act.21西防衛戦線異常ナシ?
はい、最近忙しくてロクに執筆が……それでもお付き合い頂いている皆様には感謝してもしきれません! どうかこれからも御贔屓下さいますようよろしくお頼み申し上げます。
act.21西防衛戦線異状ナシ?
「で、この砦が襲撃を受け、撃退したものの修繕に回せる程の労力は無い、と?」
「うむ……で、本部である此処へ連絡が来て戦闘要員だけでもと応援を求めてきた」
「それで……私ら直属部隊に行って来い、と」
「左様。あと、もう一つ報告はあるぞ。入ってきてくれ」
「失礼します」
入ってきたのは灰色の髪をショートに纏めた、凛々しいながらも逆に幼さが伺える身長が低い女性。髪と同じく白銀に近いその瞳は真っ直ぐにコチラを見ている。
「イース、と申します。この度新設される国王直属部隊第七隊の隊長に任命されました」
後半の台詞を聞いた瞬間、彼女と国王、そしてその側近以外……つまり事情を知らなかった者達が一斉に反応する。無論俺もだ。
「第……七隊?」
「うむ、彼女ら第七隊は隠密行動を得意分野とする部隊であり……いや、そこら辺は彼女に紹介して貰うか」
「はい。
私達は先程ご紹介にあった通り、潜入などの隠密行動を主とする部隊です。以前イチカワ様が行った潜入、兵器の破壊は王国に衝撃を与えました。何故なら今までそんな事をしようとも考えた事が無い国でしたから……そしてその有用性、必要性に衝撃を受けたのです」
イチカワ様、ねぇ……こちらの世界では始めてそう呼ばれるが……まぁ後で指摘するとしよう。
「それで……じゃ。彼女ら第七隊も今回の作戦に参加する」
「本当ですかそれは? まだ顔合わせすらロクにしていない隊と共同戦線ですと!?」
デフィアの言う事ももっともだ。信頼性……は国王お墨付きであるからいいとして、彼女らの得意分野も隠密行動としか分かっていない。そのレベルも、手法も、その他全く分からない。
「この後ミーティングを行ってもらう。何、今回彼女らは単に見学するだけのようなもの、主らの脚は引っ張ることはせんよ」
その言葉にとりあえず全員が納得し、ミーティングへと移った。
ミーティング内容としては単純にいつものブリーフィングと、今回新たに設立された第七隊の説明が主な内容だった。
今回の作戦としては西にある王国軍の防衛用砦「K-592」が襲撃を受け、砦の修繕が必要な状態になった。しかし被害は大きく、また再び襲ってくる可能性も高いので修繕まで手が回らず、せめて戦闘要員だけでもと要請があった為に適任として直属部隊が赴くらしい。
戦闘要員ではあるが、その戦闘要員に人員を割かずに済む為、今度は修復に手が回るらしい。
俺達の役目は、修繕に区切りがつくまでの砦の防衛。それ以上でもそれ以下でもない。
第七隊というのは隠密、特に潜入を中心とした活動を得意とし、発砲音がしない魔法や道具を駆使する。また気配を隠すために訓練を重ね、例え真後ろ一歩分に立っていたとしても気付かれないほどらしい。
「で、イース……だっけか?」
「はい」
「今回の作戦、見学って聞いたけど?」
「先輩達のやり方をよく見て参照にするようにと。流石に初めての共同作業が防衛線なんてシャレになりませんからね」
「ふぅむ。まあ理にかなっているというか何というか……そうだ、セシア、ちょっと聞いていいか?」
「何でしょう?」
「いやね、『K-592』が襲撃受ける可能性高いらしいが……実際どの程度日数がかかるか分からないか?」
「そんな情報ありませんよ……そうですねぇ……」
「み、三日、位じゃないですかね?」
「イゼフ? なんでさ」
「て、撤退に一日、進撃に一日かかる距離が魔王軍の……その、最短距離にある砦なんです」
「じゃあ最低二日はあるのね……じゃあその間、第七隊も一緒に訓練しておこう。彼女らのクセ、お前らも知っとけよ」
は!? と一斉に声が帰ってきた。隊長らだけではない。無論その部下からもである。
「少しでも人員は多い方が良い。つーわけで決定事項な。拒否権はやらねーぞ?」
で、その後。結局彼女らの隊は遠距離への攻撃、そして一撃の攻撃力、連続攻撃力以外はほとんど問題が無い。せいぜい魔力最大値が標準を微量に下回る位か。
「うーむ、これだけバランスとれてると……お前らの隊も立場が危ういんじゃないか?」
「い、いや、この隊はどの隊も補い合って……」
「それが崩れるんだっての。まあ冗談はさておき……どうだ、彼女らの戦い方は少しは分かったか?」
「かなり気配を隠すのが上手いな。鼻が良いオセロットである俺も見抜けなかった……」
本日行ったのは第一から第四隊対第五から第七、そして俺のチームでの実戦形式の対戦だ。この砦は始めてくる地形だった為、お互いがお互いを知らないとどうにもできないことから選んでみた訓練だが……思いのほか上手く運んだ。
「ありがとうございます。でも……結局は負けちゃったんですけどね」
そういえば彼女、表情少ないと思っていたがそうでもないな。今だって素直な笑みを浮かべ、苦笑いに移行した。
「いや、今回の訓練は勝敗は重要じゃない。そうなんだろ、先生?」
「お、珍しく頭が良さ気なこというなゼルキス。まあ実際そのとおりだ。内容的には……第四隊以外及第点だ」
「な、何故私たちの隊は!?」
「黙らっしゃい。お前達は今回初めての地形とは言えどミスが多かった。そうだな?」
「く……確かに単純なミスは多かったですが……」
「遊撃を得意とするお前らは他より適応力が高くなきゃあならんのは分かるだろ?」
「返す言葉も……」
「と、言う訳で、だ。第四隊、夕食後俺の部屋に来い」
「りょ、了解です……」
「そ、そんな……!」
「うぅ……もう居残りは嫌だぁぁ!」
「フハハハハハ、嫌だったら精進するんだな! よし、飯だ飯だ。とっとと行くぞー」
落ち込みに落ち込んだ第四隊の面々を放っておき、その他と共に食堂(とは名ばかりではあるが)へと向かう。いやぁ、今日も良い日でありました、マル、と。
あ、そうそう、今月の25~29までちょっと遠出してしまいます。故に更新できなくなりますがご了承のほど、よろしくお願いします。