act.22西防衛戦線異常発生!
というわけで異常発生です。
お気づきの方多いかと思われますが、これと前話のタイトルは某映画のパロディです。
act.22西防衛戦線異状発生!
到着から二日、特に何もない日が続き、俺達国王直属部隊はお互いの理解を深める為訓練に集中することができた。
「さて……どうだ、そろそろお互いのクセやらは理解できたか?」
「大体、な。他は?」
アクトが問うと、他の部下を含めた総勢四十一名が一斉に頷いた。何かコワイ。
「そういえばセシア、お前の隊戦い方が途中で変わったよな」
「あ、最初に気付いたのはデフィアか……うむ、予想外」
俺的にはアクトかイゼフ辺りと思ったんだけどなぁ……
「先生には……徹夜を強いられましたからね……嫌でも覚えますよ……」
そういえばイケメンセシア君は珍しくクマを作っている。いやまあ原因は俺だけどさ。
何を隠そう、俺はコイツらに徹底的に基礎から叩き込んだ。おかげで、遊撃を得意とする第四隊は戦法だけではなく体の能力もウェートをある程度変更できるまでになった。おかげであらゆる戦闘パターンに、より柔軟な対応が出来る。
「さて、そろそろ昼飯の時か―――」
「て、敵襲ー! 敵襲ーー!!」
呑気に昼飯に向かおうと先陣を切ったゼルキス。しかし、その呑気さはあわただしく響く警鐘の音と敵襲を知らせる兵士の声に呆気なく掻き消された。
と、同時に直属部隊も呑気さなんて吹き飛び、一瞬にして戦いの時の顔になる。この辺りは流石軍隊、といったところか。
「さて……じゃ、事前に伝えた位置についてくれ。俺は今回セシア達と遊撃に参加すっから」
そう言うと各隊長は頷き、部下達を纏めて持ち場に去った。
今俺達は枯れ草の広がる広場に身をひそめていた。ここは「K-592」の少し西側にある広場で、砦はそれなりに小さく見えるがそこまで離れてもいない絶妙な距離。
ここで普段は防衛戦が行われるが、その主な理由は更に西には岩でできた天然の深い渓谷があり、吹き上げる風などで気流が乱れ飛ぶことすらままならない故に歩いてくるしかないからである。無論その渓谷が終わっても風は荒れ、そしてすぐにこの草原に繋がっているのだ。
「さて……そろそろか?」
「ええ、通達があってからそろそろ二分。監視台が置いてある位置からの視界を考えてもそろそろでしょうね」
短く会話を済ませた俺達は全員が武器を構える。俺は蒼鬼とハッシュパピー。セシアはお決まりのアーチェリー。その他両刃のサーベルが四名、小銃が二名。
しばらくすると、荒々しい掛け声と大人数の発する足音が響いてくる。
反射的に俺とセシア、そして小銃を構えた二名はその音の発信源である方角に銃口やらを向け、左手の蒼鬼で少し離れた位置にあるカムフラージュされた高台にいるデフィアに合図を送る。
刹那、爆音と共に遠くの方から悲鳴やらが聞こえた。とりあえず奇襲成功だ。同時に第四と七隊を除き、全ての隊が同時に攻撃を開始した。
それでも向こうも選りすぐりらしく、直属部隊の攻撃すら掻い潜る者も多い。しかし……その対処をおろそかにする程俺も愚かじゃあない。そもそも第四、七隊はこの為に待機していたのだ。
「残念だったな。貴様らの快進撃もここまでよ!」
あ、これじゃフラグか!? というような台詞と共に勢いよく草むらから飛び出し、一気に風圧で足を止め、その隙にセシアやイース達が攻撃を加える。その間に戻ってきた他の隊も攻撃に加わり、作戦は見事成功した。
俺達は見事に敵を全滅させ、気絶している敵兵を処理していく。その時だ。俺は何かが飛来する音を聞き取り、咄嗟に屈んだ。他の皆もそうだったらしいが……どうも俺は間にあっていなかったらしい。
「ぐぅあぁっ!」
右目に鋭い痛みが奔り、直後に熱く感じるようになる。咄嗟に目をつぶっていたが、どうなったかは今は分からない。
皆が俺を気にかけたようだが、今はそんな状況じゃあない。
「馬鹿野郎共! 俺なんかに構っている暇があったら迎撃準備だ! 俺がこれ位で倒れると思うか!」
……はっきりと言おう。虚勢だった。それでも意思を汲み取ってくれたのか、一瞬躊躇していたもののすぐに攻撃を開始していた。さて、俺も加わらねば。
「ちょっ! せ、先生は下がってて下さいよッ!?」
いち早く気付いたレムが俺を制止してきた。だがまあそう言う訳にもいかない訳で。
「だいじょーぶだいじょーぶ。遠くから撃ってるから」
強引に納得して頂いた。
その後の戦闘はまあ圧勝だった。元々陽動作戦の部隊だったらしいがあまりにも早く先鋒が消えたらしく、数が少ない彼らを捉えるのに時間はかからなかった。
俺はさり気なく前線に飛び出て雷と風を乱射していたが……危なげなく何とかなっちゃうんだもんなぁ。だが……
「チ……流石に右目逝ったか?」
どうも……目を開いても視界が戻らない。先程の矢は瞼を閉じる前に命中してしまったらしい……
「クソ……ッ!」
その事実を認識した途端、俺は膝に力が入らなくなってしゃがみこむ。日本にいた時には考えられなかった事が起きた、そのことが原因だと思う。
「先生! 大丈夫です……か?」
駆け寄ってきたレムが言葉を詰まらせた。他の部隊長やらその部下やらも集まってきていた。
「……どうも、目が逝ったようだ……」
俺が告げた途端、辺りが静寂に包みこまれた。
「そ、そんな……私じゃ直せないんですか!?」
「無くなったり傷ついた器官は直せるのか!?」
つい、期待が出てしまった。魔法なら何とかなるかも、と考えて。
「あ……それは……その」
「……そうか。まあ、起きた事を悔やんでも仕方が無い、か……」
どうもある時期を境に、俺は自分の短所なんかを認めて前に進むことができるようになってきている。いつからかは覚えていないが……
その後部屋で休憩をとっている時だった。昼食をとり、出発の時間まで眠っていようかとしている時、無線機が鳴った。
「おっす、大丈夫か、と聞くのは野暮かな?」
「……テュポンか? どうした」
「いや、さっきの戦闘、見させてもらった。その、右目なんだが……」
「ああ、多分眼球が死んだ。さっきっから視界が戻らん」
「そうか……何だか済まない、こんなことに巻き込んで」
「気にするな、俺は俺で楽しくやってるんだからな」
「そうか……で、だ。眼球破裂の際の処置だが、そのままにしておくと雑菌が入るぞ」
「本当か? どうすれば良い?」
「うむ、今からガーゼと消毒薬を送っておこう。それと、細菌感染を防ぐのとその……まあいつまでもその右目を晒していると周りになんて思われるか分からんしな、眼帯を送っておくよ」
「一つ聞いておこう。どんな眼帯だ?」
「普通の黒いパッチ状のやつだよ。なに、某傭兵は意識しとらんし……そもそも眼帯のオーソドックスな形の一つだ」
「自分から白状感謝しようか。まあいい、とりあえず頼むわ」
すぐにテュポンからガーゼと消毒薬、眼帯が送られてきたらしく、カバンを漁ってみた。早速消毒薬で右目を消毒し、そのまま眼帯をしておいた。むぅ……どんどんBIG B○OSに近付いている気がするが……?
ちゅー訳で隻眼になっちゃいました。いわゆるご都合主義です。