「貴様も知っておろう? 我が魔王一族が代々受け継ぐ闇の特性を」

「ああ、知ってるさ……で、それがどうしたって?」

 俺は右腕一本で蒼鬼を保持し、切っ先を魔王へとつきつけるように構える。

 対する魔王は、その細身ながらも重量を感じさせる剣を軽々と片手で持ち上げ、同じく切っ先をこちらに向けるように構える。

 俺が言葉を切ると同時にお互いが構え直す。

 俺は蒼鬼を両手に持ち直し、体の後ろに隠すように構え、脚を肩幅に開く。

 魔王は右手を返し、柄の一番先に左手を添えて右足を前に出す。


 一瞬の静寂。外での戦闘が始まったらしく、怒声と魔法が当たる音、それによって壁や床が破損する音、被弾した者の悲鳴が聞こえてくる。

 一際大きい爆音。それを合図にしたかのように、同時に駆けだす。

 鈍い、金属同士が衝突した音が響く。魔王はまだ魔法を使用せず、俺は風を使って運動エネルギーを増幅させている。それによって力は拮抗し、つばぜり合いとなる。

「く……うぉぉ!」

「フン……ぬぉぉ!」

 金属同士が擦れる音と共に互いに離れ、数m距離が空く程後退する。


「フハハハ、貴様やるな……よし、そろそろ私の力を見せてやろう!!」

「……デカ…………」

 細身の剣を闇が覆い、5mはあろうかという、細身ですらなくなった巨大な剣となっている。

「ククク、この闇すらも切れ味を持つ。貴様はかわせるかな?」

 そう言うや否や、横薙ぎに闇に染まった剛剣を振る。

「うぉッ!?」

 ガチリ、と鈍い音と共に火花が散り、風で強化した蒼鬼でも脚が地面を滑っていく。2mほどでどうにか踏みとどまりきり、そこに追撃が来たのを横に飛んでかわす。

「くそが、そのバカでかい剣の割にはええ……!」

 闇故に質量は追加されないのか、それとも奴の腕力が元々凄いのか、あるいはその両方なのか……どうでもいいことだが。とにかく、剣速は闇を纏う前と変わらないのだ。

「ふふふ、いつまで防戦でいる気だ? いつかは当たるぞ?」

「く……なんてな」

 ニヤリ、と笑みを浮かべ、隠していた対抗手段ひかりを蒼鬼に纏わせ、真っ向からつばぜり合う。

 魔力無限大の俺が使用した光は強く、奴の闇を切り裂いて剣同士のつばぜり合いになる。

「な、何だと!?」

「クハハハハ! 甘いな魔王。手の内はそうそうさらけ出さないもんだろ? 特に……余程の大技なら尚更な」

「まさか光を……く、くくく……余は多少貴様を甘く見ていたようだな」

 多少後ろに飛んだ魔王は少しだけ笑みを見せると、今まで背負っていたマントとは違う、闇の魔法で出来ているらしいマントを羽織る。

「闇の鎧……ねぇ。とことん厨二病な魔王だこと」

「フフフフフ、では行くぞ?」

 再び剣で突っ込んできたワンパターン魔王。それに対し俺は左手の掌をかざし、そこから一直線に収束させた光を放つ。

「何ぃ!」

 慌てて剣を盾にするが、光の方が数段強い。その闇を貫いて、闇でできたマントに直撃する。

「な……おいおいおい全部消したとか……」

「く……流石だな、危なかったぞ……」

 ぜーんぶ消されました……まて、結構な魔力を籠めていたはずだ。そうそう防がれるようなことは……!


「さて、行くぞ? 少しはこの戦いを楽しんでいけよ? それが冥土へ行く貴様への手向けの花だ!」

 そういって先程とは比べ物にならない速度で突っ込んでくる。

「チィッ!」

 袈裟切りに切りこんできた魔王に、こちらも袈裟切りで対抗する。ぶつかり合い、光と闇の粒子状になったものが散っている。

 すぐにお互いの剣は弾かれ、今度は逆袈裟でぶつかり合う。また弾け、再び袈裟切り。また逆袈裟。

 十数回繰り返しぶつかる。その度に火花と魔法の粒が舞い、衝撃波に押され飛んでゆく。

「ふふ、フフフフフ! やるな! そら、いつまで持つ!?」

「く……うぉらぁぁ! まだだ! まだ負ける訳には……!」

 と、俺に機転の策が浮かぶ。ぶつかり合いの最中にも魔力を溜め始める。数度撃ち合い、今度はタイミングを計り始める。

「く……ここだ!」

 右から斜めにぶつかり合う……と見せかけて蒼鬼を握る右手を返し、反対側の刀身で魔王が撃ちこんできた剣を受け流す。

「なっ!?」

 そのまま円運動の要領で下から上に蒼鬼を振り上げ、その際に溜めていた光の魔力を一気に放出すると爆発するかのように光が広がる。

 魔王の纏っていた闇も吹き飛ばし、魔王に直接ダメージを与える。

「ぐ……うぉぉああああ!!!」

 数mほど吹き飛んで受け身をとれず魔王は倒れる。地を手で押して立ち上がり、肩で荒い息をつく。

「ぐ……何だ、今の魔力は……強すぎる……!」

 そう言うと魔王は大きな羽を広げ、素早く城から抜け出した。

「なっ、待て!!!」

「く……この借りは必ず返してやる……! しかし……その前に王位継承になってしまうか……?」

 そう言って、飛んで追いかけた俺も追い付けないスピードで飛んで行ってしまった。と、いうか闇で牽制されて追いかける前に見失っただけであるが。

 はい、結局逃げられちゃいました。……最終話予定だったんですが……もうチョイ続いちゃいますので、これからも御贔屓下さるとうれしいです。

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